全労連と労働法制中央連絡会は10月6日、新宿駅前で安倍「雇用改革」にストップをかけ、働きがいのある人間らしい仕事(ディーセントワーク)の実現を訴える宣伝行動と、都内でディーセントワークデー記念集会を行いました。国際労働組合総連合(ITUC)が呼びかけた「ディーセントワーク世界行動デー」に呼応したもの。
宣伝行動では休日で多くの買い物客らが行き交うなか、チラシ入りのティッシュを配布し、「憲法をいかし安定した雇用を求める」署名を呼び掛けました。全労連の小田川事務局長、電機・情報ユニオンの米田(まいた)委員長、国公労連の九後書記次長、東京労連の伊藤議長がディーセントワークに逆行する「解雇特区」や派遣法の全面改悪などに反対し、労働組合に入ってブラック企業に立ち向かおうと訴えました。世代を問わずチラシの受け取りはよく、安倍「雇用改革」への関心の高さがうかがえました。
署名に応じた女性は「年金を減らされて困っている。そのうえ子どもは非正規で収入が少なく親に頼らざるをえない。親がいなくなったらどうしていくのか心配だ」と、庶民に冷たい政治に不安と怒りを滲ませていました。
●ディーセントワークは憲法いかす取り組み
日本教育会館で記念集会が開かれました。全労連の小田川事務局長が主催者あいさつで、「ILOが提唱した、働きがいのある人間らしい仕事・ディーセントワークの提言は、憲法をいかす取り組みでもある。アベノミクスで労働法制の改悪、規制緩和がされようとしている。国家戦略特区で解雇規制や労働時間規制をなくす、規制改革会議は日雇い派遣の見直し求める意見書を出すなど執拗に労働法制に穴を開けようとしている。もの言えない、労組に入りづらい派遣などの非正規労働者への攻撃で品性も理念もない。問題意識を共有し、たたかいの意思統一をする集会にしよう」と呼びかけました。
「日本でもディーセントワークを―ブラック化する労働・安倍『雇用改革』への対抗」と題し、伍賀一道・金沢大学名誉教授が講演。伍賀氏ははじめに、アマゾンの「ネットで注文すればすぐに届く」という便利さについて、「サービスを実現するために、低賃金のパートや派遣労働者の手で出荷され、深夜に荷物を運ぶトラックドライバーなど労働の低下とセットで成りたっている」ことを述べました。ディーセントワークについて、(1)まともな雇用、(2)まともな賃金、(3)まともな労働時間、(4)労働災害のない職場状況、(5)劣悪な労働条件(ブラック企業)を拒否できる条件の整備、(6)社会保障、(7)労働者と対等に交渉できる労働者の権利をあげ、相互の関連が重要だと指摘しました。
次に、ディーセントワークを否定する「安倍雇用改革」について述べました。正社員を解雇容易な「限定社員」と無限定な働き方を強いられる「無限定社員」に二分化することに対し、「長時間労働の無限定正社員はありえない。『国連・社会権規約委員会の日本政府に対する勧告(本年5月)』にある『安全で健康的な労働条件に対する労働者の権利、労働時間に対する合理的な制限に対する労働者の権利を守る義務にしたがって、締約国が長時間労働を防止する措置を強化するよう勧告』したことに反する」と指摘しました。
また、「成熟産業」から「成長産業」へ労働者の移動を活発化するため、雇用調整助成金にかわって労働移動支援助成金を抜本的に拡充することについて、「人材ビジネス業者を活用して正社員のリストラを推進する企業に助成金を支給し、ハローワークの求人情報を人材ビジネス業者に開放することはリストラや労働移動自体を営利対象とすることを意味する」と述べ、「労働移動の促進は非正規雇用の増加を加速するリスクが大きい」と指摘しました。そして、「失業なしの労働移動は考えられない。失業給付が改悪され続けているなかで仕方なしに仕事に就く人が多いという実態がある。失業する自由・権利、制度の構築が必要」と訴えました。
●特区はディーセントワークの対極
講演をうけ、参加者が発言。「日本IBMでは、ロックアウト型解雇をしているが、その前段に、成果主義、長時間・過密労働でメンタル不全になり、休職、過労死・過労自殺に追い込まれている実態がある。会社が病気にして、会社が解雇している。解雇撤回闘争とともに働き方の規制を強めていかなければならない」(JMIU)、「特区はディーセントワークの対極にある。特区を設けて労働基準を緩和することは社会政策として成り立つのか。大阪などが手をあげているが、自治体規模で労働基準が変更になるということは、道州制の動きと同じではないか。何としても労働法制の改悪を阻止する」(全労働)、「女性の間接差別とたたかってきたが、限定正社員制度を女性だけでなく、すべての労働者に広げようとしており断固反対だ。特区を『ブラック特区』として大々的に宣伝すべき」(全労連女性部)、「派遣について一時的・臨時的なものに限定する、常用代替としないということについて論議されているが、有期雇用については、恒常的・永続的に使っていい、雇用の調整弁であるとし、裁判所も言っている。派遣の一時的・臨時的なものに限定することは死守すべき。常用代替についてだが、派遣には正規の仕事をさせない、させたいなら派遣を正規にすべき」(自由法曹団)などの発言がされました。
閉会あいさつで全労連の生熊副議長(JMIU委員長)は、「特区では、労働基準にまで足を踏み込んできた。踏まれたら踏み返さなければならない。労働法制の改悪は完膚なきまでに撤回させなければならない。力をあわせたたかっていこう」と結びました。