【談話】

育児・介護休業法の一部改正法案要綱について

2004年1月21日
全国労働組合総連合
事務局長 坂内 三夫


  1.  少子・高齢化が大きな問題になり、子育てや仕事と家庭生活の両立支援が求められている下で、育児・介護休業法の一部改正法案要綱の諮問、答申が行なわれた。有期雇用労働者への一定条件での適用拡大、年5日の子どもの看護休暇、保育所入所ができない場合に6ヶ月を限度とする育児休業の延長、介護休業の要介護状態ごとに1回、通算3ヶ月の取得等の改正が打ち出されているが、短時間勤務制度の請求権化等は見送られた。これらの改正案は、内容は不十分であるが、私たちの要求を一定反映したものであり、一歩前進といえる。

  2.  全労連は、有期雇用契約や派遣労働契約の延長について、不安定雇用を拡大するものとして反対したが、これが強行された下で、これらの労働者に対する育児・介護休業の適用を求めてきた。しかし、法案要綱の条件で有期契約の労働者が実際に育児・介護休業を取得することは困難である。現在も、妊娠・出産による法律違反の雇い止めが横行しており、雇用継続を考えて、これらの労働者の妊娠中絶が増えているという報告がされている。本来、有期雇用契約や派遣労働はあくまでも一時的、臨時的なものであり、有期や派遣労働は厳しく制限をし、1年をこえるものについては原則として常用雇用にする法規制や、パートタイム労働者は労働時間が短いだけであり、有期雇用とすべきでないことを徹底することが必要である。

  3.  全労連は、法改正にあたり、特に次の点を要求する。●雇用契約を繰り返し定めのない雇用とみなされる労働者は育児・介護休業の適用対象となることを法律や政省令に明記すること。また、1年以上の雇用期間が経過した後は、残余の雇用契約期間(更新を含む)について対象とすること。●育児休業の期間は、当面、保育所入所ができない等の事情がある場合についても1年以内の延長ができるようにし、子が3歳に達するまでに延長すること。また、複数回の取得ができるようにすること。特に、1年をこえて延長する場合は少なくとも再取得の対象とすべきである。●介護休業取得は、「継続して介護を要する状態ごとに1回、1回につき3ヶ月」とし、さらに期間を1年まで延長すること、取得予定日の数日前の請求を認めること。●育児・介護休業取得の際の代替要員の配置、原職復帰、所得保障の原則を明記すること。●子どもの看護休暇は有給で年10日以上とし、短期の病気の家族介護、検診、予防注射、保育園・学校行事参加等、家族的責任を果たすための休暇に拡充すること。●小学校就学前の子及び要介護の家族をもつ労働者の請求により労働時間短縮ができるようにすること。●家族的責任を有する労働者の転勤等には、本人同意を得ることを明記すること。●「不利益取り扱い禁止」規定を実効あるものとし、男性の育児休業取得を推進すること。

  4.  「男女共同参画社会の実現は21世紀の我が国社会を決定する最重要課題」とされているが、ジェンダーエンパワーメント指数は、世界70カ国中44位とさらに下がり、リストラ「合理化」による人員減、長時間・過密労働、公的な保育や福祉の後退のもとで、今日なお、多くの女性が、仕事と家庭生活を両立する上でさまざまな困難を抱えている。
     全労連は、次期通常国会での育児・介護休業法の実効性のある改正とあわせて、すべての労働者に対する労働時間の法的な上限規制を設けることや有期雇用契約を厳しく制限し、期間の定めのない雇用を原則とすること、保育・福祉の公的拡充、「昇進・昇給をあきらめなければ、育児・介護休業をとれない」等の職場環境の改善など、子育てや職業生活と家庭生活の両立支援をさらに強化するとりくみを強化する。