第2号議案
200万全労連の実現で21世紀へ飛躍を
組織拡大・強化「第3次3ヵ年計画」(案)
はじめに
(1)今年は、全労連結成10年の節目と21世紀への展望をきりひらく特別に意義をもつ年である。日本の政治・経済においても、長年のアメリカ追随、大企業本位の自民党政治の破綻が誰の目にも明らかになってきている。こうした情勢のもとで、全労連が広範な労働者・国民諸階層の期待にこたえるためには、「一致する要求」で、すべての労働者との対話と共同を積極的にすすめるとともに、その主体的力量の確立が決定的に重要である。「200万全労連」建設は、その最大の保障として早期に実現しなければならない課題である。
(2)この「第3次3カ年計画」は、その展望を切り開くための重要な方針であり、それだけに全労連構成組織全体の合意が必須の条件となっている。第22回評議員会(99年1月)では(案)として確認し、各構成組織にその具体化を含めた積極的な討議を呼びかけてきた。その後の拡大運動の実践と情勢の変化などを踏まえ、一部補強と修正を加え、今第18回定期大会において方針として決定する。
T.全労連結成と組織拡大の到達点
1.まともな労働運動を推進するナショナルセンターの基盤を築く
(1)全労連は1989年11月、-32409希望に輝く未来のために-32408をスローガンに結成され、当時の組織は27産別・12地方組織・100地域組織、組織人員は134万人であった。以来、9年を経過した組織勢力(98年5月末)は、23産別(統合あり)・47地方組織・467地域組織の153万人(単産112万5千人・地方30万5千人・地域10万人)に到達した。結成から3年を経た93年1月を起点に2次にわたる「3ヵ年計画」を策定、目標を「200万全労連」「600地域組織」(第1次)、「800地域組織」(第2次)として組織拡大をとりくんできた。わが国の組織率と労働組合員数そのものの減少が続くなかで、結成から9年間で19万人の増勢は、私たち運動の一定の成果といえる。(2)「第2次3ヵ年計画」(96年1月〜98年12月)にもとづく、この3ヵ年の組織拡大は、144万人から153万人へ9万人増である。地方組織は、静岡県評のオブ加盟から正式加盟、岡山県労会議の加盟をもって47都道府県すべてで確立された。地域組織は467組織(準備会34地域含む)となり、県都での空白を長崎、宇都宮で解消した。こうした地方・地域組織の確立が、リストラ「合理化」に脅かされる地域労働者から頼りになる存在となり、医療・福祉・教育などの国民的課題とともに、地域経済の活性化にとりくむ姿が「目に見え・音に聞こえる」存在に発展している。いまや地方・地域組織の確立と運動の前進は、日本列島で全労連運動の展開を可能にする基盤となっている。
(3)結成以来の全労連の運動と組織の一定の前進は、日本労働運動に「反共・労資協調のナショナルセンターしかない」という状況を許さず、労働者の切実な要求を大切にする「まともな労働運動」を推進するナショナルセンターの基盤を築いたといえる。結成時前後の「冷戦終結」論による「階級対立の時代は終わった」などのイデオロギー攻撃をのりこえ、一貫した政府・財界の「全労連外し」とたたかってつくりだしたこの到達点は、単産・地方、地域組織と組合員の「全労連を大きく」の思いと奮闘によるものである。
(4)同時に、産業別組織と地方組織で構成するとした組織特性の発揮である。全労連の全国統一行動と地域での共同行動を効果的なものにし、現実に、地方、地域組織への40万5千人の中立・単独組織の結集を見るとき、その優位性は明らかである。労働省は、次回「労働組合基礎調査」(99年6月末時点)から地方組織加盟組合員数を含めた集計方法に改めることを示唆した。実行されれば全労連の社会的影響力はいっそう増すことになる。
