【談話】

中央最低賃金審議会の最賃改定目安答申について

2004年7月26日
全国労働組合総連合
事務局長 坂内 三夫


  1. 中央最低賃金審議会は本日、厚生労働大臣に対し、2004年度の地域別最低賃金の改定について「現行水準の維持を基本として引上げ額の目安は示さないことが適当」という答申をおこなった。今回の答申は「最賃凍結宣言」ともいえる昨年の「0円」明示に比べれば一歩前進とはいえ、低すぎる現行の最賃水準をなんとしても引き上げよ、という全労働者の要求を軽んじ、賃金の最低規制を低位のまま置き去りにするものであり、全労連として強く抗議せざるをえない。

  2. 公益委員見解でも「わが国の景気が回復基調にあることを踏まえ」とあるとおり、企業経営や業況に関する指標は上向いている。にもかかわらず、今回の審議でも、使用者側委員は強硬に目安の引き下げを主張した。景気回復の安定感のなさ、物価の下落、非製造業の業況の厳しさ、中小の賃金妥結率が横ばいであること、さらに賃金改定状況調査の「一般労働者及びパートタイム労働者の賃金上昇率」がマイナスであったことなどを、引き下げ主張の根拠としている。
     しかし、現行最賃は、中小零細の地場の賃金実勢からみてもはるかに低い。使用者側委員は支払能力論をふりかざすものの、最賃の引き上げが賃金コストにどの程度影響するのかについては、いっさい根拠を示していない。現実には中小零細でも、最賃よりはるかに高い賃金を支払い、労働者の定着と熟練度の向上をはかっているところは数多くある。低賃金労働の活用で賃金相場を崩し、景気回復の脚をひっぱる一部の使用者を利するのではなく、最低賃金を引き上げ、働けば生活ができる賃金を保障し、「労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び公正な競争の確保に資する」(最低賃金法第1条)ことが、使用者の観点からしても重要なのではないか。

  3. 今回の公益委員見解は、使用者側の言い分に過分な配慮をしたものであり、引き上げの答申を示さなかった点で不当といわざるをえない。しかし、(1)「現行水準の維持を基本」とすることで地方での最賃審議における使用者の引き下げ要求を封じていること、(2)「わが国の景気が回復基調にあることを踏まえ、地域の経済実態を考慮しつつ、自主性を十分に発揮されることを希望する」とし、地方での引き上げを促す方向を示していることは、地方での審議に追い風となる。

  4. 全労連は、今回の答申にむけ、本日の行動を含めて5次にわたる「最賃デー」を設定し、全国各地で最賃生活体験運動をひろげ、最賃時間額1,000円以上、制度抜本改革の宣伝、団体署名、行政機関との交渉、経営者団体・労働団体との懇談などを展開してきた。それらの行動をとおし、最賃については「引き上げ幅をどうするか」が、目安小委員会での議論の前提に据えられるべきと主張してきた。
     今後、審議の舞台は地方最低賃金審議会に移される。各地方最賃審議会においては、明確なプラスの目安答申を出せず、引き上げを促す程度となった中央最賃審議会の限界を突破し、地域別最低賃金の引き上げを実現する真摯な討論が求められている。全労連は各地方組織とともに全力で運動を強め、最賃引き上げと制度の抜本改革を勝ち取る決意を表明するものである。