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全労連第22回定期大会〜全労連議長あいさつ
全労連第22回定期大会(1日目)

第1号議案「運動方針」(案)

第1章−2年間の運動の主な到達点と課題

1.どんな情勢のもとでたたかってきたのか

 <1-1> 米・ブッシュ政権は、「世界規模のテロなど新たな脅威」に対抗するとして、いつでもどこでも先制攻撃を展開できる「常時戦時国家体制」をめざしてきた。小泉内閣はこれに積極的に加担し、日本を「海外で戦争する国」につくりかえるために、憲法改悪の本格的な策動を強めてきた。そして、06年通常国会に教育基本法改悪案や国民投票法案を上程するとともに、米軍基地の再編強化をおしすすめている。

 また、ブッシュ政権は新自由主義にもとづく市場経済万能論を各国におしつけ、世界中に貧しい国と富める国、貧しい者と富める者とのいちじるしい格差を拡大した。とりわけ日本では、小泉内閣による「構造改革」路線−大企業の利潤追求を最優先し規制緩和万能、弱肉強食の経済政策−のもとで、雇用と賃金の破壊、中小零細企業の倒産や廃業、貧困と社会的格差が急速にひろがっている。

 小泉「構造改革」と大企業の利益至上主義は、鉄道・航空機事故、アスベスト被災、耐震強度の偽装、ライブドアや村上ファンド事件、アメリカ産牛肉問題などをあいついで発生させ、国民の安全と安心を破壊してきた。多くの国民が、現在と将来に希望のもてない閉塞感がひろがり、高齢者や子どもに対する虐待、家庭基盤の崩壊、凶悪犯罪の多発、自殺の急増など、深刻な社会現象をもたらしている。

 <1-2> 労働運動に対して、政府・財界は公務員と民間労働者、現役世代と高齢者、労働者と自営業者などの対立をつくりだし、労働組合を「既得権益に執着する利己的集団」と攻撃し、分断をはかろうとしてきた。全労連は、第21回大会で確認した基本的目標−①日本の戦後史をかけた憲法闘争、②新たな試練をのりこえる組織拡大、③「21世紀初頭の目標と展望」への接近−を軸に運動を展開し反撃してきた。

 政府・財界とマスメディアが一体となった「反共・全労連シフト」のもとで、全労連運動の前進はしばしば困難を余儀なくされた。しかし単産と地方組織の力を結集し、いかなる困難にも屈せず、労働者と国民の利益を守る立場をつらぬき、すべての労働組合、あらゆる国民諸階層との共同をひろげてきた全労連運動は、労働者と国民を激励し安全、平等、平和の「もうひとつの日本」を求める新しい流れを形成しつつある。2年間の主な到達点と課題は次のように要約できる。

2.主な運動の到達点と今後の課題

 <1-3> 賃金闘争では、すべての労働組合に積極的な要求をかかげてたたかうことを呼びかけるとともに、①全労働者の賃金底上げ、②パート時間給の引き上げ、③最低賃金の改善を重点要求として追求してきた。「賃上げ春闘」の重要性を国民合意に高めたこと、パート均等待遇、最低賃金の世論化をはかったこと、公契約運動など地域からの賃金闘争を前進させたことなど、積極的な役割を果たしてきた。

 しかし、春闘で獲得した賃上げは企業利益に比較してあまりに低く、労働者の生活改善に結びつくものとは到底いえない。企業規模や産業による格差、公務員の賃金破壊、成果主義賃金の拡大、非正規・低賃金労働者の急増、生活保護世帯の増加など、新たな貧困化がすすんでいるもとで、すべての労働者の賃上げ、全国民の生活最低保障を実現する賃金闘争をさらに強化しなければならない。

 <1-4> 利益最優先を「国策」とする労働法制、商法等の改悪のもとで、大企業は企業組織を再編してリストラ「合理化」・人減らしを強行しながら、子会社や関連企業を隠れみのに責任逃れを続けてきた。全労連はこうした攻撃に反撃し、第一交通産業の組合つぶしを目的とした偽装解散を追及した自交総連佐野南海労組、光洋シーリングテクノの偽装請負を告発し直接雇用を求めたJMIU徳島支部、企業再編における親会社の責任と団交応諾義務を認めさせたJMIU高見沢電機支部、NTTによる不当な遠隔地配転の撤回を求めた通信労組のたたかいなど、貴重な前進をかちとってきた。

 雇用闘争では、「改正高年齢者雇用安定法」に抵触する厚生労働省のQ&Aなどを悪用した企業の不当な選別雇用の攻撃に対して、希望者全員の雇用継続を求めるとりくみを前進させてきた。政府と財界が一体となった企業再編やリストラ「合理化」に反撃し、雇用を守るたたかいがいっそう重要になっている。

 <1-5> 「官から民へ」「小さな政府」の名のもとに、通常国会で市場化テスト法、行革推進法が成立するなど、自民党と民主党が競い合いながら公務・公共サービスの切りすて、公務員の削減や賃下げが強行されてきた。これに対して、全労連は「もうひとつの日本闘争本部」を確立し、全国キャラバン行動、分野別シンポジウムにとりくむなど、「小さな政府」の正体を国民に明らかにする運動を推進してきた。

 小泉「構造改革」の総仕上げと位置づけられた行革推進法が成立したことで、2011年度のプライマリーバランス均衡が法的根拠をもった政策目標となり、郵政民営化とも関わる政策金融改革や特別会計制度の見直しが具体化されることになった。同時に、地方交付税の見直しや社会保障費の抑制、公共事業費、総人件費削減などの歳出削減と、消費税率の引き上げを中心とする税制改悪がすすめられることになる。「富の再配分」機能を低下させ、拡大しつつある所得格差や地域破壊の加速を当然視するこれらの施策に対して、国民的共同の運動を強めることが急務となっている。

 <1-6> 政府は、06年通常国会で医療制度の大改悪、定率減税全廃などの悪法を強行成立させた。全労連は、「社会保障“危機”突破3年闘争」を提起し、単産・地方が集中した運動の展開を呼びかけた。連続的な社会保障改悪に対して、各地の医師会など多くの医療・福祉・障害者団体も反対して運動に立ち上がり、全都道府県に確立された社会保障推進協議会を軸に、共同の運動も全国にひろがっている。

 しかし、政府・財界は少子高齢化社会がすすみ、年金・医療など社会保障給付の増大が財政破綻を招くとして、さらなる社会保障制度の解体をおしすすめようとしている。また、労働組合の職場・地域からの社会保障闘争は、まだ全組合の重点に据えられているとはいえない。社会保障改悪や増税に反対する運動を、賃金闘争や反「合理化」闘争とならぶ車の両輪として強めることが求められる。

