【談話】

「被用者年金制度の一元化等に関する基本方針」の閣議決定について

2006年4月28日
                                全国労働組合総連合
                                事務局長 坂内三夫


一、政府は本日、「被用者年金制度の一元化等に関する基本方針」(以下「基本方針」)を閣議決定した。

 被用者年金の一元化は労働者のみならずすべての国民にも関わる重要課題であり、年金制度改革について全労連は、喫緊の課題である年金空洞化や無年金者・低年金者の問題、女性の年金問題などを解決する全額国庫負担による最低保障年金制度と社会保険方式による年金制度を上乗せした二階建ての年金制度の構築を提言し、こうした年金制度改革こそがまず必要であること、被用者年金の一元化は、こうした年金制度改革の一環として十分な検討を行い関係者の合意を得て進めることを求めてきた。

 ところが、今回の「基本方針」の検討は昨年9月に小泉首相の指示で一気に政治課題として浮上し、政府・与党によるきわめて短期間の検討によって政治的に「基本方針」がまとめられ閣議決定されたもので、公的年金に対する国民の不信や不安の根底にある年金空洞化問題などはまったく検討されていないし、共済年金制度の公務員制度との関連をめぐる検討もほとんどされていないと言われているように、関係者・団体との話し合いや合意にもとづく被用者年金の一元化ではなく全労連は到底容認できない。

一、「基本方針」は、(1)保険料を2010年から毎年0.354%引き上げ18年(私学共済は27年)に厚生年金の保険料率(18.3%)に揃える、(2)職域部分は2010年に廃止し、新たに公務員制度としての仕組みを設ける、(3)追加費用を減額するため恩給期間に係る給付を最大10%削減(給付額が250万円を下回らないこととする)、(4)積立金の基礎年金、報酬比例部分に充てる分の共通財源化、(5)制度的な差異は転給制度の廃止など厚生年金に揃える、などとしている。

 この内容は、共済年金に対する国の負担を削減することを最優先に、公務労働者に一方的に給付削減と負担増を強いるものである。既裁定者の年金切り下げは生活権・財産権の侵害であり許されない。

一、こうした「基本方針」の閣議決定に至る経過と内容をみると、「小さな政府」を掲げ社会保障改革と「総人件費削減」など行政「改革」推進を重点課題とする小泉首相が、この間の小泉構造改革による相次ぐ社会保障・福祉の改悪、リストラ、賃金・雇用破壊などによって社会的格差・不平等が拡大し社会問題となっていることを逆用し政治的に被用者年金一元化をとりあげたものとわれわれは指摘せざるをえない。

 全労連は、労働者・国民の共通要求になっている最低保障年金制度の確立、被用者年金の一元化については公務員制度との関係を含め関係者と十分協議し合意を得て進めることを改めて要求し全力たたかうものである。

以上