雇用共同アクションは9月27日、文京区民センターで、安倍「働き方改革」にだまされるな! STOP「定額働かせ放題の労基法改悪、首切り自由化、労政審解体」 生活時間と賃金を取り戻そう! 9・27決起集会を開催し、220人が参加。「世界で一番労働者が働きやすい国をめざして闘おう!」と決意を固めあった。集会には、全国過労死を考える家族の会東京代表・中原のり子さん、民進党・西村ちなみ衆議院議員、日本共産党・高橋千鶴子衆議院議員、社民党・福島みずほ参議院議員からメッセージが寄せられた。
MICの是村高市副議長が開会あいさつ。「安倍『働き方改革』というが『働かされ方改革』だ。強権政治による労働法制改悪を止めるには、ナショナルセンターの違いを超えたたたかいが必要だ。ストライキ戦術を視野にいれ、労働組合の旗を高く掲げてたたかおう!」と呼びかけた。
続いて、労働弁護団・棗一郎弁護士が来賓あいさつ。「本日、『働き方改革実現会議』の初会合が開かれている。長時間労働の上限規制をするというが、本当にできるのか。やるならば、青天井の今の労基法を改正しなければならないが、それは、今国会に出されている内閣提出の労基法『改正』法案とは矛盾する。今、政府が言いだしたことは、われわれがずっと要求してきたことである。社会が行き詰まり、経済成長のためにも必要と言い出したということだ。労働者が一番働きやすい国をわれわれの手で実現しよう」と参加者を激励した。
「無いよりはまし」といえるか?過労死オーバーの上限規制
インターバルは方針化せず
MIC元議長で毎日新聞記者の東海林智氏が「安倍『働き方改革』のウソとマコト〜安倍政権下で私たちに求められるものは〜」と題し講演。
はじめに「安倍首相就任以来、私はずっとフィラデルフィア宣言のことを言い続けている。安倍首相がやろうとしているのは、それと真逆のこと。『働き方に関する政策決定プロセス有識者会議』ではILO原則にも攻撃を開始、労政審の三者構成システムそのものに手をつけようとしている」と話をはじめ、以下の論点を示した。
・安倍政権のすすめる労働政策の「前期」は、「人を動かす、派遣法改悪、無限定正社員、解雇の金銭解決」などを全面にたてた新自由主義的規制緩和を全面に出していた。
・ところが「現状」は、「非正規の待遇改善、最賃引き上げ、女性・高齢者の就労促進、長時間労働の是正」などが打ち出されている。
・「前期」から「現状」への“転向”の背景には、(1)人手不足対策として女性・高齢者の労働参加を促す産業の要請、(2)労働参加の障害としての長時間労働・低賃金・格差問題(アベノミクスを含む過去の政権の無策の結果)の顕在化といった事情がある。
・そこで、経済産業省の官僚が軸となり、アベノミクスの失敗を糊塗し、経済政策への失望を、「非正規にやさしい」「究極の成長戦略」を売り出す作戦を描いた。これは参院選以降も争点つぶしとして力を発揮している。
・ただし、労働政策打ち出しの見かけの変化に関わらず、新自由主義的労働政策には変更はなく、「世界で最も企業が活動しやすい国を目指す」のままである。派遣法再規制の動きはなく、労基法改悪案もそのままでホワイトカラー・エグゼンプションを強行するつもり。そのためのネタにされる、残業上限規制は実効性がないものしか検討されていない(上限時間100時間か、80時間未満+適用除外産業の設定か、限度基準+大量の適用除外設定か。インターバル規制はさわらない)。また、同一労働同一賃金もガイドラインでお茶を濁し、差別の合理性の立証責任を使用者に課すこともしない。交通費と社員食堂利用の差別是正程度となる見通し。最賃1000円も平均値だから大半は1000円未満。地域格差は放置。労政審改革で「非正規の声を代表するものがいない」で連合を揺さぶりつつ、非正規を多くつかう人材サービス会社を重用?