 <1-7> 国民主権と平和・民主主義など、日本の戦後政治の土台である憲法を改悪する本格的な策動が強められ、06年通常国会には教育基本法改悪案と改憲にむけた手続きを定める国民投票法案が上程された。全労連は、日本の戦後史をかけた重大な情勢を迎えたなかで、「九条の会」の活動を職場・地域から支えるとともに、すべての都道府県に共同センターを確立して憲法闘争を推進してきた。

 国民世論を着実に「憲法9条を守れ」の方向に変えつつあること、06年通常国会で教育基本法改悪案、国民投票法案の成立を許さなかったことは、この間の運動による貴重な到達点である。しかし、政府・与党は民主党をとりこんだ改憲をたくらみ、さらに日米軍事同盟の地球規模での再編強化も強められている。緊迫した情勢に呼応し、すべての職場・地域から総決起することが求められている。

 <1-8> 新自由主義にもとづく市場経済万能論が世界にひろがり、労働者の雇用と生活、権利の破壊、格差と貧困化が進行するなかで、これに労働組合がどう対抗していくのかが問われている。全労連はこの間、第21回大会にアジア8ヵ国の代表を招いて交流するとともに、アメリカに新たに結成された「勝利のための変革」(CTW)との連携や、国際サービス従業員組合(SEIU)との連帯を発展させてきた。

 公務員労働者の労働基本権、中労委委員の任命、国鉄闘争をめぐるILO勧告がわが国の運動を激励していることが示すように、日本の労働者の権利を守る視点からも、国際的な連帯と共同がますます重要になっている。また、国際労働戦線において国際労連(WCL)と国際自由労連(ICFTU)の組織統合、新たな国際組織の創立も日程にのぼっており、全労連の積極的な対応が求められている。

 <1-9> この間、企業のリストラ「合理化」、公務員の人員削減などのもとで、全労連は組織人員の減少傾向に直面してきた。これをのりこえるために、「組織拡大推進基金」の設立、「全労連オルグ」の配置などを具体化し、組織強化・拡大に全力をあげてきた。組織の減少傾向から増勢に転ずるには至らなかったが、全労連と単産・地方組織が一体となった組織建設の追求がはじまったことは重要である。

 多くの組合員が退職期を迎える「07年問題」など、全労連の組織と運動は新たな試練に直面している。また日本の労働組合の克服すべき問題として、根強い企業内意識、男性中心の役員構成、正規労働者中心の活動スタイル、幹部請負型の運動などが指摘されている。「組織拡大強化・中期計画」(21世紀の新しい労働組合づくりをめざして)にもとづき、人間らしい労働とは程遠い無権利状態に苦しむ膨大な未組織労働者に思いを馳せ、さらに奮闘することが求められている。

第2章−大会をとりまく内外情勢の特徴

1.戦争か平和かが問われる重大情勢

 <2-1> 自民党が昨年11月の大会でうちだした新憲法草案は、前文から不戦の誓いを削り、戦力不保持、交戦権否認の9条2項を削除して「自衛軍を持つ」とするとともに、自衛軍の任務として「国際社会の平和と安全を確保するために行われる活動」への参加を明記した。改憲の最大の目的が、アメリカの戦争に参加するため自衛隊を「戦争できる軍隊」にし、日本を「戦争する国」につくりかえることにあることは明白である。

 同時に、憲法を守り平和を求める運動も全国で前進し、政府が通常国会に提出した国民投票法案は、継続審議に追い込まれた。「九条の会」が5,000を超える職場・地域、各分野にひろがり、高知県・土佐清水市など過半数の署名を達成した自治体も生まれている。かつてない重大な情勢のもとで、職場・地域、草の根からさらに国民多数派を結集する運動を前進させていくことが急務となっている。

 <2-2> 小泉内閣は、自治体と住民の反対を押しきって、アメリカと米軍基地の再編・強化計画に合意した。米軍再編の目的が、米軍と自衛隊が海外で一体となって戦争できる態勢づくりにあることは、ブッシュ政権が9条改悪に強い圧力をかけていることからも明らかである。これに対して、岩国や沖縄などの市長選結果にみられるように、全国各地で自治体ぐるみの反対運動が前進していることも特徴である。

 3兆円に達するといわれる米軍再編の費用を日本が負担することは、あまりにも異常なアメリカいいなり政治である。3兆円は定率減税の全廃(1.7兆円)、介護保険料引き上げ(5,000億円)、医療改悪(3,400億円)、たばこ税の増税(2,600億円)など、06年度予算で強行した国民負担増に匹敵する金額である。国民の血税を米軍の「殴りこみ」態勢の強化に使う暴挙を、断じて許すわけにはいかない。

 <2-3> 教育基本法改悪も改憲と一体のものであり、国家権力による教育への介入を公然とすすめ、教育の目的を一人ひとりの子どもの「人格の完成」から、国家のために役立つ人間づくりへと変質させようとしている。また、教育の目標に「国を愛する態度」を盛りこむことは、特定の政治的立場に立つ「愛国心」を教育現場におしつけ、「戦争する国」に忠誠を誓う人間を育てあげる教育を企てるものである。

 世界でも国内でも、「戦争か平和か」が問われる重大な情勢にある。常時戦時国家体制をすすめるブッシュ政権と、これに加担して日本を「戦争する国」にかえようとする策動は、ポスト小泉政権のもとでもいっそう強まるであろう。また「二大政党制」の企てと連動して、民主党をまきこんだ教育基本法改悪、国民投票法案、改憲の動きがさらに緊迫することが予測される。日本と世界の平和をまもるために、すべての職場・地域から総決起することが求められている。

2.格差と貧困を広げる新自由主義路線

 <2-4> 新自由主義にもとづく市場経済万能論、弱肉強食の競争社会をすすめる「構造改革」が財界による政治支配によってすすめられ、日本経済と国民生活の矛盾をあらゆる分野で深刻化させている。それは、「政策評価にもとづく企業献金」という政策買収のシステム化、経済財政諮問会議をはじめとする財界首脳による政策決定への直接指揮、財界ぐるみ選挙による選挙戦への介入などである。

 また、アメリカ政府は1994年から毎年、日本に年次改革要望書を提出して規制緩和と市場開放を迫っている。人材派遣の自由化、大店法の廃止、郵政民営化、医療制度改悪など、米国が要求したものが実現する異常な内政干渉のシステムがつくりあげられている。まさに、日本の財界とアメリカ政府の二人三脚によって、多国籍大企業の利潤追求を最優先にする「構造改革」がおしすすめられている。

