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パートなどの非正規労働者

 

学習用テキスト
わかる 派遣・請負

すべての人が人間らしく安心して働くために

 パート・臨時などとともに派遣、請負、委託などで働く人々が増えてきました。
 1999年の労働者派遣の全面解禁はこの国の雇用のあり方を大きく変えました。派遣労働者はまるでモノのように扱われて、買い叩かれ、使い捨てされています。
 キヤノン、松下などの製造現場などでは請負を偽装した違法派遣が多数存在していることがこの間の摘発で明らかになりました。
 私達はあらためて派遣労働や請負の現状を認識し、これ以上、劣悪で不安定な雇用を拡大しないため組織拡大に取り組むことが求められています。

派遣とは(1)

派遣は本来、例外的・一時的なもの
業務や期間に制限があります

派遣とは原則臨時的・一時的なもの

 労働者派遣法では、派遣は臨時的・一時的・例外的なものと規定されています。
 労働者派遣法(※1)は、労働者派遣の定義を、「自己(派遣元)の雇用する労働者を、他人のところに派遣し、派遣先の指揮命令を受けて、その派遣先のための労働に従事させ、かつその労働者を派遣先に雇用させる約束のないもの」 (同法第2条第1号の趣旨)としています。
 日本では戦後、他人が雇用した労働者を自己の指揮命令の下に働かせることは「労働者供給事業」として、職業安定法44条で禁止されてきました。しかし、70年代に警備、情報処理、放送業などで、業務処理請負を偽装した「ヤミ労働」が蔓延したため、禁止とされた労働者供給の一部を「労働者派遣」として公認し、労働大臣の監督の下で規制を加え、派遣労働者の保護を図ることになりました。
 しかし、1986年7月から施行された派遣法は、対象業務は専門的13業務のみでしたが、1999年の大改定では原則自由化となり、一部の例外を除き、ほぼすべての業務が労働者派遣の対象となりました。
 さらに、2003年の改悪で派遣期間の延長・無期限化、製造業への派遣解禁と、一層規制緩和が進められました。
 改定の過程のなかで派遣労働者の保護措置が一部強化はされましたが、無権利、不安定な状況の根本的解決にはほど遠いものとなっています。
 また、派遣の場合に問われる使用者責任をまぬがれるための請負を装った違法派遣が増大しています。

登録型と常用型

 労働者派遣事業には二つの種類があります。一つは派遣会社が常時雇用する労働者を派遣する常用型派遣で、「特定労働者派遣事業」といいます。もう一つは常用型以外の登録型派遣労働者を派遣する「一般労働者派遣事業」です。登録型派遣とは派遣で働くことを希望する労働者が派遣会社(派遣元)に登録しておいて、仕事の紹介を受け、派遣先に就労が決まった期間のみ派遣会社(派遣元)との雇用関係を結び、派遣先で就労するというものです。
 特定労働者派遣事業は厚生労働大臣への届出、一般労働者派遣事業は厚生労働大臣の許可が必要とされています。

※1  正式名「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」
1985年制定


ポイント
 次の仕事は派遣では行うことができません。
 1)港湾運送業務
 2)建設業務(現在、建設業者間のみの派遣が解禁されています)
 3)警備業務
 4)医療法上の病院等における医療関連業務(紹介予定派遣のみ可能)

「派遣」は派遣労働者、派遣元、派遣先の3面関係

派遣は業務内容によって期間が制限されています

派遣とは(2)

直接雇用が基本…間接雇用は労働者の権利をおびやかします

使用者責任があいあまいになる「派遣」

 労働者派遣は1986年の派遣法施行によってはじめて合法化されましたが、あくまでも例外的な雇用であるという法律の趣旨は現在でも変わりません。
 労働法の雇用の原則は、労働者を実際に雇用して自ら労働力として利用している者が使用者としての責任を負うという 「直接雇用」です。実際の使用者(派遣先)と労働者の間に第三者(派遣会社)が介在する「間接雇用」は使用者責任をあいまいにし、労働者の地位や権利をおびやかすものとして厳しく制限されるべきものです。

