全労連第21回定期大会(1日目) ホームページへ  トップページへ  戻る

第21回定期大会全労連議長あいさつ

2004年7月28日
全労連議長 熊谷 金道
全労連議長あいさつ 動画
 全労連第21回定期大会に参加された単産・地方組織の代議員・傍聴者の皆さん、大変ご苦労様です。また、私どもの大会を激励するため大変お忙しいなか御列席いただきました御来賓の皆さん、さらには、私たちの招待に応じて本大会に参加された多くの海外代表の皆さん、本当にありがとうございます。
 
 大会参加者の皆さん、前20回大会以降の2年間に全労連結成の前史に大きな役割を果たされた統一労組懇の事務局長であった春山さんや東京地評の議長であった矢部さんをはじめ、全労連事務局次長も務められた建交労の栗山さん、静岡県評前議長の吉川さん、熊本県労連の現職事務局長であった広瀬さんなど多くの仲間たちが志なかばにして病により亡くなられました。皆さんとともに故人たちの功績を偲び、心から哀悼の意を表すると同時にご冥福を祈りたいと思います。
 また、先の集中豪雨で被災された新潟・福井の仲間の皆さんと県民の皆さんに心からお見舞い申し上げます。

 私は全労連幹事会を代表して、第21回定期大会に参加された皆さんと全国の仲間たちに直面している幾つかの課題などに触れながらご挨拶申し上げるものです。

 はじめに申し上げたいことは、さる7月11日を投票日にたたかわれた参議院選挙の結果と新たな政治局面での私たちの課題と役割についてです。
 今度の選挙は、圧倒的多数の国民世論を無視した年金制度の大改悪や憲法を踏みにじっての自衛隊のイラク派遣・多国籍軍参加などを強行し、来年には9条を中心とした憲法改悪案を取りまとめ、07年までに消費税増税や憲法改悪をおこなおうとしている小泉政権に国民がどのような審判を下すのかが問われた歴史的な選挙でした。
 選挙結果を得票数や議席数から見るなら、自民党は得票数を大きく減らし、当選者数でも小泉政権発足直後の前回の65人から49人へと大きく後退させ、民主党が得票数と議席をともに大きく前進させ、自民党・民主党の「二大政党」の流れを加速させたことに大きな特徴があります。そして、その狭間で憲法擁護を掲げる日本共産党が改選議席数を大きく後退させ、社民党もほぼ現状維持に留まるという結果になりました。
 マスコミなどは、この「二大政党」の流れを肯定的に促進する論調を強めていますが、私たちにとって重要なことは、この「二大政党」がどんな政治をめざし、労働者や国民にどんな政策を打ち出しているかということです。
 選挙での論戦や政策で具体的に明らかにされたのは、この「二大政党」は、ともに財界からの政治献金を期待し、「市場のことは市場で」を基本に「規制緩和」など「構造改革」のさらなる推進、06〜07年にかけて消費税増税や憲法改悪を競い合っているように、基本的にはこの「二大政党」は同じ政治的枠組みのなかで政権の維持と交替を争っているということです。したがって、こうした「二大政党」では、財界やアメリカいいなり政治の根本的改革など私たちの願いに応える政治は期待できないということです。
 私は、今度の選挙結果は今後の政治がますます激動の様相を強めざるを得ない状況を作り出していると思います。それは、小泉内閣への厳しい批判は選挙後も内閣支持率の低下として続いており、多くの地方・業界団体などにおける自民党の支持基盤崩壊が選挙戦を通じて表面化していること、他方で民主党の前進は小泉内閣への批判や「政治を変えたい」と言う国民の願いの反映であり、消費税増税や改憲論に直結はしていないこと、したがって民主党が政権獲得をめざそうとするなら自公政権との違いを国民に示さざるを得なくなっているからです。しかしながら、アメリカの圧力も受けながら財界と一体で消費税増税や憲法改悪を競うこの「二大政党」が参議院で81.4%、衆議院で87.9%、公明党を加えるとそれぞれ、91.3%、95%もの議席を占有していることを決して見過ごしてはなりません。
 それだけに、今度の選挙で「小泉政治ノー」の審判を下した広範な国民の怒りや要求を今後の政治にどう具体的に反映させるのか、消費税増税や憲法改悪、それに先だつ「国民投票法案」や教育基本法改悪の策動などを阻止する全労連や民主勢力をはじめとする広範な諸団体・個人をも結集した国民的共同の大衆的な運動強化が決定的に重要になっているということです。

 次に申し上げたいことは、本大会に提起する運動方針案の「基調」についてです。その詳細は後ほど坂内事務局長から提案されますが、全労連幹事会は今後2年間の運動方針の「基調」として自らのたたかう決意を込めて「三つの柱」を提案しています。
 
