討論に対する総括答弁を行う。発言者は、第1日目10人、第2日目54人、本日5人の合計69人であった。ほかに、時間の関係で8人の方を文書発言の扱いとさせていただいた。議事運営への協力に感謝するとともに、いずれも議案を補強する発言として受け止め、今後の方針とたたかいに生かしたい。
新潟、福井から集中豪雨災害の報告がされた。被災者の皆さんに改めてお見舞い申し上げるとともに、全国からのカンパを中心とする支援をお願いする。福井の代議員が紹介したように、全労連もただちに現地に役員を派遣して状況を掌握するとともに、全労連財政のなかから見舞い金と一定額のカンパの前払いを届けた。単産・地方組織のとりくみを重ねてお願いする。
議案提案の冒頭に提案したプロ野球選手会への支援について、何人かの代議員が触れられた。福岡の石橋代議員は、組織をあげて支援したいと力を込められた。ありがたいが、支援方法としては、組織の総力をあげてというより勝手連的にやってほしいと思う。選手会の皆さんがいろいろな方面に気を使いながら、いま必死に頑張っている。万が一でも、全労連が前に出ることによって選手会に迷惑がかかるようなことがあってはならない。
全労連の提案に対して、マスコミはきわめて機敏に反応し、5大紙やスポーツ紙が全部報道した。なかには全労連が不買運動を決めたという誤解した報道もあった。それに対して、読売新聞の社長が苛立って反応している。労働者蔑視、憲法改悪世論の誘導という、その読売新聞を組合員が購読することを私は決して薦めはしないが、組織的な不買運動を提起したわけではない。また、われわれが望んでいるのはプロ野球のストライキでもないし野球界の混乱でもない。一昨日、幹事会が文書で提案した支援内容を職場・地域に広めていただきたい。
第1号議案「運動方針案」について、反対意見が二つあった。賃金闘争で和歌山から「全労連の賃金闘争方針は組合員の要求重視の視点が欠落している。単産任せで企業内闘争の賃金闘争方針ではないか。これでいいのか全労連賃金闘争」と厳しく批判された。幹事会は、提案した全労連の賃金闘争方針は財界の賃下げ・春闘解体攻撃に切り結ぶ賃金闘争の方針だと確信している。意見の違いについては、今後とも理解を得られるように努力をしていくが、議案は原案のまま採決に付す。
もう一つは、労働組合における男女共同参画の推進措置として提案した「全労連第22回定期大会で『ポジティブアクション』に関する規約改正を行う」ことについて、神奈川から「こんな方針を出すとは失望した」と、これまた強く批判された。
全労連は前大会後に、駒場副議長・自治労連委員長を責任者とし、各単産の書記長なども参加した「男女平等推進委員会」を設置した。一方、国連の女性差別撤廃委員会は2003年の最終報告で、日本政府に対して女性差別撤廃条約の第4条1にもとづく暫定的措置を実施するよう勧告した。政治的・公的活動における女性の参加のために、拘束力のある措置をとりなさいという内容の勧告であった。こうした状況を受けて、労働組合として男女共同参画のどういう具体的措置をとるべきなのか、全労連の男女平等推進委員会や幹事会で真剣に議論しまとめたものが「資料集1」の147頁にある「21世紀、新たな時代での全労連の挑戦」という問題提起だ。この問題提起は、4月17日に開催した「労働組合における男女平等推進のための単産・地方組織代表者会議」に提案・討論され、機関紙でも報道した。
国の法律や労働組合の規約を変えてでも男女共同参画を推進することは、決して運動の軽視ではないし、いわゆる逆差別でもない。積極的に構ずべき措置であり、これは国際的な流れでもある。おそらく連合加盟組合も含めてその方向に動いていくだろう。発言の趣旨は十分理解できるが、提案した議案の削除や修正は以上の理由で応じられない。理解いただき原案に賛成をお願いしたい。
同じく男女共同参画について、大阪・薮田代議員から2003年7月に「次世代育成支援推進対策法」、つまり国や自治体、従業員301人以上の企業に、仕事と子育てを両立させるための雇用環境整備の行動計画を2005年3月末までに策定することを義務付けた法律が制定された。この実施を迫るとりくみの補強が求められた。女性部・小原代議員の時間外労働規制とともに意見を受け入れ補強する。
さて、全労連結成15年の節目に、15人の海外代表を招待して開催した今大会。討論の特徴は第一に、提案した2年間の全労連運動の基本的視点、憲法を守る日本の戦後史をかけたたたかいに挑むこと。そして、労働組合運動の転機、新たな試練のもとで、組織拡大・強化を何としても前進させる。この提案に熱い賛同と討論が集中したことである。33人の代議員の発言が組織拡大・強化に集中された。
