【談話】
共謀罪の新設に反対する
2005年2月7日
全国労働組合総連合
事務局長 坂内 三夫
- 政府は、「国連国際(越境)組織犯罪防止条約」の批准のために国内法整備が必要であるとの理由で、2003年の通常国会から衆議院解散に伴う廃案をはさんで4国会にわたって刑法・刑事訴訟法・組織的犯罪処罰法等の「改正案」を継続審議としてきたが、今国会において、この法案についての成立を図ろうとしており、事態が急迫している。全労連は、これらの法律「改正」による共謀罪の新設に断固反対するものである。
- 共謀罪は、国際的犯罪に限定されておらず、死刑または無期懲役か4年以上の懲役、禁固の刑が定められている557にものぼる犯罪行為を「共謀」しただけで犯罪として、最高で5年の刑が科されるというものである。近代刑法では、犯罪意思だけでは処罰せず、これが具体的な結果・損害として現れて初めて処罰対象となるという「既遂処罰」が原則とされている。にもかかわらず、実行行為ではない「予備」以前の「合意」だけで処罰するというのは限りなく思想処罰に近づくものといわざるを得ない。
共謀罪が新設されるなら、団体活動としての労働組合活動や争議行動が犯罪とされ、憲法で保障されている労働者の団結権、交渉権、争議権が不当に侵害される恐れがある。法律案は、「団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀」することのみを構成要件と定め、労働組合等を含む全ての団体を対象にその活動について、共謀罪として処罰される。
法律案は長期4年以上の自由刑にあたる罪について共謀罪を新設しようとするものであり、現行法上500を超える犯罪が該当し、このような立法が「国際的な組織犯罪」の防止に資するとは到底考えられない。
- 共謀罪は、労働組合・争議団活動の弾圧に用いられる危険性が極めて高い。労働組合活動は、労働者の労働条件の向上を目的とし、憲法上保障された労働基本権(団結権、団体交渉権、争議権)を行使することで、その実現を目指すものであるが、労働組合やその活動を嫌悪する使用者が、労働組合もしくは組合員の組合活動を「犯罪」として告訴・告発し、警察権力が使用者と一体となって組合員を逮捕・勾留するなど、刑法を利用して組合活動を妨害する例は現在でも行われている。
今後、もし共謀罪が新設されれば、たとえ「犯罪」行為が行われていなくても、「犯罪」行為の実行について何らかのかたちで相談しただけで、逮捕・勾留・起訴等の対象とされる危険がある。しかも、共謀についての捜査の必要を名目に、盗聴、盗撮、スパイ潜入、虚偽自白強要のための事情聴取などの形で、組合活動の全般が警察の監視下に置かれることになる。
労働基本権を保障した憲法は空文と化し、労働組合活動が圧殺されることは火を見るより明らかであり、全労連は、共謀罪の新設に断固として反対するものである。