(5)しかし、「200万全労連」の目標は未達成であり、5,390万雇用労働者のうち全労連の組織率は僅かに2.8%で、1,209万組織労働者の中でも12.4%である。雇用、賃金破壊など労働者状態の悪化を打開する展望や政治革新の流れと結んで悪政阻止の国民的共同への貢献からみても153万人の到達では不十分である。労働組合の力は「たたかう団結した数」であり、労働者の切実な要求を大切にする「まともな労働運動」を大きな流れにしていくうえで、「200万全労連」の早期実現はひきつづく至上課題である。
2.この間の組織拡大運動は飛躍の土台となっている
(1)この3年間における単産の実増員は4千人だが、実際に拡大した組合員数はその数倍にのぼる。定年退職などによる自然減は、たとえば自治労連では、毎年約8千人の組合員が退職・管理職へ移行するといわれている。くわえて、リストラ「合理化」、「行革」による新規採用の抑制、解雇・出向・転籍などで企業・行政職場での正規労働者が減らされ、製造業では92年の1,382万人をピークとして98年では1,248万人へ134万人の減となっている。組合結成→攻撃→解散のパターンなど、依然として「組合敵視」攻撃もつづいている。重要なことは、単産がこうしたことによる何万人もの失地を攻勢的なとりくみで回復し、組織の維持をかちとっていることである。これは、すべての単産が「もう一歩奮闘すれば」、組織維持から増勢への飛躍をつくりだせることを意味している。(2)地域組織に結集する中立・単独組合の組合員は、96年の31万9千人(地方28万7千人・地域3万2千人)から、98年の40万5千人(地方30万5千人・地域10万人)へ8万6千人の増となった。主たる増は建設関係組合の拡大と農協組合の結集であるが、地方・地域組織の「労働相談」などを通して未組織労働者の組織化も前進している。職場と労働者は地域に存在する。「200万全労連」の早期実現とナショナルセンターとして幅広い産業の組合結集を展望したとき、地域の中立・単独組合の結集、未組織労働者の組織化で果たす地方・地域組織の役割は大きく、それだけに、当面「600地域組織」確立の意義は大きいものがある。
3.パート・不安定雇用労働者の運動と組織化
パート・不安定雇用労働者の組織化では、「パート春闘」「月間」を構えながら権利確立のとりくみをすすめ、丸子警報器裁判闘争の前進、中央競馬会従事労の要求闘争、兵庫・千趣会のたたかい、自治体関連、生協職場での前進、大阪労連の「パート・非常勤部会」確立など派遣労働者もふくめて運動と組織化がはじまっている。98年12月の労働省の発表ではパート労働者総数を957万人とし、はじめて労働組合員を24万人とし、引き続き増加しているとしている。こうした現実のもとで、すべての単産が「職場のすべての労働者を組織する」という構えがいよいよ重要となっている。個別労働者の困難を解決する上で、地域の実状に促した「地域労組」の確立も各地方ではじまっている。
4.組合員参加の組織拡大運動を
組織拡大で「大きな流れ」をつくりだしていくうえで求められるのは、全組合員参加の拡大運動である。それは、職場に目線をあわせた日常活動の強化・活性化が土台になる。対話と共同、「10万人オルグ」運動をいっそう発展させると共に、単産が「どういう組織を作るか」の確たる目標と運動の計画を策定し、それを地方・地域組織含めて共有の認識にし、とりくみを合流させることである。いよいよ本格的に組織拡大オルグの配置を追求し、専従・非専従を問わず「登録」「オルグ学校」などに着手することが必要である。地方・地域組織の確立と運動の前進にむけて、単産のいっそうの結集も依然とした課題である。
U.組織拡大の可能性はかつてなく広がっている
1.いま、労働者は労働組合をもとめている