リストラ解雇後の受け入れは労使協定で厳しい制限を

 リストラにより労働者を解雇し、その仕事をさせるために3カ月以内に派遣社員を受け入れることは原則として禁止され、やむを得ず受け入れる場合であっても、必要最小限度の期間設定と派遣先の労働者の理解を得るための説明が求められます。
 これは派遣を受け入れる側の労働組合が正規と派遣の代替を許さないという姿勢で対応することが重要です。受け入れ制限期間も3カ月という短い期間でなく少なくとも一年間は導入を認めない方向での労使協定を結ぶことが必要です。

一定期間をすぎれば
派遣先は直接雇用の申し入れ義務が発生

 長期にわたり派遣という身分で仕事をさせることには制限があります。3年あるいは1年と期間に制限がある仕事(※1)では、期間をこえて仕事をさせる場合は、派遣先が対象労働者全員に、直接雇用を申し入れすることが義務づけられています(法40条の5)。また、派遣期間に制限がない仕事(※2)でも、他の労働者を雇い入れようとするときには同様で、すでに派遣社員として働いている労働者に対して直接雇用を申し入れすることが義務づけられています。この義務を怠ると、派遣先会社は行政指導を受けることになります。
 この時、派遣元事業主は派遣労働者が派遣先で直接雇用されることに制限を加えることは禁止されています。万が一、これに反する契約をしていたとしても、契約そのものが無効とされます。

※1  製造業なと2〜3ページ参照
※2  26業務日数限定業務なと2〜3ページ参照

労働調査会発行「労働者派遣法の改正点と実務対応」

紹介予定派遣とは

悪用を許さないことが重要

期間は6カ月まで

 紹介予定派遣とは、派遣社員として働いた後、正社員として派遣先の企業に採用されるシステムです。しかし、派遣先企業が派遣前に面接ができるなど、労働者にとって不利な条件が増えています。
 また、派遣期間が事実上の試用期間となり、期間満了後も派遣先が労働者を雇用しないという悪用が懸念されます。

ルールを守って公正な採用を

 派遣就業開始前の面接や履歴書の提示を行う際には、年齢や性別で差別をしてはならないことになっています。当然、雇用対策法や男女機会均等法のルールにも従わなければなりません。また、派遣先の企業に採用されることが前提ですから、6カ月をこえる派遣は禁止されています。
 また、派遣先が紹介を拒否したり、紹介予定派遣労働者を雇用しなかった場合、派遣先は文書でその理由を明示しなければなりません。

派遣の流れ

「正規を派遣に」ですすむ雇用破壊
安易な受け入れは認められない

 

ポイント 派遣料金と派遣労働者の賃金
 派遣料金は労働者派遣の対価として派遣先から派遣元に支払われるものです。派遣元は、派遣料金から手数料などを差し引いたうえで賃金として派遣労働者に支払います。
 たとえ、派遣先が派遣料金の支払いを滞納しても、派遣元は労働基準法24条の「賃金支払い5原則」にのっとり派遣労働者に賃金を支払わなければなりません。
 労働者に支払われる賃金は派遣料金の6割から7割程度と言われますが、競争激化のもとで派遣料金は値崩れが起きており、「派遣労働者は高収入というのはもはや幻想に過ぎません。女性派遣労働者で年収200万円台、ボーナスも、退職金もなく、交通費さえ支払われないケースが大半です。

事前面接は禁止
 勤務をはじめる前に、あらかじめ派遣先と打合せや説明会と称して面接が行われることがあたりまえのようになっていますが、事前面接や派遣先への履歴書の送付は派遣法で禁止されています。面接や履歴書の送付を派遣会社が行うことは職業紹介行為として禁止されています。

労働契約締結を
 労働契約の締結にあたり、派遣元は派遣先での就業条件を書面で明示しなければなりません。(厚生労働省のモデルがあります)派遣先は、就業条件明示書に示された業務内容以外の仕事をさせることはできません。

