反貧困フェスタに1600人 貧困をどう伝えるか〜幅広い団体が参加し大きく成功
反貧困で50団体1600人が結集
桜が満開になり、うららかな春の日差しあふれる3月29日、東京神田一橋中学校で反貧困フェスタが開催され、1600人が参加した。昨年10月30日に発足した反貧困ネットワークの主催で、多種多様な参加団体・個人、労働組合、市民グループ、農民、消費者金融の被害者の会や、医療団体、争議団などが50以上、立場の違いを超えて集まった。入口脇のテントには全労連と連合の非正規センターののぼりが並びたち、校舎の2階のベランダからは「反貧困フェスタ2008」の横断幕の両脇に色とりどりののぼりがはためいていた。校庭には食べ物の香りが立ち込め、無料の焼き鳥、モツ煮、焼きそばなどのテントが勢揃いし、列をなしていた。
「貧困問題をどう伝えるか」をテーマに初めて行われた反貧困フェスタ。主催団体の反貧困ネットワークの宇都宮健児弁護士は開会式で、「貧困の実態をきちんと伝え、社会的に共有し、解決に向けた合意を形成することが必要だ」とし、「一日元気に貧困問題を学びましょう」と呼びかけた。
全労連非正規センターも参加
全労連は入口脇のテントで午後から労働相談を行ったほか、校舎2階の教室で「働き方向上計画〜労組・団交権の使い方」と題して模擬団交を行った。教室は一杯になり、演技者の真に迫った演技に、参加した青年たちは思わず引き込まれていた。楽しみながら労働組合の大切さ、団結の大切さを訴えて好評だった。また、労働相談コーナーでは、41歳のアルバイトで働いているという労働者が社会保険に入れてもらえないことや、有給などの労働条件をよくするためにはどうしたらいいかなど相談員に熱心に質問をしていた。
連合高木会長が派遣法改正や最低賃金引き上げに意欲
地下食堂では午前中、連合の高木剛会長が首都圏青年ユニオンの河添誠書記長と派遣ユニオン関根秀一郎書記長とともに「労働と貧困」のテーマでシンポジウム(コーディネータは朝日新聞 竹信三恵子氏)。現代の貧困の大きな一つの要因である派遣の働き方を規制する法改正に向けて、関根さんは(1)対象業務を1999年当時の専門業務に限定する、(2)登録型派遣を規制・禁止する、(3)マージンの上限規制の3つの柱を挙げた上で、当面自由化業務について登録派遣の廃止を求めていくと発言した。2か月以下の派遣禁止については、通訳業務などいくつもの例外を設けなければならなくなるので現実的でないとした。河添さんは規制の方向については異論ないとしつつ、派遣の契約期間途中の解雇が多発している、どうしたら保護できるかと問題提起をした。また、そもそも日払いの仕事にしかつけない困窮した人をどうするのか、生活の問題であり、住宅政策がなければ生活は改善しないと付け加えた。高木さんは2人の見解にすべて同感と述べた上で、ヨーロッパの例もあげながら有期雇用の考え方を整理しなければならないと発言。また、もっぱら派遣について、「自分の会社に入れたければきちんと雇えばいいのに、派遣なんだから給料やすくしてもいいというためだけにもっぱら派遣を行っている」と強く批判。また、最低賃金をもっと引き上げなければならないと問題意識を語った。他にも社会保障や、均等待遇、経営者の遵法意識の問題、一人親方の請負問題、労組の対応についてなど様々な切り口で発言があった。
派遣法改正については全労連も連合も全労協もほぼ同様の改正案を掲げている。また、両ナショナルセンターが相次いで非正規センターを立ち上げるなど、非正規問題への取り組みは足並みがそろってきた。今こそ、労働界が一致して派遣法改正に向けて力を合わせる時である。
日本政府に貧困があることを認めさせよう
フェスタでは他に、野宿者、シングルマザー、憲法、DV、税制社会保障、生活保護、子どもと貧困、多重債務などさまざまな切り口で貧困問題を取り上げる企画が用意されていた。内容もシンポジウム、ワークショップ、対談、ミュージカル、映画上映に加え、無料医療相談会とレントゲン健診や相談会、物販など多彩であり、どの企画も盛況だった。また、2階廊下にはずらっと書籍販売の机が並び、校舎入口のげた箱には貧困問題を報じる新聞や雑誌の記事が展示され、熱心に読む参加者の姿が見られた。
閉会式では貧困ジャーナリズム大賞が発表され、朝日新聞の清川卓史さんと、東洋経済新報社の風間直樹さん、岡田広行さんが表彰された。反貧困ネットワークの湯浅誠事務局長は閉会あいさつで、これだけ貧困が広がっているのに、日本政府は国内に貧困があることを認めていない。我々は貧困の実態を知っていることが強みであり、「これをどうするんだ」と社会と政府に突きつけていこう。大都市でも地方都市でも連携した取り組みが起きることを願っていると述べた。
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