【談話】
05年度政府予算案について
2004年12月24日
全国労働組合総連合
事務局長 坂内 三夫
政府は24日の閣議で2005年度予算案を決定した。一般会計総額は82兆1,829億円で、04年度当初予算に比べ0.1%増、他方で一般歳出は47兆2,829億円を計上し、0.7%減の緊縮型財政としている。
歳入のうち税収は44兆70億円で4年ぶりの増収となり、それにあわせて新規国債の発行を減らしている。財政健全化に向けての措置とされるが、財源は、企業業績の回復とあわせ、3.3兆円に達する定率減税の半減や社会保険料負担の引上げなどである。3年間で段階的に廃止するとした「住民税の低所得高齢者の非課税措置の廃止」も、介護保険料に連動するものであり、その影響は深刻である。国立大学授業料の引き上げ、住宅ローン減税の縮小、特養老人ホームなどの食住費の大幅引き上げ、生活保護費の引き下げなど、「老いも若きも負担増」(12/21「朝日」)の予算となっている。すでに決っている年金保険料の引き上げ、配偶者特別控除の廃止、年金課税強化、雇用保険料の引き上げなどの負担増と合わせれば、国民の負担増は巨額にのぼる。景気の先行きに不透明感がでている今日の情勢下、こうした中低所得者に痛みをおしつける施策は、消費購買力を冷え込ませ再び不況への道を開くことになりかねず、きわめて危険である。定率減税と同時期に実施した法人税減税や、累進課税のフラット化による金持ち減税の見直しには手をつけず、庶民いじめの公課負担増を推し進める姿勢に、強く抗議する。
支出では、公共事業費は04年度比3.6%減と4年連続で減少したが、整備新幹線の三区間着工や関西空港二期事業を認めている。無駄の象徴と指摘される関西空港2期工事費、三大都市圏の環状道路、大規模港湾の重点整備、整備新幹線の新規着工、諫早湾干拓事業など大規模公共事業を推進するものとなっている。軍事費ではアメリカの先制攻撃戦略に連動するミサイル防衛や海外遠征型装備、在日米軍再編関連、2,378億円の「思いやり予算」などを計上している。社会保障関係費は20兆3786億円と2.9%増えているが、これは高齢化の反映であり、実態は今年度以上に「自然増」を圧縮している。また、雇用対策の予算として、若年雇用対策費が増額される一方、この間、雇用の緊急避難策として実効をあげてきた緊急地域雇用創出特別交付金に代替する施策が盛り込まれていない点も、大きな問題である。中小企業対策費もさらに削減されており、労働者や中小零細業者など国民の多数に冷たい予算編成と言わざるを得ない。
国と地方の税財政を見直す「三位一体改革」では、05年度分として国から地方自治体への補助金を1兆4,250億円削り、1兆1,160億円を税源移譲する。しかし、補助金を削るのは義務教育費国庫負担(4,250億円)や国民健康保険の国庫負担(5,449億円)など、国が責任をもって実施すべきものが中心となっている。地方自治の名の下に、国民生活の最低保障にかかわる予算が崩されかねないことを懸念する。
全労連は、無駄な公共事業と軍事費の大幅な削減を要求するとともに、大企業が史上最高の収益を上げ、また高所得者が所得を伸ばし所得格差が広がるもとで、大企業課税と所得税の累進課税の強化を行うことを求めるものである。当初「恒久減税」と銘打って実施した定率減税は堅持し、社会保障、教育、くらし関連にこそ予算を充当させるべきと考える。労働者・国民の暮らしと平和を守るための政治が行なわれるよう、年明け1月21日からはじまる国会の動向を注視し、全労連として諸行動の取り組みを強めるものである。