ポイント 個人情報の保護
 派遣元が収集できる個人情報は、業務の遂行上必要な範囲に限られます。就職差別につながるおそれのある個人情報を求めることは原則的にできません。人種、社会的身分、門地、出生地、支持政党、購読新聞、家族の職業、収入、資産、容姿、スリーサイズ、労働組合への加入状況などは収集してはならない個人情報となっています。(労働大臣指針《平成11年労働省告示第141号》)
派遣労働者の保護・権利

派遣は労働者として保護されます

派遣労働者と労働者保護法

 派遣労働者は労働基準法や労働安全衛生法などの労働者保護法が適用されます。一般の労働者との違いは労働法規を守る責任が派遣元と派遣先に分かれている点です。違反した場合には罰則が適用されます。

派遣労働者と労働組合

 派遣労働者も当然労働組合を作ったり、加入する権利があります(憲法第28条)。派遣会社と交渉をし、労働条件の改善などを求めることができます。
 派遣先が契約違反をするなどの場合も派遣元を通じて是正させることができます。

派遣労働者と有給休暇

 派遣労働者は当然、有給休暇があります。6カ月間継続勤務し、8割以上を出勤したときに10日間の有給休暇があります。勤続年数が増えるごとに月数が増加します。
 6カ月に満たず派遣先が変わっても派遣元との複数の契約が連続して継続していれば、「継続勤務」として有給休暇の権利が発生します。

派遣労働者と労災

 派遣労働者は、業務災害や通勤災害に遭ったときには労災保険から給付を受けることができます。労災については派遣元が労働基準法、労災保険法に基づいて労災補償責任を負わなければなりません。派遣元は労災保険に加入する義務があります。

派遣労働者と母性保護・育児休業・介護休業

 派遣元には、労働基準法の出産休暇を保障する責任があり、出産休暇をとったことを理由に解雇はできません。
 派遣先には、妊産婦の時間外・休日労働、深夜業の制限、育児時間、生理休暇についての責任があります。
 均等法22条・23条の妊娠中および出産後の健康管理に関する措置(通院休暇、通勤緩和、妊娠障害休暇)は、派遣元と派遣先の両方の責任です。

派遣労働者の解雇と中途解約

 解雇には合理的な理由がなければ認められません。
 労働基準法第18条「解雇は、客観的かつ合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」としています。この考え方は通常の労働者の場合と同じように派遣労働者にもあてはまります。
 有期雇用の場合、やむを得ない事由がない限り、一方的に派遣元から労働契約を解約(解雇)することはできません(民法628条)。派遣先による労働者派遣の打ち切りや、派遣料金の不払いなどは、やむを得ない事由にはなりません。
 派遣期間中に、派遣先、派遣元の理由により中途解約された場合は残期間の賃金の保障を派遣元に求めることができます(民法536条)。この場合、労働基準法第26条をたてに平均賃金の60%しか支払わないケースがありますが、派遣元の責任を追求し100%の保障をさせるようにすることが大切です。


派遣のメリット・デメリット

将来の見通しが立たない不安定な雇用

 今は正規雇用での就職を希望してもなかなか仕事が見つからず、パートや派遣で働かざるを得ない現状があります。派遣で自分の能力を磨けば正社員への道が開けるかもしれないと希望をもっている労働者も多くいることでしょう。しかし、派遣で働く労働者へのアンケートでは40.3%が将来への見通しがたたない、39.0%が雇用が不安定であると答えています(厚生労働省平成14年民間労働力需給制度調査結果)。派遣で働く年月が長くなればなるほど、将来の不安が高まります。派遣労働を、本来の一時的・臨時的・例外的な労働として厳しく規制し、正規雇用を増やし労働者の雇用安定をはかることが重要です。