「完全失業率ついに5%台へ」「20人に1人が失業者」、政府・労働省が発表した4月の完全失業者数である。この間実施した労働相談・「ホットライン」は、全国どこでも相談が殺到、相談内容も「解雇・退職」問題が急増していると報告されている。また、昨年6月から今年5月末までの1年間に結成した単位労働組合は378組合となり、結成理由で「賃金・労働条件・権利」問題が67.8%(複数回答)、「解雇・倒産」問題が31.5%に上っている。地方・地域への労働相談から100件の労働組合も結成されている。これらは、いま、大きく打って出れば、未組織労働者の組織化がすすむことを明らかにしている。同時に、労働組合が存在する企業内でも労働者は過酷なリストラ「合理化」に不安と不満を大きくしている。かつて労働者を支配する側におかれた中間管理職が、今ではリストラの最前線に立たされ、全信労大阪弘容労組では管理職が集団で組合加入、-32409解雇撤回・中小企業守れ-32408の運動に立ち上がるなど、職場では労働組合と中間管理職を隔てる壁が急速に崩れはじめている。職場に目線を置いた活動を重視するならば、未加入者の加入を可能にする条件がかつてなく広がっている。
2.「対話と共同」、全労連運動への支持の広がり
まともな労働組合運動への期待と共同が大きく進みはじめている。各地でとりくんでいる「春闘アンケート」「消費税3%減税」「雇用創出」などの署名や懇談などでの労組訪問が歓迎されている。この背景には、企業規模、労働組合系列の如何を問わず、労働者・労働組合の困難が増大していることがあり、そこからは、個別企業の枠を超えて、同一産業規模、全国・地方的な共同闘争の思いがあり、地方・地域で「連合」労組を含む共同が芽生えている。さらには「戦争法案」に反対して、陸・海・空・港湾の20労組がよびかけて「5・21全国大集会」を成功させるなど、悪政に反対する共同も中央・地方で前進している。「対話と共同」路線をうちだして4年、いよいよ「共同の担い手」としての全労連の姿が、広範な労働者・労働組合の前に明らかになってきている。
3.政治革新の流れとむすびついて
96年総選挙・97年都議選・98年参議院選・99年統一地方選など一連の選挙で、自民党退潮、日本共産党躍進という流れが鮮明になっている。この流れは、自民党の個別政策への不満や批判にとどまらず、多くの国民が大企業優先・国民犠牲の自民党政治そのものの転換をもとめたものである。このことは労働組合運動にも変化をもたらし、「連合」系労組の特定政党支持とその義務づけに対して、職場からの反発が相次ぎ、民間大企業をふくめて職場での「反共」をテコとする労働者支配が揺らぎはじめている。行き詰まった自民党政治がますます労働者・国民犠牲の政治を強行しようとしているもとで、悪政阻止の国民世論を体しての全労連運動が労働者の支持と期待を大きくしている。
V.200万全労連は、要求実現への確かな道
労働組合の主要な力は「たたかう数」である。200万全労連を達成するならば、全労連の闘争力量を高め、要求実現への影響力がいっそう増大する。同時に、政治革新の新しい流れと一体となって、悪政阻止の国民的共同の前進にいっそう貢献することになる。政府をして中労委・労働者委員、各種審議会委員任命などで公正な労働行政に向かわせ、全労連の社会的影響力を高める。そして、「より大きな全労連へ」の組織拡大を加速させ、日本の労働運動でイニシアチブを発揮する上での「500万全労連」「800地域組織」の展望をきりひらくことになる。
W.組織拡大・強化「第3次3ヵ年計画」案
1.組織拡大の目標と計画
(1)第18回大会時現勢「全労連組織実態調査」(99年5月末時点)による組織現勢は○,○○○,○○○人である(全労連第18回大会別冊を参照)。
(2)「第3次3ヵ年計画」の目標
@2002年6月末までに200万全労連・600地域組織を確立する。
A単産・地方組織は3年間で現勢比30%増を基準に、各組織の目標・計画を策定する。地方組織は25%増の目標で新たな地域組織の確立をめざす。
B期間は、99年1月〜2002年6月末までの3年6ヵ月とする。これまで期末を12月としてきたが、今次より全労連定期大会(7月)前の6月末とする。したがって、第3次・第1年次期間は1年6ヵ月となる。
(3)「第1年次計画」の目標
@17万人(現勢比11%)の純増で170万人到達を目標とする。
A33地域組織の新たな確立で500地域組織に到達する。
B期間を99年1月〜2000年6月末までの1年6ヵ月とする。