 <2-5> 経済財政諮問会議が昨年4月にまとめた「日本21世紀ビジョン」は、「改革」を怠った場合の2030年の日本が、①人口が1千万人減り5人に1人が75歳以上の超高齢化になる、②経済が停滞・縮小し国民の暮らしが低下する、③年金、医療など社会保障給付で財政が破綻し経済危機に見舞われる、④賃金格差が固定化し社会が不安定化するとし、危機を回避するためにさらなる「構造改革」が重要だと強調している。

 しかし、「構造改革」こそが鉄道・航空機事故、耐震強度の偽装、ライブドア事件などをひきおこし、国民の安全・安心を破壊してきた。格差も、10年間で年収200万円以下の低所得層が24%増の1千万人に達し、生活保護世帯も100万世帯を超えた。小泉首相は「格差は悪いことではない」と開き直っているが、「親の経済力の差によって子どもの学力格差が広がっている」と感じる人が75%(06年5月読売)にのぼる。

 <2-6> 「構造改革」は、労働法制の改悪によって正社員からパート・派遣など非正規労働者への置き換えを促進し、この10年間に正規雇用は395万人減少、非正規雇用が593万人増加した。労働者の3人に1人、青年・女性の2人に1人は非正規雇用で、その8割近くが年収150万円以下の低賃金、年休も保障されず社会保険にも加入できない。こうしたことが格差と貧困の拡大、社会保障の支え手を破壊する原因となっている。

 正規労働者も成果主義賃金のもとで苦しめられている。成果主義賃金は、賃下げとともにサービス残業を蔓延させ、競争によるストレスが労働者の身体と心を蝕み、在職死、過労死を増やしている。労働事故・労働災害が多発し、技術の継承ができず品質の劣化も招いており、政府調査でも、成果主義賃金を「うまくいっている」と評価する企業は15.9%にすぎず、手直しを始める企業も生まれている。

 <2-7> ところが政府は、現行労働法制を解体に導く労働契約法制をたくらみ、①労働条件の一方的な切り下げに「過半数組合」や「労使委員会」を利用できる制度の導入、②解雇の金銭的解決制度の導入、③ただ働き残業の合法化をはじめとする労働時間規制の全面緩和などを準備している。こうした労働法制改悪案が、来年の通常国会に提出されようとしており、秋からのたたかい強化が重要である。

 政府は、「骨太方針2006」を「新たな挑戦10年への出発点」と位置づけ、生活保護など社会保障費の削減、地方財政の削減、公務員人件費と総定数の大幅削減など、「官から民へ」「国から地方へ」「小さな政府」をいっそう促進しようとしている。一方で年金生活者など高齢者に対する昨年からの所得税増税、今年度からの住民税増税、労働者に対する定率減税の全廃、社会保障費とのリンクを口実とした消費税率の引き上げなど、新たな国民負担増を強行しようとしている。

3.アメリカ支配から脱却をめざす世界の流れ

 <2-8> 新自由主義、市場経済万能論、アメリカの覇権主義的支配からの脱却をめざす新たな政治の流れが世界各国にひろがっている。ラテンアメリカでは、ベネズエラ(98年)、ブラジル(02年)、アルゼンチン(03年)、パラグアイ(03年)、ウルグアイ(04年)、ボリビア(05年)とあいついで反米政権が誕生している。長期にわたってアメリカの「裏庭」と呼ばれてきたこの地域で起こっている独立、平和、社会進歩の波は、21世紀の世界の前進にかかわる大きな意義をもつものである。

 アジアでも、アメリカの軍事的・経済的支配に反対する声がひろがり、「東アジア平和共同体」への動きが加速され、昨年12月にマレーシアで開催されたASEAN首脳会議では「地域の共同体の形成」の方向が合意された。また、紛争の平和解決、武力行使の禁止などをうたって1976年に結ばれたTAC(東南アジア友好協力条約)は、中国、韓国、日本、インド、ロシア、オーストラリアなどにひろがり、世界人口の53%が参加し東アジアの平和共同体を展望するとりくみとなって発展している。

 <2-9> ヨーロッパでも、イタリアでは2001年に発足したベルルスコーニ政権が、解雇規制の緩和や期限付き雇用など不安定雇用の活用、相続税の廃止など富裕層への減税などの市場経済万能路線の政策をすすめ、外交では米国との同盟が必要不可欠との立場から、一貫してイラク戦争を支持し、米英に次ぐ規模の軍隊をイラクに派兵してきた。しかし春の総選挙では、正規雇用中心の雇用政策への切り替え、貧困層支援の充実、イラクからの軍撤退を求める中道・左派勢力が勝利した。

 フランスでは、青年の解雇を容易にする「初採用契約」(CPE)に反対する労働者、学生、国民の共同行動がひろがり、政府の計画を撤回させた。アメリカでも、格差社会の拡大やイラク戦争に反対する労働組合が新たなナショナルセンター・「勝利のための変革」(CTW)を結成した。世界の歴史は、間違いなく労働者・国民の力で平和と社会進歩への流れを強めている。歴史の流れに逆行し、覇権主義的支配をねらうブッシュ政権やアメリカいいなりで大企業の利益を最優先し、国民に貧困と格差を押しつけ、弱肉強食の社会をつくりだす自民党政治に未来はない。

第3章−2年間の全労連運動の基本方向

1.「もうひとつの日本」を求める全労連の3つのキーワード

 <3-1> 8年連続3万人を上回る自殺者、100万世帯を突破した生活保護世帯、300万人を超える完全失業者、極端な低賃金と無権利に苦しむ若者や非正規労働者、「勝ち組・負け組」を当然視する風潮、高齢者や子どもへの虐待、凶悪犯罪の増加など、小泉政治が国民の不安と閉塞感をひろげている。昨年総選挙における小泉「圧勝劇」が自民党政治の一時的延命にすぎず、危機とゆきづまりが深刻な段階にあることの証である。

 しかし、極端な大企業中心、アメリカいいなり政治の矛盾はいつまでも国民を欺くことはできない。「改革」の虚像がひとたび明らかになれば、必ず政治の激動がはじまる。全労連は、①「戦争しない、参加しない日本」をつらぬくこと、②働くルールを確立し、格差と貧困の是正をはかること、③持続可能な地域社会の実現することを3つのキーワードに、「もうひとつの日本」を求める運動にとりくむ。