労働者保護に関わる主な法律

派遣先・派遣元の義務

派遣先・派遣元どちらにも使者責任があります

派遣元と派遣先は派遣労働者の雇用の安定に努力しなければなりません

 派遣先、派遣元がそれぞれ派遣労働者の雇用安定のためにとるべき措置は「指針」に定められています。
 派遣元に対しては、(1)雇用契約の締結に際して雇用契約期間と派遣期間を合わせるよう配慮する、(2)派遣契約の解除にあたってはあらたな就業のあっせんを図ることとし、解雇の場合には労働基準法に基づく責任を果たすことと、しています。
 派遣先には、(1)派遣受入れ期間を可能な限り長くする、(2)派遣先の都合で派遣解除をする場合は相当の猶予期間をもって解除の申し入れを行う、(3)派遣契約の解除にあたって派遣労働者のあらたな就業先のあっせん、(4)派遣契約期間満了前に契約解除をする場合は30日前の予告か、30日相当分の賃金の賠償。30日に満たない場合は残期間相当の金額を支払うよう示しています。

派遣元も派遣先も派遣労働者の安全衛生を確保しなければなりません

 派遣元と派遣先ともに、派遣労働者の安全衛生に責任を持ち、双方の連絡調整を行なう「派遣元責任者」「派遣先責任者」を選任することが義務づけられていまず。(ポイント参照)。
 派遣先は、派遣元事業主から安全衛生に関する協力の申し入れがあった場合、協力や配慮を行うことになっています。

ポイント
 派遣元に1人でも製造業務に派遣する労働者がいれば、100人につき1名の「製造業務専門派遣元責任者」の別途選任が義務づけられています。また、製造業務は従事する派遣労働者を50人以上受け入れる派遣先は、「製造業務専門派遣先責任者」の選任が義務づけられています。

労働・社会保険加入や福利厚生等にも責任が

 派遣元は適切な理由がない限り、労働・社会保険に派遣労働者を加入させることになっています。派遣先は、派遣労働者が未加入の場合、派遣元に理由を明らかにさせ、不適切な場合加入をさせるよう派遣元に求めなければなりません。
 また、派遣元は、物品の貸与や教育訓練の実施など派遣労働者の福利厚生についても、派遣先に雇用されている労働者の状態に配慮して、措置しなければなりません。また、派遣先はそれに協力をしなければなりません。

労働基準法の使用者責任
社会保険

 健康保険と厚生年金保険は、加入要件を満たしていると、加入が義務付けられています。加入の手続は派遣元で行います。

適用基準
 (1)短期契約の場合であっても、雇用期間が2カ月を超えた場合。(更新によって2カ月を越えた場合も適用)
 (2)1日又は1週間の労働時間、および1ヶ月の労働日数が、その事業所で同種の業務を行う通常の労働者のおおむね4分の3以上ある場合。
 登録型の場合は、派遣先で同じような仕事に従事している人と比較します。

 ▼2001年5月には人材派遣健康保険組合が設立され、一定の要件を満たせば無就労期間が生じても被保険者資格を失わずにすみます。しかし、加入事業所は派遣事業所総数のわずか1%となっています。


雇用保険

 登録型派遣の場合、同一の派遣元から反復継続して1年以上派遣就業することが見込まれる場合と1週間の所定労働時間が20時間以上である場合、雇用保険の適用対象となります。雇用保険の加入手続きは派遣元が行います。

 現行の社会保険制度の枠組では派遣労働者は派遣期間が終了するたびごとに、煩雑な手続を取らなければなりません。派遣労働者の権利保障のため、法的な整備が求められています。

派遣 これは違法

あなたの職場にありませんか
こんな「派遣」は禁止されています

許可・届け出のない派遣

 派遣事業を行う者は、厚生労働省大臣の許可あるいは、届出を出さなければなりません。これに違反したときは罰則があります。
 無許可・無届の派遣会社は利用しない・させないように点検運動を。

長期派遣

 派遣労働は職種によって派遣期間が決められており、(2〜3ページ参照)、それをこえての派遣は禁止されています。
 職場の派遣労働者が長期にわたって派遣されていないか点検しましょう。

対象業務以外への派遣

 法改正で製造業も派遣労働の対象になりましたが、特定の業務(建設・港湾・警備等)は行えないことになっています。(2〜3ページ参照)

二重、三重派遣

 派遣先からさらに別の派遣先へ派遣されることを、二重派遣と言います。これは「中間搾取」が大きな問題となり、違法です。派遣では使用者責任をあいまいにしないために雇用主である派遣元と使用者としての派遣先の二者しか認めないのが原則です。実際には脱法するため「出向」などの形式が使われている場合があります。

