【談話】
「労働基準法の一部を改正する法律案要綱」の答申について
2003年2月18日
全国労働組合総連合
事務局長 坂内 三夫
- 本日、労働政策審議会は、厚生労働大臣に対し、「労働基準法の一部を改正する法律案要綱」を答申した。昨年末、審議会が提案した答申との大きな違いは、「解雇が無効な場合でも、使用者の申立てにより金銭賠償で雇用契約を終了する」旨の条文が削除されたことである。これは、この間の各労働団体、法律家団体による抗議行動の成果であり、今国会に上程される予定の労働法制改悪反対闘争の緒戦での勝利である。しかし、「法案要綱」には、依然として現行労基法に重大な改悪を施す規定が入れられており、このまま認めるわけにはいかない。
- 「法案要綱」は解雇について、「使用者は…労働者を解雇することができること。ただし、その解雇が、客観的かつ合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とするものとすること」としている。この条文案は、ただし書きに、解雇権濫用を制限する内容をもつものの、本文に使用者の解雇権を明記しているため、(1)裁判において、労働者側が使用者の権利濫用を証明しなければならない条文構造となってしまっている、(2)使用者に解雇権のあることを殊更に印象付け、不当解雇を増加させてしまう、等の問題をはらんでいる。そもそも労働者保護を目的とする労基法には、解雇を規制する条文のみが盛り込まれるべきであり、使用者の解雇権を明記すること自体、法の趣旨に反する。
- 有期雇用契約は、現行法では原則1年とされている。この原則が、反復更新された雇用契約を期限の定めのない雇用とみなす判例法理と結合され、有期雇用の安易な拡大を抑制している。今回の法案要綱では、原則1年を3年に、専門的知識等を有する労働者等の場合は5年に延長する提案となっているが、これは、(1)常用雇用の有期雇用への大規模な置き換えと、(2)事実上の若年定年制の導入へと道をひらくものである。そもそも有期雇用契約は、使用者に対する労働者の立場を極めて弱くするものであり、この点でも今回の「法案要綱」は認めるわけにはいかない。
- 裁量労働制については、導入要件を緩和し、対象事業場を無原則に拡大する内容となっている。長時間残業をしても残業代が払われなくなるこの制度については、98年の法改正の際に厳格な導入要件を盛り込み、歯止めをかけてきた。「法案要綱」は、この規制を取り払おうとするものであり、現行法では犯罪行為である不払いサービス残業を「合法化」させてしまう。過労死の温床とも言われる長時間労働、サービス残業を法の網から潜り抜けさせようとする企てであり、許せない。
- 以上より、全労連は、労働基準法を改悪する今回の「法案要綱」を、断じて認めるわけにはいかない。今後は国会審議の場で、同法案の廃案をめざし、院内外の取り組みを展開する。あわせて、この国の労働政策を、企業過保護から労働者保護へと転換させ、これ以上の雇用・生活破壊に歯止めをかけ、日本経済の再生をめざして、03春闘をたたかい抜く決意をここに表明するものである。
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