【談話】

厚生労働省「今後の労働時間制度に関する研究会報告」について

2006年1月25日
全国労働組合総連合
事務局長 坂内 三夫


 1.本日1月25日、厚生労働省労働基準局長の諮問機関である「今後の労働時間制度に関する研究会」(座長・諏訪康雄法政大教授)が報告書をまとめた。その内容には労働者保護・権利取得を促進する面が含まれている一方、労働時間規制の適用除外となる労働者を拡大する提案も含まれている。そもそも研究会が発足した背景には、「米国のホワイトカラー・エグゼンプション制度を参考にしつつ、労働時間規制の適用を除外することを検討せよ」との財界の意向を鵜呑みにした「規制改革・民間開放推進3ヵ年計画」ならびにそれを追認した閣議決定がある。研究会が検討の末、「米国のホワイトカラー・エグゼンプションをそのまま導入することは適当でない」と結論づけたことは是とするものの、他方で労働時間規制の適用除外を行う「新裁量労働制」を提起したことについては容認できない。

 2.同報告書は「自律的に働き、かつ、労働時間の長短ではなく、成果や能力などにより評価されることがふさわしい労働者」が増えており、労働時間規制の適用除外とする「新裁量労働制」を導入すべきとしている。制度を適用する要件としては(1)職務遂行の手法や労働時間配分について使用者から具体的指示をうけないこと、(2)労働時間の長短でなく成果や能力に応じて賃金が決定されていること、(3)一定水準以上の収入確保、(4)本人同意、(5)健康確保、(6)労使協議に基づく合意などをあげているが、制度の対象として示されている「中堅の幹部候補者で管理監督者の事前に位置する者」や「設計部門のプロジェクトチームのリーダー」といった労働者層が、はたして職務遂行方法や時間管理について自己裁量で決定できるような立場にたてるものか、大いに疑問がある。また、本人同意要件についても、職場における労使対等の確立がままならない中で、使用者から意に反した「新裁量労働制」を強要された場合、個別労働者がどこまで抗しきれるか疑問がある。全労連は、労働基準法の労働時間規制の対象外となる労働者を不当に拡大し、労働時間規制制度の枠組みを歪める「新裁量労働制」には反対である。同時に、現行労基法の「管理監督職」の扱いについて、肩書だけの偽装「管理職」が時間管理の適用除外となり、本来支払われるべき時間外割増賃金を支払われていない事態について、厚生労働省は速やかに適正な対応をとることを要求するものである。

 3.報告書は、「長時間にわたる恒常的な所定外労働の削減や賃金不払い残業の解消」、平均取得率が5割に満たない「年次有給休暇の取得促進」といった課題に対処するため、企業に対して計画的な連続休暇取得をさせることを義務付けること、36協定の「限度基準」を超える残業に対して通常より高い残業代割増とすること、残業支払いに加えて代償休日を付与すること、罰則強化などを提案している。これらの措置は改善策と考えるが、「労働時間分布の長短二極化」が進む中、健康被害や過労死の頻発、家庭における親の不在といった問題が深刻化している状況を考えれば、より厳格な法規制と実効確保のための監督行政の強化が提起されるべきである。

 いうまでもなく、労働時間の適正管理は法や行政の力だけでなく、職場の労働者・労働組合による規制が重要である。06春闘をとおし、全国の労働組合が、職場から長時間過密労働と不払い残業、不当な裁量労働などを一掃し、休暇制度の改善や年次有給休暇の取得促進にむけ、前進を勝ち取ることを要請するものである。

以 上