【談話】

労働者と革新政党に対する不当弾圧に断固、抗議する

2004年3月5日
全国労働組合総連合
事務局長 坂内 三夫


  1. 今月3日、警視庁公安部は、前回衆院選で政党機関紙(日本共産党「しんぶん赤旗」号外)などを配布した行為が国家公務員法(政治的行為の制限)違反であるとして、厚生労働省・社会保険庁の目黒社会保険事務所に勤務する労働者を不当逮捕したが、本日(3月5日)、東京地検公安部は、この労働者を釈放するとともに、国家公務員法違反の容疑で在宅起訴した。
     全労連は、今回の不当逮捕に対し、警視庁と所轄の月島警察署に厳重に抗議したところであるが、本日の東京地検公安部による起訴に対し、改めて満身の怒りを込めて抗議の意思を表明するものである。

  2. 今回の逮捕・起訴は、労働者・労働組合と革新政党が行う正当な政治活動に対する許しがたい不当弾圧であり、昨年11月の行為に4カ月後の今になって逮捕・起訴するということは、当初から弾圧を行う意図を持って実行されたことであることは、明らかである。
     事前に計画的に「証拠」収集し、政党事務所などに対し大規模な捜査体制でパソコン等を押収した上、逮捕から一日置いただけでスピード起訴するという政治的弾圧のシナリオを予め描いていたことは明白であり、憲法で保障された国民の言論・表現の自由(第21条)、思想信条の自由を真っ向から踏みにじるものである。逮捕即起訴ということは、本人や弁護士の十分な意見聴取も無視し、任意捜査の原則を踏みにじる、権力濫用の暴挙でもある。
     選挙と無関係の公安部が乗り出してきたことからも、国家公務員をはじめとした労働者と革新政党にたいする捜査権の濫用であり見せしめ的な不当弾圧である。

  3. 公務員労働者の政治活動について言えば、ILOが労働基本権保障について、全労連などの提訴を踏まえて、02年11月結社の自由委員会「中間報告・勧告」、03年6月理事会による「再勧告」を日本政府に対して行なっている。そこでは、「87号及び98号条約に具体的に示されている結社の自由原則に合致した公務員制度改革および法改正に関して速やかに合意に達する」よう政府に求め、団体交渉権および団体協約締結権の保障と、それらが制約される労働者に対して完全なる結社の自由原則に合致する代償措置の確立、ストライキにかかわる民事上、刑事上の制約の廃止などを求めている。
     国公労働者に対する政治的行為の制限(国公法102条)は、争議権の剥奪、団体交渉権の制限とあわせて行われたという歴史的事実から見ても、いまこそ、国際社会の常識に沿った政治活動と労働基本権の回復が求められていたものである。今回の弾圧は、このような法整備が求められている中で実行されたものとしても、その政治的意図は浮き彫りになってくる。

  4. 政治活動の自由は、すべての国民に保障された憲法上の権利として「表現の自由」(21条)の中核をなすものであり、公務員ももちろんその例外でありえない。全労連は、国際ルールとなっているILO勧告にそった労働基本権回復、公務員の市民的・政治的自由の確立を求めて全力でたたかうとともに、こうした政治的弾圧を許さず、憲法に保障された国民の民主的権利を擁護するため、断固としてたたかいぬくものである。
     さらに、国民の多数が憲法違反の自衛隊イラク派兵に反対し「戦争する国」への危惧を表明する中で、政府・国家権力による労働運動や民主運動に対する弾圧を許さず、思想信条、言論の自由擁護、戦争反対、平和と民主主義を守るために全力を挙げてたたかう決意を表明するものである。