・自分の労働条件に関与すること。声をあげよう。人間らしく働きたいと願う労働者の連帯を。たたかいに負けはない。
安倍政権の強権的やり方と対峙する中で、ストライキ権の再評価を。社会運動の場でも、労働組合の旗を(文字通り)掲げること。
「働き方改革は良さそうな政策と思えて労組も反対しづらいように、練りに練られている。そこを突破し、多くの人に働き方改革の問題点を納得してもらわなければならない。労働組合が覚悟を持って、ストライキも含め腹を決めてたたかうことが必要だ」と訴えた。
講演に続き、3人が特別報告を行った。
(1)「バス運転者の労働実態」として、建交労・京王新労組の佐々木仁委員長が、京王バスの暴走事故の背景にあった長時間過密労働、特に長時間残業をプラス査定し、残業拒否を減点する評価制度の問題を告発した。
(2)「外国人労働者の実態と技能実習法案の狙い」として、移住者と連帯する全国ネットワークの山岸素子事務局長が、外国人技能実習生が強いられている低賃金・長時間労働の過酷な実態を明らかにし、そうした人権侵害を生む原因が、技能実習制度そのものの中にあることを説明した。
(3)「裁量労働化・非正規化が健康に及ぼす影響」として、いのちと健康を守る全国センターの岡村やよい事務局次長が、所得・雇用によって健康格差があり、それが深刻化している実態があることなどについて報告した。
講演と特別報告を受け、5つの労働組合から決意表明があった。
(1)ネットワークユニオン東京・日本ナショナルインスツルメンツロックアウト解雇争議当該・原告の田村正道さん
(2)日本医労連・三浦宜子書記長
(3)コミュニティ・ユニオン首都圏ネットワーク岡本哲文事務局長
(4)純中立労組懇・全農協労連・宮崎 陽子女性部事務局長
(5)航空連・JAL不当解雇撤回裁判原告団・山口宏弥団長
日本医労連の三浦宜子書記長は「医療の現場では、2交替勤務が増えており、1カ月の変形労働で残業がなくても16〜17時間の勤務が可能となっている。夜勤・交替制労働の規制を訴えている。8時間以内の勤務、インターバル12時間、夜勤・交替制労働は週32時間労働を求めている。先日国際シンポを開催したが、フランスの夜勤・交替制勤務では32.5時間だ。まともな医療はまともな働き方で実現できる。署名にもご協力いただきたい」と訴えた。
情勢報告と行動提起を全労連の伊藤常任幹事が行った。「講演で明らかにされたように、安倍首相のマコトは一貫して『世界で一番企業が活躍しやすい国』にしようとしている点。それを、わずかな改善・ごまかし改革で、見えなくさせている。もし、『働き方改革』は玉石混交で良いことも言っている、トップダウンにも良い面がある、是々非々で、といった対応をしていると安倍政権の手の内にはまることになる」と強調。安倍政権のねらいを徹底的に批判し、世の中に知らせていく、声をあげていくキャンペーンを展開していくことの重要性を述べ、(1)国会請願署名への緊急な取り組み、(2)10月19日の国会座り込み行動、(3)情勢に応じた傍聴、要請などの国会行動などについて提起した。
集会アピールを全労協の柚木 康子常任幹事が読み上げて参加者の拍手で確認し、「閉会あいさつ・団結がんばろう」を全国港湾の糸谷欽一郎委員長が行い、集会を締めくくった。
<生活時間と賃金を取り戻そう!9.27労働者決起集会 集会アッピール>
安倍政権は昨年、生涯派遣に道を拓く派遣法の大改悪を強行し、8時間労働制を破壊する労働基準法改悪案をこの臨時国会に上程している。一方、安倍首相は年初に突然「同一労働同一賃金」で非正規雇用の処遇改善を言いだし検討会の審議が始まった。
8月3日の内閣改造時には「働き方改革実現会議」の下に年度内に具体的な実行計画を出すとし、「長時間労働を是正する。同一労働同一賃金を実現し非正規という言葉をこの国から一掃する」と公言、9月2日には内閣官房に「働き方改革実現推進室」を設置、「『モーレツ社員』の考え方が否定される日本にしていきたい」と表明した。
果たして、安倍政権の政策で労働者の状況が改善されるのか? 否である。
「長時間労働を是正する」方針に高度プロフェッショナル制度や裁量労働制の拡大の労基法改悪案は、真っ向対立する。労働時間規制の適用除外を拡大する法案では長時間労働は無くならない。不本意な『モーレツ社員』と過労死を増やすだけだ。これでは女性は活躍などあり得ない。すべての労働者の労働時間の上限規制と、使用者に対する労働時間管理義務づけこそ必要だ。
労働基準法32条は“8時間を越える労働を禁止”している。それは、収入のための仕事は1日8時間に制限し、休息と生活の自由を確保するという労働者の人権を保障する柱であることを確認し、1日の労働時間上限規制、インターバル規制、1日・1週・1カ月・1年の時間外規制、を求めよう!
同一労働同一賃金は実現するのだろうか? そもそも有期労働契約の濫用を野放しにし、世界に冠たる非正規格差を生み拡大してきたのは自民党政権だ。秋にも出るといわれていた「不当な賃金差の基準を示すガイドライン」は年内策定と報道されている。法的根拠のないガイドラインで賃金是正が進むなら今のような雇用形態による格差などあり得ない。同一賃金の中味は、手当部分は同一に、基本給は雇用管理により差を認めるとの報道もされ、経営団体は「日本型同一労働同一賃金」をと表明している。
同一労働同一賃金に日本型や欧米型があるとでも言うのか!
「非正規という言葉を一掃する」とは何を意味するのだろうか? 「透明かつ公正な労働紛争解決システム等のあり方に関する検討会」が解雇の金銭解決制度にむけ動き出した。雇用を流動化させ、個人請負化を促進し、正規雇用者を一掃する道ではないのか。
解雇の金銭解決制度は労働者の権利を守る労働組合を破壊し、企業のやりたい放題に道を拓くものだ。阻止しよう。
安倍政権の狙いを見極めよう。
「労働は商品ではない」と改めて確認しよう。雇用形態、性別・性的指向にかかわらず、一人一人が持てる力を発揮できる社会の実現を求めていこう。
世界で一番労働者が働きやすい国をめざして闘おう!
2016年9月27日
生活時間と賃金を取り戻そう!9.27労働者決起集会 参加者一同