 その第一の柱に据えているのは、今後2年間の運動の最重点課題として、すべての組織が憲法改悪阻止を文字通り日本の戦後史をかけた政治戦として位置づけ、組織の総力を挙げた運動を全国津々浦々から展開することの重要性についてです。
 大江健三郎さんをはじめ日本の良心を代表する著名な9氏が「九条の会」を発足させ、「日本と世界の平和な未来のために、日本国憲法を守るという一点で手をつなぎ、『改憲』の企てを阻むため、一人ひとりができる、あらゆる努力を、いますぐ始めること」を訴えています。全労連はこの訴えに全面的な賛意を表明すると同時に、これに連帯して職場や地域からナショナルセンター所属や立場の違いを超えた広範な人たちによる「九条の会」的な運動を発展せせることを呼びかけるものです。
 同時に、憲法改悪阻止の大きな政治戦線を構築するためにも、広範な諸団体・個人を結集した国民的共同、労働戦線における共同の運動強化が決定的に重要になっています。すでに全労連は、全商連や新婦人、全日本民医連など6団体との間で広範な団体にも呼びかけて憲法改悪阻止の「共同センター」を8月下旬ないしは9月上旬に発足させ、国民過半数署名やこの秋からの大衆行動を展開することなどを基本的に合意し、その準備を開始しています。今後は労働戦線における共同についても具体的な取り組みを開始することにしています。全国各地でこうした取り組みを早急に開始することが重要になっています。
 
 第二の柱として強調しているのは、いまや待ったなしの課題となっている組織拡大の重要性についてです。全労連は今年の秋で結成から15年目を迎えます。この間、単産や地方組織の皆さんの奮闘で新規結成や新規加入などで多くの新しい仲間を迎え入れていますが、全体としては残念ながら組織的後退を連続的に余儀なくされています。今後数年の間には「団塊の世代」の相当大規模な定年・退職の時代を迎えます。労働組合組織率の低下は労働組合の社会的影響力の低下、そして要求実現の展望にも直結する問題です。
 全国の仲間たちの積極的なご協力により全労連としての「組織拡大推進基金」確立が決定され、すでに具体的な取り組みが開始され、オルグ制度も本大会以降スタートします。
しかし、組織拡大にとって決定的に重要なことは、この課題をオルグや特定の役員任せの任務にすることなく、すべての職場・地域組織が組織拡大の具体的な目標を持って、どれだけ多くの仲間の参加で組織拡大を大衆的な運動として、組合員自身が自分の組合の素晴らしさを語り、新たな仲間を誘ってくるような運動として展開できるかということです。たとえば、単産や単組として、すべての少数職場が多数派になるための作戦計画を持つ、あるいは、全国的には今直ちには困難だとしても中立労組の結集や未組織労働者の組織化などで地域的には同一産業・業種の中での多数派をめざす作戦計画をもつ、さらには、職場のパートや非正規労働者の組織化の作戦計画など、具体的で身近な目標をトップダウンではなく、職場や地域、産業内における労使の力関係、社会的な力関係を変えていく、言うなら要求実現の展望を切り開くにふさわしい組織拡大目標を、職場や地域の仲間と共同の作業として作り上げていくことが大切です。これ以上の組織的後退は絶対に許されませんし、全労連幹事会も断固たる決意で組織拡大に全力を注ぐものです。
 
 運動方針案の基調が第三の柱としているのは、「21世紀初頭の目標と展望」で掲げた要求の具体的・実践的追求の重要性についてです。これについては、運動方針案の各論で詳しく展開していますので内容については省略させていただきますが、全労連は労働条件の向上と同時に人間の尊厳、基本的人権を守り、労働者の権利擁護、働くルールの確立をめざして奮闘してきています。そうした視点から、私たちが見過ごすことのできない出来事がおきています。それは、プロ野球界の再編とそれに関連した選手会の動きについての巨人軍渡辺オーナーの「無礼なことを言うな、たかが選手が」と言う発言です。この発言は、「たかが労働者が」「たかが国民が」にもつながる極めて危険で人間蔑視、労働者蔑視の発言として私は断じて容認できません。選手あってのプロ野球界、労働者あっての企業というごく当たり前のことを理解していないような前近代的で思い上がったこのオーナーに対し、全国的な抗議・糾弾の行動を取り組むことを呼びかけたいと思います。また、プロ野球選手会への激励もおこなっていきたいと思います。
 
 最後になりますが、全労連大会の終了直後には広島・長崎での原水爆禁止世界大会が予定されています。来年は被爆60周年を迎え、5月には核不拡散条約(NPT)再検討会議も予定されています。この節目の年に核兵器廃絶の具体的な展望を切り開くためにも今年の世界大会を成功させ、来年に向けて核兵器廃絶の国際世論を大きく発展させるために奮闘することが、被爆国日本の労働者・労働組合に求められています。その運動を国民的に大きく前進させるためにも、不幸にして分裂状態にある国内の原水爆禁止運動の統一をめざし、具体的な共同行動をつくり上げていくことが極めて重要になっています。昨年の8月に連合の笹森会長もその重要性について長崎で発言されました。私はこの発言を大変重いものとして受けとめ、全労連としても国内における運動の統一、共同が具体的に実現できるよう関係組織などに積極的に働きかけていきたいと思います。
 
 本大会が15年目を迎える全労連運動の飛躍に向けての画期となるよう、この間の運動の教訓や提起している運動方針案にたいする参加者の積極的な発言により大会を成功させていただくよう心からお願いしまして、幹事会を代表しての挨拶とさせていただきます。

以上


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