 <3-2> 「もうひとつの日本」を求める世論を結集するには、ポスト小泉と民主党に憲法改悪や「小さな政府」を競い合わせるマスメディア策謀をのりこえ、国民が毎日の仕事とくらしのなかで直面する耐えがたい事実に依拠して、改革競争の嘘とごまかしを暴く必要がある。わかりやすい政策提言を行ない、あらゆる個人・団体、国民諸階層との対話・共同による運動を展開する。

(1) 「戦争しない・参加しない日本」をつらぬく

 <3-3> 「戦争か平和か」が世界のきわだった対立軸となっている。とりわけ日本では、常時戦時国家体制づくりをめざすアメリカに追随する自民党政治のもとで、教育基本法の改悪、国民投票法の制定、共謀罪の新設、米軍基地の再編強化などがすすめられている。「中国、北朝鮮の脅威」を口実に、「過去の日本の戦争は正しかった」と歴史を逆戻りさせようとするさまざまなキャンペーンも繰り返されている。

 通常国会で教育基本法改悪、国民投票法案の強行を阻止したことは重要な到達点である。しかし二大政党制がすすむなかで、当面する秋の臨時国会での成立の危険性も高く、文字通り日本の戦後史をかけた正念場のたたかいとなる。「もうひとつの日本」を求める全労連としての第一のキーワードに、憲法・教育基本法の改悪を許さず、国民投票法案を廃案に追い込み、「戦争しない・参加しない日本」をつらぬくことを位置づける。

 <3-4> 憲法闘争の視点からも、07年に行なわれる統一地方選、参院選の2つの政治戦が重要な試金石となる。憲法改悪や「小さな政府」を競い合う勢力を後退させ、憲法を職場とくらしに生かす勢力の躍進をめざす。全労連の選挙闘争方針をいち早く提起し、全組合員の活発な政治論議をまきおこしながら、職場・地域から学習、宣伝、対話、全国的な交流・激励を強めてたたかう。

(2) 働くルールを確立し、格差と貧困を是正する

 <3-5> 今後、格差と貧困の問題が労働組合や市民運動、国会論戦や選挙戦の最大の対立軸となる。「競争や格差は必要悪だ」だとマスメディアがもてはやす風潮は、国民のきびしい批判にさらされつつある。長期失業者や極端な低賃金労働者、生活保護世帯、就学援助者、ホームレスの増加など、政府の政策によって政治的につくりだされた社会的格差と貧困の克服こそ、今日の日本社会の焦点である。

 とりわけ日本では、競争による「敗者」が人間関係や地域社会から疎外される深刻な問題をひきおこしており、政府・財界の政策の転換をせまるとともに、職場・地域からの社会的な連帯活動が求められている。「もうひとつの日本」を求める全労連としての第二のキーワードに、21世紀初頭の目標と展望で示した「人間らしく働くルールの確立」「全国民の生活最低保障の確立」を軸とした格差と貧困の是正を位置づける。

 <3-6> そのため、「恒常的政策委員会」を確立し、「21世紀初頭の目標と展望」のさらなる具体化をはかり、政府や財界に要求・政策を提言し、その実行を求める運動を継続的に展開する。全労連のすべての単産と地方組織が、人間らしく働くルールの確立、格差と貧困の是正を2年間の共通する重点課題にすえ、政府・自治体・企業などに向けた集中的な運動を推進していく。

(3) 持続可能な地域社会の実現をめざす

 <3-7> 「国から地方へ」が叫ばれる一方で、高齢化がすすんだ町や地方都市から潮が引くように人がいなくなり、地域社会の崩壊がすすんでいる。政府の「構造改革」は、住民の最も身近な社会単位である地域を破壊し、格差をひろげ、さらに大企業利益を優先する道州制に組みかえようとしている。雇用、くらし、福祉、教育に対する国の責任が放棄され、自治体までが住民から遠い存在になろうとしている。

 同時に、政府が国の役割を外交、防衛、マクロ経済に限定しようとしているもとで、地方と地域が国民の生活、雇用、社会保障、教育などをめぐる主戦場となり、新しい社会連帯、住民を主人公とする運動の発信基地となる。「もうひとつの日本」を求める全労連としての第三のキーワードに、大企業・ゼネコン優先政治、小泉「構造改革」によって破壊された地方財政の再生、地域社会の活性化を位置づける。

 <3-8> 「もうひとつの日本」をめざす全労連運動に呼応し、地方・地域労連が主体となって「こんな地域と日本をつくりたい」という要求政策をかかげ、住民が主人公の運動方向を追求していく。各地方・地域の要求政策と運動を全国的に交流、激励しながら、政府と財界がねらう「この国のかたち」の再編成にストップをかけ、均衡ある地方の発展、持続可能な地域社会をめざす。

2.労働組合の壮大な共同、組織拡大への挑戦

 <3-9> 政府と財界が一体となった系統的・全面的な支配体制がしかれる日本社会において、国民の多数派である労働者の団結とたたかいの強化なしに、労働者・国民の要求実現も、憲法改悪阻止の展望もきりひらくことは困難である。労働運動の前進は、あらゆる社会的闘争の土台であり、「200万全労連」の達成は日本社会を改革し、「もうひとつの日本」をつくるうえで不可欠の課題である。

 しかし、21世紀に入ってから全労連の組織人員は減少傾向にあり、また団塊世代が勇退の時期を迎えている。運動と組織をどう発展させるのか、まさに重大な試練であり、不退転の決意で組織建設に挑戦しなければならない。9年間で90万人の組合員を増やしたSEIUの教訓にも学び、「組織拡大こそ最大の要求闘争」を合言葉に、すべての単産・地方組織が「組織拡大強化・中期計画」の具体化をはかる。

 <3-10> 労働者の急速な状態悪化が、労働者の要求を切実なものにし、労働組合に対する新たな期待が高まっている。各単産・地方組織ごとに、職場・産業・地域のすべての労働者・労働組合を視野に入れた「もうひとつの職場」「もうひとつの業界」「もうひとつの地方・地域」をめざす要求と政策をつくり、全国でダイナミックな対話と共同をひろげ、組合加入と産別・全労連結集を呼びかける。

 <3-11> 労働戦線再編から3年後に20年を迎える。日本の労働運動の活性化をはかるためにも、また結成以来の重要課題である国鉄闘争の勝利解決、中労委委員の公正任命を実現するうえでも、労働組合の壮大な共同がますます重要になっている。さらにグローバル化と国境を越えた経済共同体の動きが世界にひろがり、労働組合の新たな国際組織の創立が具体化されている。こうした動きに積極的に対応し、国際的連帯を強めルールなき資本主義から脱却することを追求していく。

