早くもほころび見せる年金改悪
2004年6月11日報道特集 |
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<出生率低下>
若者減り、年金不信加速 年金改革ほころび 給付50%維持
保険料を固定
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2003年の合計特殊出生率が政府が想定していた1.32を大きく下回る1.29となったことは、公的年金など社会保障制度の将来設計だけでなく、日本経済の行方にも大きな影響を与えることになりそうだ。発表の時期が年金改革関連法の成立後となったことについては、与党内からも、「厚生労働省は説明責任を十分果たしていない」との厳しい声が出ており、国民の年金不信はますます高まりかねない。 「将来も給付水準50%を維持する」「保険料に上限を設けて将来も固定する」 昨年の合計特殊出生率が政府の予測を下回ったことで、年金改革関連法が掲げた2つの約束は、早くもほころびを見せ始めた。 同法は、新たに厚生年金を受給する世帯(夫が40年加入、妻が専業主婦)の給付水準について、現役世代の平均賃金の50%を確保するとした。しかし、この数字は、将来人口推計の中位推計を基礎としたもので、出生率を低く予測した推計では、50%を大きく下回る。 給付水準50%を守るには、財源の不足分を埋めるため、保険料の上限をさらに引き上げたり、年金支給開始年齢を引き上げるなどの見直しが必要だ。 現役世代が負担する保険料で、高齢者の年金給付を賄っている年金制度では、将来の人口見通しは年金財政を左右する前提条件だ。 だが、これまで政府は少子高齢化の進行度合いを過小評価し、そのたびに「年金財政の見通しが狂ってしまった」と説明して、給付のカット、負担のアップを国民に求めてきた。 先に成立した年金改革関連法は破たんしかかっている年金財政を一時的に立て直す意味がある。しかし、前提が崩れるようだと、与野党がさらに取り組むとしている年金制度の抜本改革は一層急務となる。 法改正後の公表 批判も 少子化対策大綱 具体化は不透明 |
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将来人口推計 |
国立社会保障・人口問題研究所が、おおむね5年ごとにまとめる将来の人口推計。2002年1月の推計では、未婚率の上昇や晩婚化などの傾向を踏まえ、将来の人口予測を大幅に下方修正し、2007年以降は人口が減少に転じるとした。 |
【年金ニュース】
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厚生労働省が年金改革関連法を設計する際に基礎にした指標や将来推計の計算方法を見直すことが、10日明らかになった。保険料収入の将来見通しがはずれている原因などを検証、年金財政の見直しに反映させる。お年寄り1人を現役世代が何人で支えるかを示す年金扶養比率も見直す方針で、支え手が3.29人(01年度)から2人台に落ち込む可能性がある。 今月中に、社会保障審議会の年金数理部会で本格的な検討を始める。都村敦子部会長代理は「年金加入者の推移など様々な見通しが、実際の数字とずれている。より厳密な方法に見直していく必要がある」と話す。扶養比率のほか、保険料収入や積立金額の将来見通しなどが対象になるとみられる。今後、年金の一元化が焦点になるため、同省はできるだけ早くまとめたいとしている。 国民年金(基礎年金)の扶養比率は、被保険者7016万8000人を、20年以上の加入歴がある老齢・退職年金の受給権者の推定値2130万8000人で割ったもの。同省は「高齢者を支える現役世代は3.29人から、25年に1.9人になる」と説明してきた。しかし、現役世代には保険料の未納者や免除者、保険料を払っていない第3号被保険者が含まれている一方、「支えられる側」には遺族年金や障害年金の受給権者を含めていない。 01年度の未納者、免除者、学生納付特例対象者、第3号被保険者を引いて計算し直すと、支え手は2.36人になる。高齢者に遺族年金や障害年金の受給権者を加えると、扶養比率はさらに下がる。このため、部会の委員からは「正確に分析していない」との指摘が出ていた。また、01年度の国民年金保険料の収入総額は、納付率が悪化したり、免除者が増えたりしたため1兆9538億円と、99年の見通しより462億円少なくなった。 (朝日新聞06/11)
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