派遣と派遣店員の違い

 デパートや量販店などで、派遣によく似た派遣店員と呼ばれる雇用形態があります。派遣元が雇用し、派遣元が指揮命令して就業します。この場合、派遣先は労働者を指揮命令しないことになっており、もし、派遣先が実際に指揮命令をするとき、例えば、派遣先が、派遣店員の労働時間や出退勤を管理するときには違法派遣となります。

偽装出向

 今、問題とされている「偽装出向」には、2タイプあります。(1)実態は派遣であるのに出向を偽装しているものと、(2)偽装請負を隠すための出向です。前者(1)は出向を行なうことを目的に人を採用し、出向を反復継続して利益をあげているもので、禁止されている労働者供給事業にあたります。もうひとつは、(2)偽装請負を隠すため、技術指導などと称して、請負会社の工場へ発注先会社の労働者を大量出向させるというものです。(2)については松下の正社員が請負会社に大量出向していた問題で、厚生労働省は、出向の実態が職安法違反の労働者供給事業にあたると判断、松下に是正を求めて行政指導する予定です。

偽装請負は受け入れ企業にも罰則適用

 「派遣と請負の区分」告示の要件を満たしていない偽装請負は、違法です。
 また、行政指導としての指導、助言、勧告に従わないと公表され、最終的には職安法に違反して労働者の供給を受けた企業も罰則の適用を受けます。

もっぱら派遣は正規との代替手段

 金融関係企業の62・2%は、100%出資の派遣子会社を持っています(金融保険庁の銀行調査)。これらの派遣会社は、インハウス派遣(=もっぱら派遣)といって、特定の企業(親会社)にのみ派遣するためにつくられた会社です。このようなもっぱら派遣は公然とピンハネを許し、正規との代替をすすめる手段として使われており、違法となっています。

契約社員とは

 さまざまな雇用形態が増えていますが、契約社員という名の非正規雇用も増大をしています。法律的には「契約社員」という特別な用語は存在しませんが、会社によって「嘱託社員」「準社員」などさまざまな呼称があり、パートやアルバイトも含む場合があります。
 契約社員も労働基準法の適用を受けます。
 また、契約社員といいながら、フルタイム労働で正規労働者と同様に就労しているケースが多く見られ、そのほとんどが有期雇用契約です。最近は契約社員だけ年俸制がとられているケースもあります。労働者を安く使う便宜的な方法として契約社員という雇用形態が活用されているのは重大な問題です。
 日本では多くは直接雇用ですが、中には、労働者であるにもかかわらず、労働法や社会保険の適用をまぬがれるために、「個人事業主」にしている場合もあり、「労働者性」の判断がかかせません。


労働者供給事業とは

 労働者供給とは、いわゆる「人貸し」のことで、実際に働く職場の使用者ではない第三者が中間に介在する間接雇用の一つの形態です(職安法第5条労働者供給の定義)。職業安定法第44条(労働者供給事業の禁止)では「何人も、次条(第45条)に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない(※1)」となっています。
 1986年施行の労働者派遣法(1985年制定)は、この職安法第44条を修正し、特定の対象業務に限って「労働者派遣」を合法化しましたが、現在は対象業務が原則自由化され、本来の例外措置が一般化されてしまいました。

※1 労働組合は供給事業ができる
 同法第45条では「労働組合が労働大臣の許可を受けた場合は、無料の労働者供給事業を行うことができる」と認めています。

請負・委託など

請負・委託・契約労働
偽装請負は許されません

業務請負(業務委託)と派遣労働

 業務請負(業務委託)の場合、請負企業は各種の事業法による規制は受けますが、労働者派遣法の適用は受けません。請負企業と労働者の業務請負(業務委託)契約は当事者間の自由契約となり、派遣法にあるような特別な要式はありません。
 適法な業務請負(業務委託)の労働者を含めた関係は図のようになります。
 しかし、名目上は業務請負(業務委託)であっても、その実体がなく、請負(委託)を偽装している例がたくさんあります。職業安定法44条ではこうした偽装請負を労働者供給 事業として禁止しています。
 「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(1986年労働省告示37号)が労働者派遣法制定とともに設けられています。職場に存在する請負といわれる労働者が適法な請負であるか、それとも偽装請負なのか厳しく点検し、違法状態があれば改善させる必要があります。


