【談話】
2005年人事院勧告にあたって
2005年8月15日
全国労働組合総連合
坂内三夫事務局長談話
- 本日、人事院は内閣と国会に対し、国家公務員一般職の給与改定と給与構造見直しに関する勧告を行なった。給与改定については公務・民間の賃金逆較差が「0.36%、1,389円」あるとし、配偶者扶養手当の500円減額に加え、月例給を4月に遡及して0.3%引き下げるとしている。「給与構造の見直し」については、俸給水準を4.8%引き下げ、30代半ば以上の号俸を最大7%引き下げる「給与カーブのフラット化」や「勤務成績・実績」評価を賃金に直結させ給与格差を拡大する制度、最大18%もの地域間格差を持ち込む「地域手当」制度を導入しようとしている。
- 今年は春闘における賃上げにおいても、地域別最低賃金の目安ならびに改正決定についても、4年ぶりに「引き上げ」となった。民間賃金が改善傾向にある中で、「マイナス勧告」を出すことは、社会の流れに逆行する。しかも、4月にさかのぼっての賃下げは、最高裁判例として確立した「不利益不遡及」の原則を破る重大な権利侵害であり、その違法性をめぐる裁判が争われているさなかに、不利益遡及をくり返すことはきわめて不当な行為であるといわねばならない。公務労働者ならびに人事院勧告準拠労働者の生活水準切下げを強制し、民間労働者の賃下げにつながりかねない今回の「勧告」に対し、全労連は断固抗議するものである。
- 「給与構造の見直し」による地域間・個人間の給与格差拡大の制度は、現行の国家公務員法における給与の決定基準(「職務とその責任の度合い」による決定)とは相容れない。そのことについての合理的説明もなく、労使合意も得ずして、多数の労働者の労働条件不利益変更につながる制度の抜本改定を強行することは許されることではない。しかも成績・実績主義の給与制度については、民間企業におけるここ数年の実践を通して多くの弊害が明らかとなっている。労働者が長期的・挑戦的な目標を立てず、無難な短期目標しか考えなくなる、同僚間の協力・連帯がなくなる、人事考課を非効率化し、管理職に多大な負荷をかけ、管理職と部下との意思疎通を阻害する、メンタルヘルスを悪化させる等である。人事院は、これら民間職場でおきている問題を十分認識し、制度の性急な導入は断念すべきである。
- そもそも人事院は公務員労働者の労働基本権の代償機関であり、対政府との関係では労働者・労働組合の「代理人」としての役割を負うべき組織である。にもかかわらず、実態は、今回の勧告のように公務員労働者の要求や意見に背を向け、政府・財界の意を受けて、総額人件費削減・成果主義を強調する「経済財政諮問会議」の動きを先取りする役割を果たしている。「本来の役割」を放棄している現在の人事院の姿勢に対し、根本的な反省と立場の見直しを求めるものである。
- この夏、全労連は公務労組連絡会、国民春闘共闘と共同し、人事院勧告、「骨太方針」、最低賃金改定、郵政民営化阻止の課題を結合して全国で運動を展開した。中央では人事院、内閣府、総務省、厚労省への要求行動に旺盛に取り組み、全労連民間部会の人事院要請も含め、公務・民間は足並みをそろえて、3次にわたる中央行動を成功させてきた。「賃下げ・給与構造見直し勧告」は強行されたが、「人勧・最賃」一体の運動は、地域別最低賃金の改善を勝ち取り、郵政民営化については国会終盤で悪法強行を食い止めた。
公務員賃金は広範な民間労働者の賃金決定にも波及力を持っており、今回の勧告は地場賃金の更なる引き下げや、地域格差のいっそうの拡大につながりかねない。全労連は、今春闘の成果に確信をもち、公務・民間一体となって、今年度勧告の実施と地方自治体での賃金削減を許さず、労働者の要求を前進させるためにともにたたかう決意である
以 上