第4章−重点課題と具体的な運動の展開

1.賃金闘争の重点課題とたたかい

 <4-1> 政府・財界は、労働者の統一闘争である春闘を解体して産業・企業間の賃金格差を拡大し、成果主義や有期雇用をテコに個別労働者の格差も拡大しようとしている。また、公務員賃金の破壊や産別最賃廃止、賃金の最低基準を引き下げ、労働法制改悪などで「賃下げ自由」の社会をつくろうとしている。全労連は、こうした政府・財界の賃金破壊に真っ向からたたかいを挑み、大企業の社会的責任の追及、膨大な利益の社会的還元を求め、職場・産別・地域総ぐるみの賃金闘争を展開する。

 全労連の賃金闘争の軸として、①積極的な賃上げの獲得とすべての労働者の賃金底上げ、②実効ある最低賃金法の改正と地域、企業内、産別、全国一律最低賃金の改善・確立、③男女差別賃金の是正、非正規労働者の均等待遇、④地域からの公契約運動、⑤公務員賃金破壊阻止、⑥成果主義賃金打破・生計費原則の確立などを据え、単産・地方組織が一体となった運動にとりくむ。

(1) べア獲得、反転攻勢の賃上げ闘争

 <4-2> すべての職場における要求討議と要求提出、スト権確立、交渉強化など、労働組合の基本に立ちかえったとりくみを着実にすすめることを重視する。組合員の生活と労働の実態に根ざした「一歩も譲らない」要求を練りあげ、必ず前進を勝ち取る意気高いたたかいを追求する。引き続き、集計登録組合による経年的な回答集計とともに、常に全組合の春闘進捗状況を明らかにして春闘を激励する。

 財界・政府あげての賃金抑制シフトを打ち破るには、職場闘争にくわえて産業別・地域の統一闘争に多くの仲間が積極的に参加し、たたかう労働者の姿を積極的に社会に示すことが不可欠である。春闘では、産別統一闘争の強化と地域からの相互激励・交流、ストライキをふくむ全国統一行動の設定など、節目における「力の集中」を目的・意識的に追求する統一行動を配置する。

(2) 非正規の賃上げ、職場・地域の賃金闘争の結合

 <4-3> 格差と貧困化がすすむなかで、組織労働者の条件改善に視野をとどめていたのでは限界があり、非正規労働者の賃金改善を正規の賃金要求と同列においた要求闘争を組み立てる。春闘の要求づくりでは、職場や地域の未組織労働者、とりわけパートや臨時、派遣、請負など非正規の低賃金労働者に声をかけ、実態をつかみ、要求をくみ上げて組織し、ともに賃金闘争をたたかうことを呼びかける。

 春闘では、①非正規をふくむ職場のすべての労働者の賃上げにとりくむ、②月額・日額・時間額の企業内最賃協定の締結を追求する。③職場の賃上げ結果や最賃協定を地域にもちより、地域相場の引き上げに活用する、④条件のある産別・地域から法定産別最賃の確立にとりくむ、⑤地域の賃金相場を引き上げる運動の一環として、自治体非正規の賃金引上げのとりくみに着手する。

(3) 実効ある最賃法の改正、全国一律最賃制の確立

 <4-4> 06年国会にむけて最低賃金法の改正が審議されており、良識ある学識者に法制度改善の理解がひろがる一方で、使用者は目先のコストに目を奪われ改正に反対している。改正最賃法に全国一律最賃制を明記させ、ナショナル・ミニマムの基軸たりうる全国一律最賃制をつくるために力を集中する。「最賃大綱」を補強するとともに、最賃法改正請願署名を軸に世論喚起をはかる運動を展開する。

 また、国民生活の安全網の崩壊、貧困化がすすむなかで、国民生活の最低限度を国が制度として保障するナショナル・ミニマムの確立が緊急課題となっている。最低生計費を保障する全国一律最低賃金制の確立や生活保護制度の改善、下請け単価改善や農産物価格最低保障の確立、最低保障年金制度の創設運動などと結合し、労働者、国民、経営者をふくむ国民的共同の運動を組織する。

 <4-5> 地域最賃引き上げ、企業内最賃協定締結、産別最賃確立、全国一律最賃制確立を結合して、「最賃生活体験運動」「最低生計費探求運動」「家計実態証言運動」「1,000自治体決議・100万人署名」にとりくむ。中央・地方の最賃審議会委員の公正任命にむけて、審議会の公開や意見陳述、労働局交渉などを展開する。中立や連合加盟をふくむ労働組合間の合意と共同を追求する。

(4) 公契約運動と公務員賃金闘争、賃下げ循環の阻止

 <4-6>「官から民へ」の名のもとに、競争入札、指定管理者制度、市場化テストなどの手法による公務・公共サービスの切りすてや、官公需関連事業で働く労働者の賃下げが強行されている。自治体発の賃下げが地域にひろがることをくい止め、自治体の社会的責任を問う「公契約における公正な賃金・労働条件確保」の運動を、最賃・均等待遇のとりくみと結合して全国各地で展開する。

 地方・地域組織を軸に、産別の単組が参加する推進体制をつくり、自治体における雇用実態や入札調査を実施する。自治体との懇談・要請では、問題意識の共有、行政指導の工夫、公契約条例の検討など、状況に応じた目標を設定し前進させる。学習会・シンポジウム、自治体意見書採択、議員要請などで問題意識を市民や議員にひろげ、成果を上積みできるよう年度ごとの達成計画を策定して運動を組み立てる。

 <4-7> 政府は公務員賃金について、地域手当、能力・評価制度に加え官民の比較方法を見直し、地場中小零細企業の賃金に連動させ地域格差を拡大しようとしている。また、自治体の財政状況にリンクした賃下げが「首長判断」で行なわれ、緊急的な措置にとどまらず制度化されかねない情勢にある。民間の賃金相場にも影響をおよぼし、地域経済にも打撃となる公務員賃金への攻撃に対し、住民合意の賃金闘争を基本方向に、最低賃金や公契約の課題と結合した運動を推進する。

(5) 成果主義賃金の導入・拡大反対、生計費原則の確立

 <4-8> 成果主義賃金は、労働組合の連帯破壊と労働者の個別支配で総額人件費を削減するとともに、職場の人間関係を破壊し不良品の多発など企業の健全な発展をも阻害している。民間職場では見直しに踏みきる企業もあらわれる一方で、公務職場ではいっそう拡大の動きが強まり、北九州市では生活保護申請書を窓口で渡さず餓死・孤独死事件をひきおこすなど、住民の権利侵害にもつながっている。