もうひとつの偽装請負
雇用関係を隠す「請負業者」扱い問題

 派遣法の適用を免れるための「偽装請負」とは別に、雇用関係を隠すための「偽装請負」もあります。本当は労働者を雇用しているにもかかわらず、個人事業主扱いをすることで、労働法制や社会保険制度の適用を免れようとする問題です。ILOも、06年総会の主要テーマに「偽装された雇用関係」をかかげ、労働者保護を進めるよう、勧告をだしています。
 労働者を「請負・委託業者」とすると、(1)企業は労働時間規制や安全衛生法に縛られ ず、労働保険料・社会保険料負担も免れることができる、(2)労働組合を結成されても労使関係ではないと団交拒否しやすい、(3)労務費を「請負代金」「外注費」にすれば、仕人控除に含め消費税を軽減することができるなど、企業にとっての「メリット」があるからです。
 偽装を明らかにし、労働者性を認めさせるためのポイントは、仕事の依頼や業務の指示を断れるか、業務遂行方法や勤務時間に裁量があるか、他社の仕事もできるか、自分で機械・設備など資本手段を持っているか、報酬はどうかなど、多々あります(行政通達や判例を参照)。
 「偽装された雇用関係」の横行を許さず、上記のポイントを念頭に労働者性を明らかにし、労働組合への結集を勝ち取って、「偽装」を打ち破り、労働者の権利を回復させる取り組みが必要です。


あなたは請負?
それとも派遣?
1つでもあてはまれば、あなたは請負ではなく、派遣です
作業場での労働者の配置、変更などの指示は、就業先企業の社員が行っている。
労働者に対しての技術指導や指揮・命令は就業先の社員が行っている。
作業スケジュールの作成や調整は、就業先の社員が行い、労働者に指示をしている。
欠勤等などがあった時、人員配置は就業先が指示、配置をしている。
就業先の社員が労働者の就業時間や残業、休日出勤の指示を行っている。
使っている機械・設備は就業先企業のものである。
職場の派遣請負について

派遣・請負の労働条件向上・ 直接雇用にとりくみましょう

1 導入にあたって労働組合の意見を聴く

 2003年の派遣法改訂で派遣期間の制限がない業務(3ページ表参照)以外は1年を超えて3年以内の期間であらかじめ期間を定めなければならないとなりました。派遣期間を決定する際、派遣先の事業所に労働者の過半数で組織する労働組合があれば、その労働組合の、労働組合がない場合は過半数を代表する労働者に書面で通知し、意見を聴くことになりました。
 労働組合は、法律で決められた最低限度の意見聴取を行わせることは当然ですが、派遣導入にあたっての労使協定を締結することが大切です。
 必要性があるからといっても、派遣労働はあくまでも臨時的・一時的措置であることを踏まえ、なし崩し的に正規労働者の代替となるような事態は防がなければなりません。

2 労働者保護法、派遣法が守られていますか

 派遣を受け入れる企業は当然のことながら労働基準法や労働安全衛生法、労働者派遣法を守らなければなりません。労働者派遣法には派遣先にも労働時間や安全衛生での責任を課しています。また違法派遣になっていないか、労働組合がしっかりチェックし、違法状態があれば改善させることが必要です。

3 派遣労働者の直接雇用、均等待遇を

 派遣労働者の雇用安定の観点からも派遣労働者の意見を尊重しつつ、派遣期間終了後の直接雇用を積極的に促進することも重要です。
 派遣労働者の労働条件が劣悪にならないよう、正規労働者との均等待遇を求めましょう。
 労働組合法では、労働協約の事業所単位の拡張適用(第17条)や地域的拡張適用(第18条)の制度があります。労働組合が獲得した労働条件を組合未加入の派遣労働者などにも適用させていく取り組みが求められます。

