【談話】
政府の04年税制「改正」大綱の発表にあたって
2003年12月19日
全国労働組合総連合
事務局長 坂内 三夫
政府は18日、04年税制「改正」大綱を発表した。
この「大綱」の現在焦点となっている年金制度にかかわってみれば、老年者控除の廃止と公的年金等控除の廃止などを盛り込み、65歳以上の夫婦世帯(夫の年金収入が250万円、妻の年金80万円)では、所得税が年間2.9万円の負担増になる。さらに税制上の所得税が増えるため、住民税、国民健康保険料、夫の介護保険料、妻の介護保険料とそれぞれ増加となり、総額9.6万円の増額となる。その上「大綱」は、「07年度から消費税を含めた抜本的税制改革を実現する」と明記した。
さらに、年金物価スライドによる年金給付の減額幅について、03年分のマイナス0.2%〜0.4%の適用によって、厚生年金モデル世帯では年間6千円から1万1千円の減額となる。法律で約束されていた「年金制度の国庫負担の2分の1への増額」についてはその大半を09年度まで先送りし、来年度からの財源の一部は、年金受給者に対する増税で充てるとしている。また、「所得税定率減税」の縮小・廃止で生じる額を05年・06年度分の基礎年金国庫負担財源に充てることを決めた。
「大綱」は、高齢者に痛みを押し付ける一方で、大銀行・大企業には、連結納税制度の連結付加税の廃止を求め、大企業グループが減税の恩恵を受ける仕組みが盛り込んだ。さらに、不良債権処理の赤字を操作する繰越控除の適用期間を5年から7年に延長し、対象を01年にさかのぼって認める税制上の優遇措置を示した。このように国民にいっそうの増税を押し付けるこの「大綱」は、不況のもとで空前の利益を上げる大企業に減税をもたらす逆立ちした税制「改正」である。本来の税制は、所得や資産に応じて課税し、生計費非課税の原則であるべきである。今回の「大綱」は、この原則に真っ向から逆行するものといえる。 特に、将来増加が予想される社会保障関係費の財源として、公然と消費税の増税を打ち出したことは、財界の要望を受け入れ、社会保険料の使用者負担の回避をねらったものといえる。このような消費税の増税は、社会保障の拡充と消費税の増税を天秤にかけ、二者選択を常に国民に迫るものとなる。このような消費税の増税は、21世紀の税のあり方を根本的に変える大問題である。
全労連は、04年の年金改悪を許さず、消費税などの大増税に反対する運動を推進するとともに、政府に直接税中心、総合・累進課税の税制を確立することを強く求める。