2.組織拡大の構えと重点課題
(1)20世紀にかかるこの1年を組織拡大「大運動年」に位置づける。(2)不況打開・雇用確保、実効ある介護保険、憲法擁護を前面に、対話と共同、「10万人オルグ」運動を土台に組織拡大にとりくむ。
(3)リストラ「合理化」による組合員減をのりこえる職場未組合員の加入促進。組合員参加の拡大運動の追求。目的・意識的な青年労働者の組織化。
(4)企業規模300人以下の組織率は僅か4%。経営危機・雇用不安に直面する中小企業労働者の組織化を重点とする。
(5)1,173万人といわれるパートなど短時間労働者の組織化を重視する。
(6)春闘共闘などで全労連と共同関係にある単産の全労連加盟について追求する。
(7)力の集中をはかる。拡大「月間」、労働相談「ホットライン」を設定する。
(8)単産の地方・地域組織への結集促進。5000人未満地方組織の拡大を重視する。
3.組織拡大の視点(3つの分野で4つの拡大計画を)
(1)全労働者を視野に、3つの分野で組織拡大を1)職場(企業内・企業関連)での多数派形成
2)単独労組の加入促進
3)未組織労働者の組織化
(2)拡大計画の柱は次の4つとする
1)組織化の情勢を鮮明にする
@産業・業種・地域ごとに存在する企業数と労働者数、労働組合の組織状況を明確にした組織地図を作成する。
A労働者が置かれている現状(賃金・労働条件の実態、労使関係など)と、労働者がもっている切実な要求を明確にする
B産業・業種・地域ごとに、その将来展望をどうするのかについての産業政策・業種政策・地域政策を作成する
2)組織化の目標・対象と要求を明確にする。
・目標は、具体的な拡大対象に裏打ちされたものとして明確にする。
3)組織化の具体的作戦計画をたてる
・要求闘争との結合(どういう要求で組織するのか)、大量宣伝計画、統一行動の企画、共同の取り組みなどを明確にする。
4)推進体制を確立する
・推進会議の設置、特別月間・旬間などの設定、財政確立、専従およびオルグ団の配置などを明確にする。
(3)職場での多数派形成めざして
@今、職場に新しい変化が現れている。「10数年も少数で頑張ってきた組合の『合理化』攻撃を機に一気に多数派になった」「既存の労組が何もしないので脱退して全労連に入った」などのケースが目立っている。青年層の加入が増えているのも特徴である。この背景には、激しいリストラ「合理化」が、官民や職責を問わず職場に鋭い矛盾をつくりだしてきていることがある。また、こうした問題に真っ正面からとりくむ職場組織に支持と期待が集まってきていることにある。労働者をめぐる情勢は、私たちが打って出れば職場での組織拡大が大きく進む可能性を示している。
A職場での多数派形成は、現在ある組織の力に依拠して組織拡大を行うことであり、すべての職場組織・全組合員が組織拡大運動に参加できる条件をもっている。同時に、このとりくみがすすめば、職場が活性化し生き生きとした活動が発展する。
全労連に結集する組合には少数・分裂組織が多いことや、職場での非正規労働者が増大するなかで、このとりくみをいっそう重視する必要がある。ところが、日本労働研究機構の調査結果で明らかなように、その企業に労働組合がありながら、加入の誘いを受けたことがない労働者は73%にものぼっている。これは、組織拡大が職場での要求実現にとって重要な活動という位置づけがされていないことである。改めてこの点での改善をはかりながら組織拡大をすすめる。
B職場の未加入労働者のリストを作成し、定期的に「総当たり」作戦を展開する。その作戦結果を分析、蓄積して個別の加入促進をはかる。
C職場の多数派を結集する要求づくりを重視する。組織拡大は要求闘争と結びついて進むものである。職場の変化を機敏に分析し、どういう要求を提起するかが鍵になる。
D雇用問題、賃金・労働条件や働きやすい職場づくり、健康問題など幅広く多面的な要求の中から、多数を結集する要求を組織する。