4 偽装請負を許さない職場を

 職場に業務請負が導入されている場合、厚生労働省の告示基準にてらして、違法な状態(偽装請負)となっていないか適宜点検する必要があります。
 また、適正な請負であっても、請負労働者の賃金、労働条件が不当に抑えられないよう導入前に労働組合として使用者との協議をすることも重要です。そして、請負労働者の直接雇用化をはかるようにしましょう。

ポイント 派遣の導入にあたっての労使協定
 派遣を職場に入れる場合、労働組合は安易に導入を行い、正規との代替を進めることにならないためにも、事前に会社と協議し、合意のうえで行うことが重要です。
 その際、派遣は本来、臨時的、一時的なものという原則にのっとり、派遣導入の必要性の当否を検討することが重要です。また、導入する場合は業務、期間、派遣会社、派遣労働者の労働条件、派遣期間終了後の直傭化などについても労働組合との協議事項とさせることが必要です。
 また、すでに働いている派遣労働者の直傭化、労働条件改善に取り組むことは言うまでもありません。


だれもが安心して働ける職場に
職場に派遣労働者を受け入れるとき
派遣受け入れにあたって労働組合に事前に通知され、協議していますか。
労働者派遣が禁止されている業務に派遣を入れていませんか。
派遣会社は厚生労働大臣の許可を受けているか、または届出を行っている適正な会社ですか。
派遣労働者に事前面接を求めたり、履歴書の提出を求めたりしていませんか。
派遣労働者に労働条件通知書に記載した内容以外のことをさせていませんか。
派遣労働者にも会社の食堂の利用などの福利厚生が適用されていますか。
派遣労働者が雇用保険や健康保険・厚生年金に加入していますか。
労働基準法や労働安全衛生法、男女雇用機会均等法等が守られていますか。
派遣可能期間を超えて、派遣就業させていませんか(2〜3ページ参照)。
派遣期間が終了すると派遣労働者を雇用する義務あるいは努力義務があることは知っていますか(5ページ参照)。
派遣労働者が苦情を言ったことを理由に解雇など不利益な扱いをしていませんか。
労働者派遣契約の解除にあたって派遣先が講ずべき措置について守っていますか。
業務請負と言いながら、受け入れ会社の上司が直接指揮命令をしているなど事実上の派遣になっていませんか。
組合に入って権利を確立しよう

労働組合をつくって権利を勝ち取った仲間たち

 あなたの職場に「偽装請負」の労働者はいませんか?マスコミに大きく報道された光洋シーリングテクノの 「偽装請負」労働者のたたかいが、労働行政を揺り動かし、いま、摘発が進んでいます。職場の違法状態をただし、まともな労働条件と直接雇用を勝ち取るために労働組合の力を発揮しましょう。
 登録型派遣の労働者についても、労働相談から地域労組での組織化や、インターネット、ケータイサイトなどを通じたネット(横のつながり)作りなどさまざまな試みが始められています。多くの派遣の仲間を迎え入れ、一緒に労働者としての権利を獲得しましょう。

請負労働者59人を直接雇用へ

勇気を出して声を上げたから会社の姿勢を変えた!

光洋シーリングテクノ

 徳島県のトヨタ系自動車部品メーカー、光洋シーリングテクノに働く「偽装請負」労働者59人が直接雇用を勝ち取りました。
 彼らは04年秋に20代の若者中心に、同社内正規組合への労働相談を通して組合を結成、JMIU徳島地域支部に加盟しました。
 05年12月、組合から労働局へ申告の結果、「適正化」を求められた請負会社は、採算が合わないと撤退。組合は派遣先である光洋シーリングに対して「直接雇用の申入れ」を求める運動を強め、ついに06年8月、県が提供した協議の場で会社側と合意しました。

私たちも労働者

団体交渉で要求実現

派遣労働者が組合加入で解雇撤回

 板橋のスーパーで働くパート組合員6人が、同じスーパーで長年ともに働いていた派遣労働者に組合加入を呼びかけ、2人が組合に加入。06年3月には会社から退職勧奨を受けた派遣労働者1人も新たに加入し、退職勧奨をはね返しました。
 会社は派遣の別会社を作り、そこからの派遣という形で多くの派遣労働者が働いています。
 現在、他のパートや派遣の仲間にも組合加入を呼びかけながら、労働条件の改善目指し、ともにたたかっています。