 成果主義賃金の導入に反対するとともに、すでに導入されている職場では、その弊害を具体的に明らかにする実態調査や、一方的・恣意的な査定を許さない査定基準・方法・結果の公開、個別労働者の苦情処理などにとりくみ見直しを迫る。生計費を原則とした賃金の重要性について、あらためて学習・意思統一をはかり、職場から生活と労働の実態にねざした賃金闘争を強化する。

2.働くルールの確立、雇用を守るたたかい

(1) CSRの確立、格差是正と雇用の拡大

 <4-9> 政府が大企業の横暴を支援するもとで、一方的な企業再編・買収・合併、解雇・不当配転、労働者の権利破壊が横行し、企業のモラルハザード、重大事故、労働災害の多発が企業の生産活動をも阻害している。政府・大企業に対するリストラ政策の転換を求める運動と、職場からの「合理化」反対闘争を結合してたたかう。争議をかかえる企業の状況を、国際的な格付け会社に「告発」する運動などにとりくむ。

 「企業通信簿」を集約・分析し、中小企業、自営業者、農民、学者・研究者などによるネットワークを確立して推進する。日本経団連、経済同友会、旧「8社懇」企業との交渉・協議を追求する。NTT闘争、国鉄闘争、トヨタ総行動も大企業の社会的責任を追及する視点で位置づけ闘争強化をはかる。

 <4-10> 依然として深刻な雇用状況が続くもとで、政府に雇用・失業者対策の拡充を求める政策闘争を引き続き強化する。職場の雇用拡大と技術の継承、職業訓練の確立を求める運動と、地域からの雇用を守る運動を結合してとりくむ。雇用延長で不当な選別基準が押しつけられている職場では、希望者全員の公正な雇用延長を要求してねばり強くたたかうとともに、政府・地方労働局への要請行動を展開する。

 <4-11> 格差是正、均等待遇が労働組合の重要な今日的課題となっており、青年や女性、非正規雇用労働者が共同し、財界や政府に迫る運動を組織する。政府や財界への要求と交渉、均等待遇実現、パート労働法の改正、社会的格差の是正を求める国民共同の運動を追求する。06秋闘で5年ぶりの「パート・臨時労働者実態調査」を実施し、報告書を発行して社会的アピールをはかる。

(2) 労働法制改悪から働くルール確立への転換

 <4-12> 政府が準備している「ただ働き残業」の合法化、労働時間規制の全面緩和をねらう労基法の改悪や新たな労働契約法制など、労働法制の改悪を阻止する。職場・地域の学習を土台に、労働政策審議会への意見集中、厚労省前行動などを展開し、法案化作業を中止させる運動を重視する。06年秋に幅広い団体と共同した決起集会を計画し、法案が提出される07年国会を視野に入れた運動を推進する。

 政府がすすめてきた連続的な労働諸法制の改悪から、解雇規制法の制定、全国一律最低賃金制度の確立、労働時間の短縮、ILO条約の批准と実行など、人間らしく働くルール確立の方向への政策転換を求める運動にとりくむ。そのための全労連の政策要求を対置し、幅広い国民世論の結集を追求する。また、労働法制の改悪内容を職場に持ち込ませない運動、職場からの労働時間短縮闘争を強化する。

 <4-13> 過労死・過労自殺を防ぎ、人間らしく働ける職場環境実現のために、労働時間の短縮、サービス残業・過労死の根絶をめざす。「有休100%取得」のための必要な増員要求を具体化するとともに、労働安全衛生委員会活動やメンタルヘルス対策の強化、職場点検活動や心の健康アンケートなどにとりくむ。政府・国会に向けて、労働安全衛生法の改正やILO155号条約の批准を求める運動を推進する。

 <4-14> 労働時間を短縮し、生活できる賃金、安定した雇用など実効ある少子化対策を求める。改正均等法を職場に生かし、妊娠・出産に関わる不利益取り扱いの禁止、母性保護拡充、セクハラ根絶、男女賃金格差や昇進・昇格差別の是正をめざす。次世代育成支援対策推進法の300人以下事業所での策定、男女ともに仕事と家庭を両立できる施策、育児介護休業制度の拡充を要求する。公的保育制度の拡充、児童手当の増額など、保育・社会保障制度の拡充を求める運動にとりくむ。

(3) もうひとつの日本、地域経済活性化のとりくみ

 <4-15> ポスト・小泉政権が、弱肉強食の格差社会をひろげる「小さな政府」「構造改革」路線を継承することが必至である。「骨太方針2006」についての地方協ごとの学習・意思統一集会の開催、「DVD・もうひとつの日本を!」の普及、分野・テーマ別シンポジウム、「小さな政府」告発レポート、「全国網の目キャラバン行動」などにとりくむ。闘争本部と連携して「有識者会議」の結成を追求する。

 日本の政治・経済を大企業中心から中小企業の活性化に経済政策を転換し、内需を拡大し地域経済の振興をはかることを求める。中央・地方で中小企業団体や自治体と共同し、大型店などの民主的規制、大企業優遇の官公需・公共事業の見直し、中小下請企業に対する不公正取引の是正と公正取引ルールの確立、地域経済振興と中小企業・国民本位の金融改革などの実現をめざす。

(4) 労働基本権の確立、国鉄闘争、中労委の民主化

 <4-16> 公務員の労動基本権問題について、行革推進法にもとづく政労協議が開始されるなど、新たな局面を迎えている。ILO勧告の履行を求める「全労連見解」にもとづき、ただちに政労協議の場を設定するよう政府に要求する。同時に、すべての労働組合組織が統一的に対応できるよう努める。

 公務員の政治活動について、ビラ配布を口実にした国家公務員の政治弾圧が連続し、地方公務員法の改悪も狙われている。6月の国公法弾圧事件不当判決をふまえ、労働基本権問題と対をなす公務員の政治活動の自由をかちとる運動を国民的にすすめるため、シンポジウム(学習会)などを計画する。

 <4-17> 国鉄闘争の早期解決に向け、建交労・国労を軸とした団体間共闘の強化、解雇された当事者の総団結を土台に、大衆闘争の前進、解決を求める世論の高揚をはかり、政府に解決交渉のテーブルづくりを迫る。06年秋に裁判の判決を迎えるNTT闘争について、あらためて単産・地方組織の支援を強化し勝利をめざす。「司法総行動」や「裁判闘争交流集会」を自由法曹団、国民救援会と共同で実施する。

 <4-18> 第29期中労委労働者委員の公正任命をめざして、特定独立行政法人等担当に堀口士郎氏(国公労連委員長)を、民間担当候補に國分武氏(全労連副議長・建交労) と今井一雄氏(前MIC議長・出版労連顧問)を推薦し、任命実現の運動に全力をあげる。また、第28期の不公正任命取消し訴訟の勝利判決をめざす。08年に改選される労働審判員の拡大をめざし、対策を強化していく。