E職場での組織拡大を、既存の職場組織の確立と活動の活性化とあわせてとりくむ。全組合員活動を推進するとともに、職場政策づくりや職場要求闘争を未加入者と共同してとりくみ、世話役活動を徹底する中で多数派形成をめざす。
F拡大対象は企業内の未加入者であるが、正規労働者に限定せず、非正規労働者(パート・派遣・臨時など)、競合労組の仲間、管理職、さらには、関連・子会社の従業員および下請け会社の従業員にまで対象を広げる。中小零細企業の職場では、「職場」の概念を同一職種の仲間や地域の仲間に拡大する。特に、ユニオンショップなどで職場の多数派になっているところは、同一業種、同一地域で新しい組合をつくることや、関連・子会社に組織を拡大するために奮闘する。
G職場の非正規労働者や関連・下請けなどの組織化にあわせて、既存の組合規約の見直し(組合員の範囲など)や企業横断的組織づくりなど、「受け皿」としての組織形態にも工夫する。
H画一的な「管理職=支配側」と捉えない。リストラ「合理化」の最前線に立たされている中間職制との懇談などを通じて要求を共有する。中間職制の組合加入働きかけ、管理職組合結成を援助する。
I現在は職場で多数派であったとしても、組織の固定化や組合員の高齢化などで、将来厳しい実態が予想される組織は危機意識を持って攻勢的にとりくむ。とりわけ青年労働者の組織化は重要である。
(4)単独労組の加入促進
@この間の「対話と共同」のとりくみで、訪問したほとんどの単独組合が快く対応してくれ、「情報が欲しい」という要求とともに、リストラ攻撃や新しい労務管理、経営困難への対処など具体的な相談も出されているのが特徴である。また、労働者・国民への悪政が強行されるもとで、一致できる要求での共同も進んでいる。繰り返し労組訪問を行っている地方組織が着実に新しい加盟組合を迎えていることでも明らかなように、足を踏み出せば単独労組の加入促進が大きく進む可能性が開けている。
A全労連や連合、全労協などナショナルセンターや上部団体を持たない単産・単独労組の労働者数は全国で360万人にものぼる。各単産・地方組織はそれぞれの組織構想に基づき、すべての単独労組をリストアップし、産業・業種・地域ごとに系統的に労組訪問を行う。同時に一致できる要求で共同を働きかける。
B労組訪問にあたっては、相手の置かれている状況をよくつかみ、要求にかみあうような政策提起・宣伝物を持ち込む。また、具体的な懇談・交流・学習会など共同の場の設定などを系統的に進める中で、対象を明確にし、積極的に加入を働きかける。
(5)未組織労働者の組織化
@地方組織はもとより、連合や行政組織にも労働相談が急増している。「突然の解雇や賃下げ」「賃金の未払い」「倒産や企業閉鎖」など様々な相談がよせられ、未組織労働者の劣悪で無権利な実態が浮かび上がっている。特徴的なのは、未組織労働者がこうした状況に諦め泣き寝入りするのでなく、行動に立上がり、労働組合をつくり「何とかしたい」という割合が増えてきていることである。ここでも打って出れば組織拡大の飛躍が生まれる可能性が大きく広がっている。
A5,400万雇用労働者のうち、労働組合に結集している労働者は、約1,209万人(単位労働組合数約7万)で、推定組織率は22.4%。民間の企業別組織率は、1,000人以上企業の58.9%に対して、雇用者数で過半数を占めている100人未満企業では4.1%、その中で雇用者数の33%・約1,750万人を占める29人以下企業での労働組合員はわずか5万1,000人・推定組織率は0.5%である。私たちのまわりには膨大な未組織労働者が存在している。
B未組織労働者は、無権利で劣悪な労働条件にあり、その実態や要求は、産業・業種・地域や組織率などによってかなり異なる。従って膨大な未組織労働者の組織化は焦点の定まらない一般的な働きかけだけでは成功しない。単産・地方組織がより魅力のある組織になるよう努力するとともに、現在持っている主体的な組織力量をよく把握して、業種や地域の重点対象を絞り込み、対象にあわせた要求・政策を前面に打ち出した攻勢的・継続的な宣伝・工作を実施する中で組織拡大につなげることとする。
