【談話】

「弁護士報酬の敗訴者負担」に反対する

〜民事訴訟費用法改正案の閣議決定にあたって〜

2004年3月2日
全国労働組合総連合
事務局長 坂内 三夫


 政府は昨日、「民事訴訟費用法改正案」を閣議決定し、国会に提出した。この法案は全労連をはじめ広範な市民団体、法曹界も反対している「弁護士報酬の敗訴者負担制度」の導入に道をひらくものである。

 当初、司法制度改革推進本部・司法アクセス検討会は、敗訴者負担(裁判で負けた側が勝った側の代理人の訴訟費用を負担する制度)を原則とする制度の導入を議論したが、全労連をはじめとする広範な労働組合、消費者団体、市民団体、裁判の原告や日弁連の反対運動によって、原則導入は断念した。しかし、今法案では各自負担を原則とした上で「合意による敗訴者負担」制度の導入が図られようとしている。

 「合意による敗訴者負担」は、裁判内での「合意」を前提とする制度となっているが、全労連はその危険性を指摘せざるをえない。なぜなら法案が前提とする「合意による制約」、「合意の方式」は裁判内の合意であり、裁判外の合意については関知していないからである。たとえば労働契約や就業規則に、将来の裁判での費用負担を敗訴者負担とする、などという条項が入った場合、勝訴した側が契約条項に基づいて裁判費用を請求することができる。労働契約に対して使用者と対等に交渉することは、特に未組織の労働者にとっては不可能であり、内容に不満だからといって締結を拒否する自由は事実上ない。強者によって労働契約や就業規則、あるいは約款などに事前合意が書き込まれれば、労働者や市民が敗訴者負担を強制されることになり、労働者・国民が裁判所から締め出されることになる。

 「合意」による敗訴者負担は、増加する労働相談、個別労使紛争の解決に資するものにはならない。敗訴者負担反対の声は、110万筆を超えた反対署名、5000件を超えて司法制度改革推進本部に寄せられたパブリックコメントにも明確に示されている。司法アクセスを阻害し、労働者・国民を裁判から遠ざける敗訴者負担を導入しないためにも、今法案はきっぱりと廃案にするべきである。

 全労連は、法曹界をはじめ広範な市民団体とも協力して、国会内外でのたたかいをつよめ、廃案を目指し奮闘する。