3.社会保障改悪・増税反対など国民共同の運動

 <4-19> 政府が閣議決定した「骨太の方針2006」は、歳出「改革」として失業給付の国庫負担の廃止をふくむ見直し、生活保護の母子加算の廃止をふくめた見直し、介護の公的給付内容や範囲、介護報酬のあり方の見直しなどの社会保障改悪を盛り込んだ。同時に、社会保障財源として消費税を明確に位置づけることを「検討する」とした歳入「改革」を盛り込み、消費税増税に道をひらこうとしている。

 最低生活費非課税という原則の具体化である給与所得控除や人的控除が廃止・縮小され、労働者の生活がますます破壊されている。国家的収奪から労働者・国民の生活と権利を守り、全国民の生活最低保障(ナショナル・ミニマム)を確立するたたかいとして、すべての単産・地方組織が社会保障闘争、増税反対闘争を賃金・労働条件と車の両輪に位置づけてたたかいを強化する。

(1) 年金、医療、福祉など社会保障の拡充

 <4-20> 引き続き、「21世紀初頭の目標と展望」「社会保障“危機”突破闘争方針」を具体化する社会保障闘争をすすめる。国民生活の全分野から、政府がねらう「社会保障制度一体改革」の影響・実態を告発するとともに、政府や自治体に対する共同の運動を構築する。全組合員参加の社会保障闘争の推進をめざし、職場を基礎にした総学習運動にとりくみ、そのため全労連として学習資材の作成を行なう。

 <4-21> 医療、年金、介護、子育て支援などの社会保障闘争を総合的に展開する。当面する重点的な運動課題に、①「社会保障一体改革」についての学習・シンポジウム、その内容を国民的に明らかにする宣伝・国民署名、自治体決議・職場決議運動、②被用者年金一元化への対応と最低保障年金制度確立の運動、③生活保護制度の改悪に反対する運動、高齢者・障害者への支援運動などを重視する。

 医療改悪をめぐる地方公聴会では、与党推薦の公述人からも「療養病床の削減は地域医療を崩壊させる」と異論が出ている。高齢者・国民に負担増を強い差別医療を拡大する医療改悪の実質化を許さず、産科・小児科、公立病院など医療提供体制の拡充、地域医療を守る運動にとりくむ。

(2) 消費税など庶民大増税に反対する運動

 <4-22> 消費税導入以来の15年間の税収148兆円は、同じ期間の法人税減税145兆円の穴埋めに消えたように、消費税は大企業の負担を労働者、国民、中小企業に転嫁するものであった。しかし政府は、社会保障の財源などを口実に消費税の目的税化や増税をすすめようとしている。職場・地域から全組合員参加の学習と討論、意思統一を土台に、消費税廃止各界連に結集して運動を推進する。

 定率減税の全廃、給与所得控除の見直しなど、ここ数年の税制改悪の影響が2007年以降より顕在化する。所得格差の拡大のもとで、不公平税制の是正、勤労国民に対する減税を求めるたたかいは「富の再配分」問題でもあり、あいつぐ増税に対してストライキをふくむ闘争体制を確立してたたかう。引き続き国民大運動、中央社保協、消費税廃止各界連による共同デスクを設置する。

(3) 公害、アスベスト被災、食糧を守る運動

 <4-23> 「全国災対連」とともに、被災者生活再建支援法の抜本改善と防災力の強化を求める運動を全国で推進する。災害時対策の拡充のためにも、必要な消防職員や気象庁職員の増員を求める。また、国民保護法が施行されたことにともなって、危機管理の名のもとに自衛隊の管理下に入る住民訓練などが頻発している。地域から、住民の自主的な行動を規制しないことを要求する運動にとりくむ。

 「いのちと健康を守る全国センター」と協力し、アスベスト被災の完全救済を求める「健康被害対策全国交流集会」「全国いっせいアスベスト110番」などにとりくむ。また、諸団体と共同してCO2の測定運動や公害裁判早期解決の運動を支援する。諫早湾の埋め立て被害の救済を求める裁判、じん肺裁判などの支援にとりくむ。安心・安全の食糧と農業を守る食健連運動を強化する。

4.憲法改悪を阻止し、平和を守るたたかい

(1) 憲法改悪反対、米軍基地撤去のたたかい

 <4-24> 今後2年間は、「戦争か平和か」が世界情勢の重要な対立軸のひとつとなる。とりわけ日本では、「戦争しない国か」「戦争する国か」をめぐる戦後史をかけたつばぜりあいが展開される。全労連は、日本をふたたび「戦争する国」につくりかえようとする改憲策動を阻止し、憲法を生かした平和・民主の日本を築くために、憲法闘争をこの2年間のすべての課題に優先する運動として展開する。

 職場、地域、分野から「九条の会」のアピールに応えた幅広い共同を広げる。同時に、07年7月までに、すべての職場での「九条の会」などの職場組織、全自治体をカバーする共同センターの確立を追求し、過半数署名の達成をめざす。広範な労働組合への要請行動にとりくみ、憲法改悪に反対する共同を追求する。憲法闘争の担い手づくりを重視し、引き続き勤通大憲法特別コースの受講を推進する。

 <4-25> 全国に広がる多様な共同と、全労連・各単産・民主団体による「教育基本法改悪を許さない各界連絡会」のとりくみを強め、教育基本法改悪法案を廃案に追い込む。改悪法案の強行成立がねらわれる秋の臨時国会では、引き続き職場・地域から宣伝、署名、対話、地元選出国会議員への要請などにとりくみながら、情勢に機敏に対応して連続的な傍聴・要請行動、節目での大規模な中央行動を配置する。

 憲法改悪の手続きを定める国民投票法案や、共謀罪の新設法案も継続審議となっており、秋の臨時国会で緊迫した状況を迎える。憲法改悪、教育基本法改悪と一体の運動として展開する。

 <4-26> 改憲策動と連動して、米軍基地の再編強化と自衛隊との一体化がすすめられ、当該の自治体、住民の激しい反発を引き起こしている。米軍基地の再編強化や再編にともなう3兆円負担に反対し、全国の運動を交流・連帯して発展させる。イラクからの占領軍の完全撤退、核兵器の廃絶を求める運動など、世界各国の人々と連帯して平和と民主主義を守るたたかいを前進させる。