C未組織労働者は、パート・派遣・臨時・請け負い労働者・在宅勤務など、様々な雇用形態に分断され、労使関係も極めてあいまいにされている。こうした労働者を組織化する場合、企業にある既存の組織への組み入れや、産別の地域(業種)支部への組織、地方組織が経験を蓄積してきている地域労組づくりなど、あらかじめ受け皿となる組織をどうするのか明確にして組織化にのぞむこととする。また、この点で、企業籍を持たない、労使関係をあいまいにされている建設労働者(大工・左官・鳶など)、ダンプ・労災職業病・学童保育などの労働者、年金労働者の組織化が前進している教訓を大切にし、この分野での組織拡大についていっそうの前進をはかる。
D政府・財界の構造改革路線にもとづくリストラ「合理化」と不況による企業倒産の激増などで完全失業者は約334万人にものぼる。新卒者の就職困難などを考えれば実際の失業者はさらにふくらむ。いくつかの地方組織ではこの間、職安前での宣伝行動や要求アンケートなどをとりくみ、失業者の要求を組織してきている。この教訓を生かしながら、失業者の組織化についても検討し実践に移していく。
4.組織化の具体的作戦計画
(1)「待ち」ではなく、攻勢的な組織拡大を労働相談所の設置や、一般的な組織宣伝活動だけでは飛躍的で系統的な組織拡大にはつながらない。各組織が将来自らの組織をどのような組織にするのかの青写真にもとづいて、組織拡大の目標を立て、構想を練り、作戦計画にもとづいて、オルグを先頭に全組合員が系統的に組織拡大の事業にとりくんでこそ飛躍がうまれる。新しい組織化が次の新しい組織化につながっていくような、攻勢的な組織拡大を展開する。
(2)要求闘争との結合を重視する
組織化作戦の基本は要求にもとづく「対話と共同」である。要求があるから組織が生まれることを念頭において、対象とする労働者・労働組合が今どんな要求を持っているかを明確に把握することが大切である。春闘や一時金闘争の時期は、要求が鮮明になり、とりくみが高揚する時期である。この時期に、春闘アンケートや単産・地方が発行している政策ビラなどを活用した「対話や共同」をすすめ、要求実現の道が労働組合の結成(加入)にあることを明らかにして、組織拡大をすすめる。
(3)大量宣伝と統一行動を系統的に強化する
@組織化対象に見合った要求を前面に掲げ、成功した組織化の紹介なども含めた宣伝物を大量に系統的に作成・配布する活動も組織化活動の基本である。統一行動日を設定し、ターミナル・拠点で音の出る立体的宣伝を大規模に実施する。
A労働相談は常設とし、単産・地方組織にとどめず、地域組織、単組(支部・分会)段階にまで広げ、無数の相談窓口をつくる。特定の期間に集中的に実施する場合は、マスコミの活用を最大限追求する。
B大看板の設置、電話帳への広告案内、新聞折り込み、テレビ・ラジオのスポットも積極的にとりくむ。
(4)「拡大月間」など集中的なとりくみと綿密な準備活動を重視する
一定の期間を区切って、組織の総力をあげて組織拡大にとりくむ活動は、具体的成果をあげるうえで極めて有効であり、重要である。問題は、「月間」にとりくむ機関の姿勢である。日常とは違う特別な態勢を組むことは当然であり、そのうえで、「月間」で何をするのかを明確にし、機関の側の周到で綿密な準備を行うこと、オルグと全組合員に「やる気」「奮起」を促すとりくみを重視する。
(5)単産・地方が一体となってとりくみを強化する
単産と地方が一体となって、組織拡大を行うことが重要である。一定の期間に特定の産別に集中した組織宣伝・集中オルグなどを実施して具体的成果をめざす。組織拡大の作業は、準備期間の学習から結成後の団体交渉の指導まで様々な活動がある。労働組合の結成が増えれば増えるほど、多くのオルグが必要になることから、共同で専門オルグの養成講座を開催するなど、各組織がお互いに援助しあって組織拡大を推進するスタイルをつくることは有効である。
(6)すべての活動を組織化に結びつける
