労働委員会制度は、日本国憲法の公布前に創設され、戦後の五大改革(婦人の解放、労働組合の助長、教育の自由化・民主化、秘密弾圧機構の廃止、経済機構の民主化)をはじめ、民主主義を確立する重要な機関として、特別に位置づけられてきたものです。労働者委員の労働組合推薦制と公益委員任命に際しての労使委員同意制は、他の行政機関や行政委員会に類例を見ないもので、こうした委員任命手続きこそが民主主義的性格の核心といえるものです。長引く不況とリストラ「合理化」のもとで、職場における労働者の権利侵害と民主主義の抑圧が進行している今日、政府・労働省が労働者委員の「公平・公正」な任命を行うことが、つよく求められています。それが、労働委員会制度を機能させ、不当労働行為から労働者の権利を守る道です。
ところが一九九〇年代、歴代の内閣総理大臣は、二年ごとに任命する中労委の労働者委員任命で、特定系列の労働組合が推せんする者だけにポストを独占させるという偏向任命に終始してきました。それは、労働省自身が一九四九年に発した「第五四号通牒(通達)」に照らしても不公正な「偏向行政」そのものです。内閣総理大臣のこのような「偏向任命」は、全国の都道府県知事による地労委労働者委員の任命にも影響を与え、全国二七六名の労働者委員は七名(東京三、大阪一、和歌山一、高知一、沖縄一)を除いて、「連合」独占におちいっています。
「偏向任命」の取り消しを司法の場に求めた「中労委労働者委員任命取消訴訟」の東京地裁判決は、「当・不当」の問題で言えば「不当」とのまともな判断を示しましたが、他方で「裁量権の範囲」で違法の問題を生じることはないとする不当判決を下しています。この判決を不服とした東京高裁の控訴審は、行政側の証人も採用せず実質審理ぬきで六月二五日に結審し、九月二九日には判決が言い渡される状況になっています。
全労連は、労働基本権を擁護し、民主主義を求める広範な団体・個人との共同を広げ、全国的に運動を強化し、行政による「偏向任命」の克服へ大きな世論を形成してきました。今年一〇月に行われる中労委労働者委員の任命では、磯崎労働者委員の誕生に向けて、純中立懇・MICの仲間と力を合わせて全力をあげるものです。
右、決議する。
一九九八年七月三〇日
全国労働組合総連合第一七回定期大会