提案の際に、「全労連と単産・地方が一体となった組織拡大をめざす推進基金の創設は、全労連の組織的発展に大いなる希望を与えるものとなるだろう」と申し上げ、また「試練はチャンスでもある。基金の創設、全労連オルグの配置と結合して、すべての単産、地方・地域が集中して組織拡大にとりくむなら、かつて経験したことのない飛躍の可能性がある。可能性を現実に転化しよう」と訴えた。
代議員の発言は、見事にそれを証明した。生協労連の橋本代議員や大阪の植田代議員の発言、「パート労働者が一人の人間として自立し、自ら意思をもち行動して運動を切り開こう」「産別も地域も運動の困難さを互いに他人のせいにしないで、自ら困難を切り拓く立場で奮闘しよう」。三重の唐沢代議員や埼玉の江口代議員の発言、「労働者の日常の生活に立脚する身近でささやかな要求を掘り起こし運動を組織して、組織拡大に結びつけよう」。JMIU・山本代議員の発言、「定年、管理職、倒産。組合脱退の三つのなぜ?の解消」。みな感銘を与える発言であった。日本医労連では、全労連オルグが配置される九州において、さっそく新しい組合の結成に成功したことが報告された。
一人ひとりの発言に感謝をこめてコメントしたい気持ちでいっぱいだが、残念ながらその時間はない。幹事会の具体的な検討を求められた京都・馬場代議員のローカルユニオンの位置づけの問題、佐賀・浦中代議員のすべての県組織に複数の専従を配置するための対策、愛知の榑松代議員も関連して触れた単産書記長と県労連事務局長の意見交換の場の設定、全労連常任幹事の小さな組織に対する積極的なオルグ要請、宮城・及川代議員の組織率後退の原因を深く分析し組織戦略を立てることの必要性。愛知・桜井代議員の大企業を職場のなかから攻めていくための連携、これらをはじめ、すべての発言を新しく選出される幹事会において検討し、今後の方針で明らかにするように努力する。
憲法改悪、教育基本法阻止に絞った発言も10人以上にのぼった。いま民主団体の運動推進共同センターを準備しているが、全労連は共同センターの人も場所も必要な措置をとる。賃金であれ、雇用であれ、社会保障であれ、憲法が改悪されてからでは手遅れだ。前科一犯になろうと、阻止闘争を貫かねばならない。
今大会に、海員組合から初めてメッセージが寄せらた。船は国旗・日の丸を掲げて海原を航海する。日本国憲法9条が定着し、日の丸も戦争に加担しない国の目印となった。イラクに自衛隊が派兵され、多国籍軍に自衛隊が参加し、そして憲法第9条が改悪されたらどうなるか。日の丸は攻撃の的と変わる。連合加盟の海員組合の仲間から、陸・海・空・港湾20労組の共同の積み重ねがあったとはいえ、全労連大会に心のこもったメッセージを寄せられるということは、憲法9条への危機感とたたかいの前進の可能性、この二つのことを示しているのではないか。
昨日、民主党の岡田代表がワシントンで、「憲法を改正すれば、武力行使は可能だ」と述べた。提案で申し上げた全労連と加盟組織の三つの仕事。一つ、日本の知性と良心の代表・「9条の会」の呼びかけに賛同し、その波を全国津々浦々に広げること。二つ、国民過半数署名を軸とした運動推進共同センターを確立し奮闘すること。三つ、労働組合の共同を拡大すること。教員も、医療人も、金属も、建設も、ダンプも、金融も、すでに結成された映画・演劇人も、いたるところに「憲法改悪に反対する○○の会」をつくり、行動しようではないか。
自治労連・今井代議員から「衆参の全選挙区に憲法改悪に反対する統一候補者を擁立し、国会の力関係を変革しよう」と提唱された。選挙における統一戦線は、政党や民主団体との慎重な意見交換、調整が必要となる。改憲をくいとめるためにわれわれは何を為すべきなのか、自由で大胆な討論を通じて模索していこうではないか。青年活動家の育成、大学習運動の提起、映演総連・梯代議員が指摘したマスメディア対策を含めて、貴重な意見として受け止める。
討論の第二の特徴は、賃下げ攻撃に歯止めをかけ、反転攻勢に転じていく重要な闘争として、また国民生活全体が底辺から破壊されつつあるなかで、国民生活の最低限度を国が制度として保障する仕組み、ナショナル・ミニマムを確立すること、その軸となる最低賃金闘争を本格的に強化しよう、この提案にピッタリかみあった討論が行われたことだ。時間の関係できめ細かにコメントする余裕はないが、北海道や京都・岡山をはじめ、最賃体験運動は全国的に一挙に3倍に増えた。27地方・500人の最賃体験運動が世論を現実に動かしてきた。しかし、目標は全県で1,000人であったから、まだまだ全労連方針を正面から受け止め、実践めざして最大限の力を傾注するという点で不十分さがある。
