全労連、MIC、自由法曹団、女性団体などでつくる労働法制中央連絡会は10月7日、東京労働会館ラパスホールで2015年度総会を開き、24団体・43人が参加しました。過日成立した欠陥だらけの派遣法は抜本改正、労基法改悪法案は廃案、解雇の金銭解決阻止にむけ、引き続き共同を広げたたかっていく決意を固めあい、2015年度方針、新役員を確認しました。
小越代表委員(労働総研代表理事)が開会あいさつ。「派遣法は通ってしまったが、中央連絡会としては阻止するために奮闘してきた。安倍首相は新自由主義改革を推し進め、3本の矢が破たんしているのに新しい3本の矢を言い出した。1億総活躍と言うが企業のもうけのために働けということだ。労働総研では、貧困化に着目してプロジェクトを立ち上げ、来年の6月に報告書を出す。雇用、労働時間、賃金、女性、社会保障、解雇での対抗策であり総力をあげている。憲法が順守され、基本的人権を保障する世の中にする、ディーセントワークの実現のため共同してかんばっていこう」と呼びかけました。
伊藤事務局長(全労連雇用・労働法制局長)が議案を提案。はじめに1年間のたたかいの経過について述べ、派遣法案については「当事者が立ち上がり記者会見をしたり、厚労委員会で参考人として意見陳述したりと今までにない変化がうまれた。自由法曹団、東京地評と共同し初めて派遣110番に取り組んだ」とたたかいを評価。2015年度の具体的な取り組みとしては、(1)改悪労働者派遣法を職場に入れさせない取り組み、(2)労基法・労働時間法制の改悪を止め、労働時間規制強化を勝ち取る取り組み、(3)解雇の規制緩和を止める取り組み、(4)ブラック企業根絶・使用者のモラルハザード防止の取り組み、(5)中央連絡会の組織運営の強化について提起しました。
討論では7人が発言。全労働の河村副委員長は派遣法について「派遣会社でマネジメントする人と話したが、派遣先に直雇用をお願いするなどありえないと言っていた。スキルアップして正社員にと言うが、派遣労働者にスキルがないわけでもなく、企業が派遣労働者を使いたいと思って使っているだけだ。政府が言っても現実的でない。正規にする武器はない」と指摘しました。民放労連の井戸副委員長は、非正規労働者=構内労働者の組織化の取り組みを紹介。「ウェットティッシュやマスク、チラシを配って対話している。配って組織化できれば苦労はない。構内労働者の信頼勝ち取ることが入口。構内労働者のため にかんばっている姿を見せることが重要」と話しました。
JMIUの三木書記長は「9月16日に、(1)派遣の受け入れは1年、最長でも3年、(2)派遣で3年経っていて欠員があったら直接雇用の申し込みをする、(3)旧26業務で3年を超えたら直雇用化、(4)均等待遇の実現の4点で統一要請書を提出した。10月1日の回答日には、欠員を正規化するとの回答もあったが、法令順守との回答が多かった。法律が改悪されたのだからそれを守るのは悪い回答だが、職場では法令順守ならよいか、との受け止めがされることが多い。悪法の内容を学習する必要がある。残業時間では、36協定の特別条項の廃止や条件をつけさせたい。上限規制と時間短縮を正面に取り上げることが大事。自動車業界などでは、工業会でカレンダーを作っていて1企業として労働時間を減らすのは難しいとの回答もある。社会的時短闘争とすることが大事だ」と指摘しました。
大田区労協の小林さんは「大田労働法制連絡会では、働き方がどう変わってしまうのか知らせることが重要だと定期的に宣伝をおこなっている。派遣を入れさせない取り組みについて、派遣法が改悪されても、職場でがんばればよいということをどう伝えるかだ。地域での訪問活動を提起してはどうか。タイムリーな宣伝チラシ作ってほしい」と積極的な意見が出されました。
自由法曹団の鷲見弁護士は「派遣110番を行ったが、派遣労働者は法案の内容をよく理解して反対していた。法的規制がなくなるのだから、たたかわなければ派遣は増えるし、正規からの置き換えも進む。改悪法のもとでも少しは使えるものがあるか早急に議論する必要がある。労働時間での110番も、どういう中身でやるか検討していきたい」と述べました。
東京地評の柴田常任幹事は「労働法制改悪反対での新聞号外を出し、学習をすすめてきた。弁護団の力は大きく、号外の執筆、学習会での講師、宣伝の弁士とお願いし、改悪阻止のため一緒に取り組んできた。11月18日に予定されている派遣法での職場のたたかいについての集会は重要。新たなたたかいに転じていきたい」と決意を述べました。
新婦人の小島中央常任委員は「9月の中央委員会では働く問題についても交流した。派遣法改悪では、県労連と共同し学習会に取り組んだことなどが報告された。会員は働いている人が多いが、労働組合に入っている人は少なく、労働法も知られていない。楽しいことをやりながら学習を続け、がんばっていきたい」と述べました。
伊藤事務局長が総括答弁し、議案を採決。新役員が拍手で確認されました。自由法曹団の荒井団長が閉会あいさつで「安倍首相は労働法制を根本的に改悪しようとしている。正規で直雇用、期間制限がない労働が社会の基礎にならなければならないのに、それを崩そうとしている。雇用の流動化と言うか、液状化現象のようだ。阻止するための運動を大きくするため、力を尽くしていこう」と訴えました。
総会では、日本共産党の梅村さえこ衆議院議員が来賓あいさつしました。
國學院大学・本久洋一教授が記念講演
総会の前段では、「現下の日本の労働法政策について」と題し、國學院大学法学部の本久洋一教授が記念講演しました。本久教授は、安倍「雇用改革」の目標について、(1)正社員層の切り詰め(限定正社員の法的カテゴリー化)、(2)有期・派遣の利用拡大、 (3)中核的正社員の労働時間規制の大幅緩和、(4)労働力の流動化の促進(解雇の要件・効果にわたる緩和、有料職業紹介事業規制の緩和)の4つにまとめ、それぞれの実現のために進められている規制緩和の進捗状況について、解説されました。
そのうえで、これらの政策の理論的・思想的な背景として、ヨーロッパの「フレクシキュリティ」政策を紹介しました。それは、規制緩和で、労働市場の柔軟化(フレクシビリティ)をはかり、成長産業に労働力を移動させつつ、社会保障を整備する(セキュリティ)という発想の政策です。格差拡大の現状をリセットする発想に、期待する声も多かったが、結局、金融危機以降の欧州の状況をみると、社会保障は機能低下し、格差と貧困が広がったとのことでした。
金融資本主義が台頭して以降のたたかいは困難としつつ、本久教授は、労働者間の分断と対立をあおる労働法の規制緩和との闘いには、分断を乗り越える労働組合運動の力と、国民的な共同がカギだと締めくくりました。