【談話】
職安法及び労働者派遣法に関する政省令改正案要綱の諮問・報告について
2003年12月3日
全国労働組合総連合
事務局長 坂内 三夫
- 「職業安定法および労働者派遣法の改正等にともなう政省令等の改正案要綱」を検討してきた労働政策審議会職業安定分科会は本日、政省令の改正案要綱の諮問に対し、報告をだした。その内容には、派遣導入にあたっての労働組合への意見聴取や書面による通知義務づけ、派遣労働者の雇用安定への努力、福利厚生の均衡配慮など、派遣元・先で厳格に遵守されるならば、派遣労働の環境改善につながる規定もある。しかし、「医療機関等における医療業務の紹介予定派遣の解禁」、「職業紹介手数料を徴収できる求職者範囲の見直し」、「職業紹介事業の許可基準の一部改正」をはじめとして、大きな問題を含んでいると指摘せざるをえない。
- 「医療機関等における医療業務の紹介予定派遣の解禁」は、国民に対する安全な医療提供体制を確保するという観点からみて、大いに疑問が残る。チーム医療による安全確保という従来のスタンスを、急転換した今回の判断は、患者、医療労働者の危惧・不安を払拭させるだけの十分な検証・審議を経ておらず、医療現場を混乱させかねない。2004年3月からの解禁を延期し、民需部会での慎重な討議継続を求めるものである。
- 「職業紹介手数料を徴収できる求職者範囲の見直し」については、現行1200万円以上の年収要件を700万円以上へと引き下げたが、この措置は国民の勤労権保障の観点からみて問題である。700万円という額は、企業と対等な交渉力をもつ労働者を担保する金額設定としては、あまりに低すぎる。そもそも、労働者からの紹介手数料の徴収は、誰もが公平に職業紹介サービスを享受できる権利を侵害し、企業利益優先で労働者保護をないがしろにするものであり、ILO181号条約第7条でも禁止されている。要綱の再度見直しを要求するものである。
- 「職業紹介事業の許可基準の一部改正」では、貸金業を営む者が職業紹介事業を兼業する際の許可基準として「適正に業務を運営していること」との文言をおいたが、これではあいまいすぎて、国会審議でだされた「借金のカタに強制労働がおきる」との危惧にこたえていない。貸金業と職業紹介事業との兼業は禁止すべきであり、許可条件の厳格化とともに個人情報の保護、債務者への職業紹介禁止などの制限を課すべきである。
- 改定職安法・労働者派遣法は、今回の政省令改定により、来年3月1日から施行されることになる。しかし、対象業務拡大と派遣期間の上限延長がなされた労働者派遣法そのものについても、(1)紹介予定派遣の期間を3カ月に限定すること、(2)派遣受入に関する労働組合への意見聴取については導入の必要性、職種、人数、労働条件等について労使協議事項とすべきこと、(3)雇用調整後の派遣受入れについて少なくとも1年間は禁止とすることなど、望むべきことは多い。引き続き、全労連は、制度改善を政府当局に求めるとともに、職場段階における対応として、派遣導入についての事前協議を協定化することや、派遣労働者の権利擁護と労働条件改善のための取り組みを強化するよう、各組織に呼びかけるものである。