中央最低賃金審議会の目安答申に引き上げ額を明示することは、残念ながら実現できなかった。多くの労働者に対して、すまない気持ちでいっぱいだ。しかし、2002年、2003年と2年連続基本給マイナスの勧告が続いてきた人事院勧告でも、今年度の基本給引き下げは断念せざるを得ない流れとなっている。
大会後、ただちに地方最低賃金審議会の山場が待っている。一昨年も昨年も、今年より悪い答申のもとでも、それぞれいくつかの県で引き上げを実現した。世論はいま、それより大きく有利な方向に進んでいる。去年は神奈川、今年は東京、来年は埼玉などと謙虚に順番を譲りあうことなく、全県で引き上げを実現し、最低賃金闘争の新しい流れをつくり出そうではないか。
そのほかにも提案に対して、たくさんの意見が出された。多くは提案を積極的に支持する立場での補強意見であった。これまで、ややありがちであった単なる経過報告や決意表明ではなく、非常に建設的な討論が行われたことが特徴で、全労連運動の未来を確信させるものであった。
同時に、幹事会に対する注文もたくさん出された。情勢、方針、要求、行動計画。個々の単産や地域の窓口からみるなら、違和感、温度差、評価の違いのある部分もあるかも知れない。しかし全労連の提起は、22の単産、47の都道府県、460の地域労連、そこに結集する132万8千人の組合員が、朝も、昼も、夜も、地を這いつくばってたたかいながら、自分の職場で、地域で、産業で、そして世界で、いま何が起きてどういうたたかいが展開されているか、その報告が毎日寄せられてくる。それを総合的に分析して、方針を打ち出す努力をしている。もちろん、だから完全だとは言えない。不十分さもあるだろう。歴史的に見れば誤りもあるかも知れない。しかし、みんなで討論して決定したら全組織・全組合員が力をあわせて実践する、そして総括する、という全労連に成長させていこうではないか。
限られた時間のなかで、採決にあたってどうしても幹事会の立場を鮮明にしなければならない反対意見への答弁を優先し、それから全体の討論の特徴について申し上げたが、郵産労・日巻代議員から指摘のあった郵政民営化反対闘争、政府が29日、約27万人の職員全員の身分を07年4月の民営化と同時に、一律に非公務員とする方針を固めたもとで、補強意見を受け入れてたたかいを強める。また、建交労・佐藤代議員の失業者政策に対する要望意見、年金者組合・松岡代議員の最低保障年金制度の財源に関する要望意見、大阪・植田代議員の結成15年の運動のうえに地域運動の新たな戦略を打ち出せとの要望意見、京都・岩橋代議員の不安定雇用労働者の労働条件改善をめざすアクションプログラム策定の要望意見、いずれも真摯に受け止め、皆さんの知恵も借りながら全労連政策の拡充に努力する。
自交総連の久賀代議員から、自交総連として全力をあげた4・15年金ストライキの総括について、「他の単産の実施状況も含めて説明しろ」と求められた。詳しく説明する時間がないが、4・15ストライキ行動参加者は、日本医労連の7万人、自交総連の8千人、JMIUの6千人などが中心であった。ある県の医労連やJMIUの経営者からも「ストライキをやるのは医労連だけじゃないか」「JMIUだけじゃないか」、そういう声が出たとのことだ。現実の法的制約という問題、土建のように労使関係上、ストライキという形態にはなじまない仲間。お互いに理解しあいながらも、しっかりと総括することの重要性は発言の通りである。
また、「団塊の世代という言葉は好みじゃない。もっといい言葉を考えろ」と言われた。団塊の世代という言葉は社会的に定着しており好みだけで変えるわけにもいかない問題でもあり、理解いただきたい。
なお、幹事会報告の全労連組織拡大強化中期計画・第1次案に対しても多くの発言があった。いずれも貴重な意見を受け止め、第2次補強方針案に反映させることにする。
京都・岩橋さんから要望された全労連オルグの配置、そのための財政措置などについては、評議員会の満場一致の確認を得てスタートしたものであり、これを変更する議論は3年後の見直しとあわせて行うことと理解いただきたい。
いくつか答弁漏れがあるかも知れないが、すでに与えられた時間がきている。発言記録をきちんと検証して、集団討議に付さなければならないのは幹事会で検討し、今後の全労連方針に生かしていくという取り扱いで了解をいただきたい。
代議員の熱心な討論に改めて感謝を申し上げ、反対意見も含め、今後とも自由な議論を積み重ねていく、その団結の重要性を訴え、そして、暑い夏、憲法、年金、消費税、人勧、最賃、中労委、国鉄闘争など、熱いたたかいをお互い力いっぱいたたかいぬく。その決意を込めて、全員一致で議案を採択いただくことをお願いして総括答弁とする。
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