政府・財界の攻撃が根本的・全面的であるため、労働組合運動の領域がますます広がり、活動も忙しさを増している。しかし、あれこれの運動が前進してもそれが組織拡大につながっていかなければ、やがて組織は疲弊する。改めて、あらゆる活動を組織拡大にむすびつけることを重視する。
(7)各級組織の役割
1)全労連
@全国レベルの中立労組、単独労組との共同を追求し、全労連加入を働きかける。
A単産・地方組織・ブロックと連携し、重点産業・業種での拡大、5,000人以下地方組織への援助、主要都市における地域組織の確立をめざす。
B全国的規模での組織拡大運動、大量宣伝などの提起と推進をはかる。
2)単産の役割
@同一産業・業種での拡大に責任を持ち、産業・業種を構成する企業・労働者数の1割、3割、5割といった目標到達を系統的に追求し、数万・数十万の単産建設をめざす。
A単産中央は同一産業・業種における全国規模の労組対策・未組織の組織化に努力する。また、業界に影響を与える企業での組織化を重視する。
B単産の下部組織は、地方規模の単組の労組対策、産別・業種を通じての未組織の組織化に努力する。
C単産の下部組織が地方組織・地域組織に結集していないケースが少なからず見受けらる。職場組織の強化・活性化のためにも、単産は下部組織への指導をつよめる。
3)地方組織の役割
@同一地方・地域におけるあらゆる労働者を視野に、拡大を進める。特に単産の下部組織と連携し、地域におけるその産別の拡大を図る。
A主要都市における地域組織の確立をはかる。
B地域労組をつくる場合、労働組合としての位置づけ、「友の会」的位置づけ、その両方を兼ねた位置づけなどがあるが、地域の状況に合わせてとりくむ。
C労働相談所の常設化をはかる。相談が激増している中で、どんな相談にも応じることのできる機能の充実をはかる。労働組合づくりにつながりそうな場合は、電話だけでなく、直接事務所に来てもらうなどの努力を強める。組織拡大につながらない事件処理のケースも多いが、事件処理後のつながりを大切にし、次の就職先での組合作りにつなげる努力をする。
5.推進体制について
(1)全労連は、第18回定期大会で「組織拡大第3次3ヵ年計画」(案)を採択する。各組織は「3ヵ年計画」(案)にもとづき、組織を取り巻く情勢の分析、拡大目標と戦略構想・作戦計画・推進体制を各定期大会で策定または補強する。
(2)全労連に単産・地方組織を含めた「推進委員会」をつくり、到達度の点検、とりくみについて随時確認する。単産・地方は、推進会議(推進委員会)を確立し、定期的会議の開催、目標の到達点、教訓・問題点を明らかにし、次の組織拡大につなげていく。組織拡大の活動を部局まかせ、専従者まかせにしない体制を追求する。
(3)全労連として、大量宣伝を企画するとともに、各組織も大量宣伝を重視し、同時に対象に応じたきめこまかい宣伝も工夫する。
(4)全労連として、全国統一労働相談ダイヤルの設置をひきつづき検討する。
単産および地方組織に常設の労働相談所を開設する。あわせて、単組・支部・分会にいたるまで、可能なかぎり労働相談所を開設する。
(5)パート労働者などの組織化にむけ、各単組でパート労働者も加入できるような規約改正を図る。全労連に「パート・臨時労働者連絡会」(仮称)の設置をすすめる。
派遣労働者など労使関係をあいまいにされている労働者などの組織化にあたり、「地域労組」「友の会」などの「受け皿」づくりをすすめる。派遣労働者がふえる情勢に対応するため、派遣労働者組織化のための研究をおこなう。
(6)毎年2回春と秋に組織拡大月間を設定し、集中的に拡大を推進する。
・第1次拡大月間 1999年3月1日〜5月31日(実施済み)
・第2次 〃 1999年10月1日〜11月30日
・第3次 〃 2000年3月1日〜6月30日 (3月は準備期間)
・第4次 〃 2000年10月1日〜11月30日
・第5次 〃 2001年3月1日〜6月30日 ( 〃 )
・第6次 〃 2001年10月1日〜11月30日
・第7次 〃 2002年3月1日〜6月30日 ( 〃 )
