関東・東北豪雨災害から1カ月となる10月10日、全国災対連は鬼怒川の堤防決壊により甚大な被害を受けた常総市で現地調査を行い、全労連も参加しました。市役所も訪問し、激励と要請を行いました。
現地調査に参加したのは農民連、自治労連、保団連、新建、東京災対連、地元茨城などから20人。全労連は井上事務局長含め3人が参加しました。農業・住宅・工場などの被害状況の聞き取りや常総市への激励・要請、参加者と交流し、被災者の救援と復興の課題を明らかにしました。調査団が訪れたその日から全線が開通した常総線・水海道(みつかいどう)駅に集合し、調査を開始しました。車窓からは広大な穀倉地帯が広がり、長時間浸水し、刈り入れできないまま横倒しになった黄色く色づいた稲穂が横たわり、刈り取られた切り株からは青い芽が伸び、そのコントラストが陰影を醸し出しています。手つかずのまま季節に合わぬ田園風景が広がっていました。
「体制が整うまで無収入」農家の所得保証確保を
常総市三坂町の農家飯田宅でお話を伺いました。 飯田さんは妻と長男・次男の4人家族農営で主に米45ヘクタール、麦36ヘクタールを耕作しています。倉庫には巨大な乾燥機と米俵がうず高く積まれ、周辺にはコンバイン、巨大なトラクターなど耕作機器が何種もありました。
飯田さんは「40年以上前から国の農業政策にしたがってきた。過去の実績に従って奨励金を拠出してほしい。1年1作で、今年できないと収穫がなくなってしまう。麦は11月、米は5月の種まき時期を逃してしまうと作物はできない。体制が整うまで無収入をなんとか改善してほしい」と強く訴えています。
土砂の除去については、激甚災害の「本激」に指定され9割を国が負担しますが、1割はどこが負担するのかが問われています。粉砕して燃やすのが最善ですが、野焼きもできず、瓦礫除去は、機械では破損の恐れがあり、ボランティアの手で行うのが最善だと語っていました。
生活再建に向けて奮闘する避難住民、ボランティア
避難所となっている石下総合体育館では、総市教育委員会のスポーツ振興課長補佐兼管理係長の古谷(ふるや)さんにお話を伺いました。
「当初からボランティアの皆さんにはとても感謝している。現在88人を収容、13人が外国人で、もとの生活に戻るため昼間は自宅整理、夕方暗くなったらこちらに戻ってくる。生活再建にむけて3度の食事の提供・炊き出しを実施している。避難所の環境整備については20人のボランティアがトイレやシャワーの清掃やごみの分別をしている。10月4日で支援物資の受付は終了し、食事、毛布など限定物資のみ受けつけている状態。西部地区は被災していないが、東部地区の被害は大きくヘルプの声に応じることができなかった。田舎なのでコミュニティのつながりを大事にしたい」と現状を報告してくれました。
断熱材の廃棄に50万円負担 市は柔軟な対応が必要
常総市上蛇町の吉野公園内に、「吉野サポートセンター」を9月19日に開設してから3週間が経過します。センターを切り盛りしてボランティアを送り出している染谷さんと稲葉さんから、ブルーシートで昼食を挟みながら説明を伺いました。
これまで400人の登録があり、80件の要望に対応してきたそうです。大分や名古屋からもかけつけ、濡れた畳は重量で、1軒で2〜3日、トラック何台分もかかる状況や支援物資のお米を被災農家に届けるととても喜んでくれたと話していただきました。
いま一番問題になっているのは、ゴミの問題です。壁などに使われる新建材の断熱材が床上浸水で大量に廃棄物になっています。これは産業廃棄物として引き取りが有料になるため、50万円もかかる方がいるそうです。「ボランティア活動領域を超え太刀打ちできない。違うレベルの問題が発生、柔軟な対応を早急に求めたい」と課題を強調しました。
土で埋まったビニールハウス「この水害を早く忘れたい」
おいしい苺を生産していることで有名な農民連の会員さんを訪問しました。平屋建ての母屋が床上浸水し、家の周りにある倉庫も土塀の歴史を経ているものばかりで、背丈近くまである水跡が漆喰の壁にくっきりと刻まれていました。現在仮住まいをしています。
苺を栽培していたビニールハウスは押し寄せた濁流に浸かってしまいました。押し流されて曲がった骨組みだけになったビニールハウスもありました。再建の目途は立っていないといいます。
野呂さんは、「見舞いにきてくれるのはありがたい。何が困るって、稲作も同じだが農機具がいっぺんにダメになったのが痛い。この水害を早く忘れたいよ。忘れたいと思っている」と破顔一笑で語ってくれました。
中小企業に遅れる支援の手
常総市には約1000件の中小企業がありますが、被災した中小業者への支援が遅れています。小貝川の堤防下の新木田でステンレス加工部品を製造している結束(けっそく)さんの工場を訪問しました。25歳で独立して50年になる現在75歳。海外に輸出するトナーを作るホイルをつくっていました。
「水害は初めてで、正直こんなところまでくるとは思わなかった。後片付けをしながら仕事をしている状況で、納期を心配している」と話す結束さん。浸水でコンピュータ制御の板を曲げる機械が使えなくなり、昔の機械を機械屋さんに直しに来てもらって作動させているところです。
中小企業に対する自然災害への公的補償・救済制度は弱いのが現状です。自己責任によるところが大きく、支援の手が十分届いていないことも再建の大きな足かせになっています。
常総市副市長と懇談・要請 ゴミと住宅問題が喫緊の課題
常総市役所を訪問し激励・要請をおこないました。昨年11月に開庁したばかりの市庁舎も、1階が浸水する被害を受けました。
この日は、石井啓一国土交通大臣が訪れており、塩畑実副市長が対応。塩畑副市長は「ゴミ問題が最大の課題で困っている。いまだに400人の避難者がいる。生活再建支援法の対象は全壊と大規模半壊。市独自に何ができるのかが喫緊の課題である」と強調しました。
参加者からは「作物の作付けに間に合うのか。共済に加入していない場合でも機械の補償をしてもらえないか。意欲を持つ人も離職・離農しかねないので国がやらねば市でやってほしい」「自治体の職員は、自らのことは後回しにしてでも災害復旧に全力をあげている。心のケアをサポートしてほしい」「中小業者は救われないのでないか、グループ補助金など市の考え方を示してほしい。所得が減るので納税の減免措置を求める」など各分野からの要望の声を届けました。
全労連の井上事務局長は、「生業の再開が重要」と指摘し、断熱材の廃棄料を市として負担するよう求めました。また、全国災対連の川村事務局長(全労連常任幹事)は、「個人では限界があり、生活再建支援の上限を500万円に引き上げねばならない。市民生活へ希望を与えるためにがんばって欲しい」と述べました。
最後に参加者はこの日現地を見て聞いて感想を出し合いながら意見交換し終了しました。
全労連
関東・東北豪雨災害救援カンパ
振込先
名 義:全国労働組合総連合
入金先:郵便振込 00170-3-426272
※通信欄に「15年9月台風18号カンパ」と必ず明記してください。
活用先
集約された救援カンパは、被災状況等を勘案して当該県労連に渡す予定です。
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