組合結成で
一方的な賃下げストップ
サービス残業是正

 ダスキン製品のレンタル販売やボトルウォーターの配送などを行う(株)ナックで、「外務員(請負)」の若者たちが組合を結成、会社からの一方的な賃下げ提示をはね返し、時間外不払い残業の是正を進めてきました。
 また06年6月、都労委は外務員の労働者性を認め、不当労働行為の禁止を求める命令を出しました。
 労働者性の判断に際し、都労委は(1)正社員と同じ勤務時間や休日、メールによる随時の業務指示、日々の営業日報の作成など、外務員は当該業務に専属していると考えられること(2)外務員の報酬は月額30〜60万、年収500万円〜600万円台であり、前月の実績によって支払われていることから、実質的には労務提供に対する対価であり、額も賃金として適当であること(3)事業所の人的構成が20名中、外務員16名で、業務を遂行するとで欠かせない存在となっている、ことをあげています。

おおさか派遣・請負センターのとりくみ

 大阪労連は05年11月、弁護士、研究者などとともに「おおさか派遣・請負センター」を結成しました。センターはホームページの開設、チラシの配布など宣伝活動に力を入れ、広く派遣・請負労働者の権利を知らせるとともに労働相談を受けています。現在、ケータイによるメール配信で派遣・請負労働者のネットワークを広げています。また今後このネットワークを使って実態や要求をつかみ、労働条件の改善や雇用の安定に向けた社会的なアピールをしていきます。

相次ぐ偽装請負・違法派遣の告発
団結の前進が行政動かす

 正規労働者と同じように働きながら、差別的な処遇を強いられてきた「偽装請負」の労働者が、各地で全労連の産別や地方・地域の仲間と団結して立ち上がっています。長い間違法派遣を放置してきた厚生労働省も、労働者の告発の声につき動かされて、新しい通達を全国の労働局に発信し、違法状態をただす指導・監督を強めています。

「安倍首相も問題だ!」と認識
 安倍首相は、参院予算委員会で日本共産党の市田忠義書記局長の質問に、「法令違反には適切、厳格に対応する」と答弁し、「ワーキング・プアといわれる人たちを前提に、コストあるいは生産の現状が確立されているのであれば大変な問題」と述べています。

「法律が悪い!制度見直せ!」と経団連の御手洗会長
 これに対し、財界・大企業は、法令違反の摘発に反省するどころか、“悪いのは法律だ”と開き直り、法律改悪を要求し始めました。御手洗冨士夫・キヤノン会長(日本経団連会長)は、安倍首相が議長をつとめる新しい経済財政諮問会議の場で、「請負法制に無理がありすぎる」「ぜひもう一度見直してほしい」と発言しています。

不安定雇用を永続させ、利益を吸い上げる狙い
 派遣法は、派遣先企業に対し、労働安全衛生の責任や一定期間以上派遣労働者を使った場合、労働者への直接雇用を申し入れる義務を負わせています。財界の狙いは、派遣法などの制約を破壊し、“雇用責任・安全衛生責任はとらずに、直接命令ができる”状態をつくり、低賃金で労働者を酷使できる環境をつくることにあります。

働くルールの改悪許すな!
職安法・労働者派遣法の改正を!

 組合に入ってたたかうことで多くの派遣・請負労働者が一定の権利の実現をはかっています。しかし、たとえ直雇用を実現しても、有期雇用のままでは不安定な状態は変わりません。安定した雇用と団結権を守るために派遣・有期雇用の制限を求める運動を広げましょう。また、さらなる派遣法や労働法制の改悪を阻止することが必要です。組織の拡大・団結の強化と合わせて、働くルールの確立に向けた学習と法制度改正運動にも、力をあわせて取り組みましよう。

財界のねらいは労働者の“部品化”使い捨てです


 
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