X.組織強化のとりくみ
組織拡大とあわせて、機関紙拡大、教育学習、青年部、女性部、自主共済の課題を組織強化の課題としてきた。第3次計画でもこれら課題の強化を追求する。
1.全労連機関紙の改革
全労連機関紙は、現在月2回タブロイド版8ページ、独立採算制で発行されている。結成10年を機に、機関紙の内容・体裁、発行部数・回数、編集体制、理論誌の検討など、ナショナルセンターの機関紙のあり方を改めて検討し、抜本的改革をはかる。そのために、「機関紙改革検討プロジェクト」を専従役員を中心に設置する。
2.教育学習・幹部育成活動の強化について
教育学習活動は、活動の質的向上を図るとともに、幹部育成と一体の課題である。全労連結成以降の最も遅れている活動でもあり、各種教育集会の開催、外部組織との連携など、ナショナルセンターとしての教育学習活動や幹部育成のあり方などについて、機関紙改革とあわせてプロジェクトで検討する。
3.労働組合における「男女平等参画促進計画」の策定と推進
組合員構成比に見合った女性役員の実現をめざす。女性労働者の要求や視点で労働組合を活性化させるため多くの女性役員を実現することが重要な課題となっている。女性の専従役員が配置されているのは、6単産・3地方組織であり、女性部役員はほとんど非専従で職場勤務をしながらの活動となっている。組織強化や組合員拡大の推進からも各段階での執行部に女性役員の配置(特に専従役員)が重要である。国際基準では女性役員は30%、政策決定の場での女性の参加は50%が示されている。全労連は、各組織の構成比に見合った女性役員の実現をめざす。実態調査をおこない、すべての単産・地方組織で少なくともゼロをなくし、複数配置を実現する。
4.青年部・女性部の組織強化
(1)青年部就職難、青年リストラ等により、青年の状態悪化が進み、青年からの労働相談や青年による労働組合の結成も増えている。パートやアルバイトといった不安定雇用労働者の多数が青年である。青年の切実な要求を実現していくためにも、未組織の青年を組織していくことが重要である。また、各組織の次代の担い手を育成していくためにも青年部活動に対する抜本的な強化が必要である。
全労連青年部の運動を安定的に保障するための人事政策を含めた青年対策を策定していくことが求められている。地方組織における青年部の確立は半数に満たない。参院選挙の投票率に示された青年のエネルギーをいかし、青年の大きな運動をつくつていくためにも単産や地方組織青年部の確立・活性化は、必要不可欠となっている。その際に「指導」という名の「押し付け」や自主性尊重という「放任」ではない青年の目線に立った青年担当者の配置を含めた具体的な対策が求められている。
(2)女性部
全単産・地方組織に女性部の確立をすすめる。女性部の組織は現在14単産、35地方組織に確立され、1単産2地方に準備会ができている。97年度も98年度も1単産1地方の女性部が、いずれも長年にわたる単組女性部と単産本部の努力が積み重なって、要求実現や女性の視点で労働組合のとりくみをすすめようと大きな期待の中での結成された。残された8単産と10地方に女性部の結成を単産本部の援助を得て、結成時期の目途をつけて準備することが求められている。さらに、単組や職場及び地域組織に女性部の結成が重要である。
5.自主共済活動の強化について
いま、リストラ「合理化」による雇用・賃金破壊による労働者の現実生活と将来不安を増大させているもとで、労働組合運動の原点である相互扶助活動によって組合員の不測の事故による生活再建に寄与する労働者自主共済の役割が増している。また、自主共済活動は、労働組合の団結維持・強化、未組織労働者の組織化にも貢献する。すでに全労連加盟単産の中で独自の共済会を持ち、その内の共済会が共同して再共済事業、年金共済で「全国労働組合共済連合会」(労働共済連)を組織している。地方組織においても、現在21地方で共済会を発足させている。全労連としては、労働共済連との連携をつよめて地方共済会の確立を援助する。