(2) 政治の民主的転換をめざすとりくみ

 <4-27> 2007年に行なわれる2つの全国的政治戦、「参議院選挙」と「統一地方選挙」は、労働者の生活と権利、社会保障や税制はもとより、憲法闘争にも重大な影響をおよぼす選挙である。統一地方選挙における首長選挙では、住民のくらしと福祉を守り、革新・民主の自治体をめざす民主勢力との共同の候補者を積極的に擁立してたたかう。地方議会議員選挙でも革新・民主勢力の前進をめざす。

 参議院選挙では、全労連がかかげる切実な諸要求の実現、憲法をくらしに生かす政治の実現をめざす。組合員の政党支持、政治活動の自由を尊重しつつ、全労連としての「政党選択基準」を全組合員に示し、要求前進、憲法を守る国会勢力の前進をめざす。全労連の選挙闘争方針をいちはやく提起し、職場・地域、都道府県での選挙学習、全国的交流を強める。職場・地域から革新懇運動をひろげ、政治の民主的転換を求める国民世論の喚起、運動の前進をはかる。

5.世界の労働組合との連帯・共同のとりくみ

(1) 全労連の国際活動の新たな発展と飛躍

 <4-28> 全労連結成大会で採択した行動綱領は、当面いかなる国際労働組合にも加盟せず、「万国の労働者、団結せよ」の立場で、世界の労働者との国際連帯を推進するとした。この基本方針にもとづいて、アジア諸国の労組をはじめ世界20数ヵ国との二国間友好・交流を前進させてきた。同時に、ILO、OECDなどの国際機関や多国籍企業への対応、国際労働運動全体への貢献という点で不十分さを残してきた。

 多国籍企業の世界戦略である新自由主義的グロ−バル化と「構造改革」路線のもとで、労働者の状態悪化が世界的に深刻化している。労働組合の国際連帯による反撃を強めるうえで、国際組織の役割がますます重要になっており、国際自由労連(1CFTU)と国際労連(WCL)の解散、それにともなう新たな国際組織の結成が今年11月に準備されている。新たな国際組織は「貧困、搾取、抑圧、不平等と闘う。グローバル経済に際して民主的に統治する」ことをうちだし、中立組織にも参加を呼びかけている。

 <4-29> 全労連は、「資本からの独立」「政党からの独立」「共通の要求での行動の統一」の三原則や、平和・対等平等・内部不干渉の基本方針を堅持して国際活動をすすめる。同時に、日本と世界の労働者の基本的権利と利益の擁護、平和・民主主義の発展に貢献するとともに、国際的にも異常な日本政府による不当な全労連の選別・排除を克服する視点から、新たな国際組織の結成に積極的に対応する。

 その立場から、①全労連の国際連帯活動の重要性と国際組織の役割についての議論を深め、②新国際組織への加盟によって全労連の運動と組織がどう前進・変化するかを明らかにし、③新たな国際組織への加盟問題について検討を開始する。また、新国際組織の結成大会に傍聴を派遣する。

(2) 国際連帯の活動と友好組織との交流促進

 <4-30> 労働者の生活改善と権利擁護の前進のために、ILO条約・勧告の内容を学び、積極的に職場で活用するとりくみを強める。ILO条約・勧告の批准と国内での全面的な履行を求め、政府や経営者団体に働きかける。経営者(団体)に対して、国際労働基準の遵守、CSR確立などを求め働きかける。

 <4-31> 引き続き、中華全国総工会、ベトナム労働総同盟との定期交流をはじめ、アジアを軸に世界の友好組織との二国間交流をすすめる。日本、アメリカ、カナダ、メキシコの4ヵ国による「公務国際交流会議」の開催、世界社会フォーラムなどの国際連帯活動を促進していく。全労連定期大会や重要な闘争、原水爆禁止世界大会などにあたって、各国の労働組合、国際組織からの参加を呼びかける。

 <4-32> 外国人労働者の実態と要求を正確に掌握し、全労連の要求政策の実現をめざして政府や経済団体などとの交渉・懇談を追求する。また、自由貿易協定(FAT)や経済協力協定(EPA)に対する全労連政策を明確にする。国際労働運動について情報収集をはかるとともに、加盟組織への情報提供、全労連の国際方針についての意思統一のために「国際交流会議」を開催する。

第5章−労働組合の共同と組織拡大・強化

1.総対話・共同と「組織拡大強化・中期計画」の推進

 <5-1> すべての労働組合との総対話、一致する要求にもとづく共同の推進を全労連の基本姿勢としてつらぬく。春闘共闘に参加する単産との連携をはじめ、純中立労組懇やMIC、陸海空港湾20労組などとの共同をいっそう発展させ、労働者要求の前進、国民生活擁護、憲法改悪阻止の運動の前進をはかる。また、連合、連合加盟組合との一致する要求での共同を、中央・地方で積極的に追求していく。

 また、全労連として類似産業の「単産合同」の方向について検討を開始するとともに、それに向けた単産間の要求闘争での共同をすすめる。組織拡大では、「組織拡大強化・中期計画」にそってすべての単産・地方組織が目標と推進体制を確立し、秋と春に「組織拡大月間」を設定するなど、全労連と単産・地方組織が一体となった集中的なとりくみを展開する。全労連オルグを先頭にした「総がかり作戦」を引き続き設定する。

 <5-2> 単産は、中期計画が拡大目標に設定した「現勢力の50%」にもとづき、2008年までに20%を達成する目標を設定する。目標の設定にあたっては、①全労連加盟単産と友好関係にある中立組合の結集、②産別空白県における産別加盟組織の結成、③関連する企業や業種の未組織労働者の組織化対策を明確に設定する。また、すべての職場組織の過半数以上の組織化を基本に、企業内未加入者の組織化を促進する。

 拡大運動の推進にあたっては、共済など実利実益との結合を重視し、共済への加入とセットで拡大を追求するスタイルを徹底する。宣伝も、対象を明確にした要求政策で系統的に行ない、産別の統一行動を定期的に実施する。組織拡大のためのセクションを設置し、毎月の機関会議で意思統一をはかる。

 <5-3> 地方組織は、単独加盟している35万人を08年までに48万人にする目標を基準に、各地方の目標を明確にする。中立単産の地方・地域における状況の分析を行ない、全労連と連携して加入を促進する。

 すべての地方で、「常設労働相談センター」「ローカルユニオン」「地方共済会」の確立を早急に達成する。とりわけ、ローカルユニオンの確立と拡大を重視し、地方・地域ごとに拡大統一行動などにとりくむ。07年春にローカルユニオン交流集会を開催し、これと連動して、地方・地域組織を対象とした事務局員研修会を実施する。06年秋にブロック別オルグ養成講座を開催する。

2.非正規労働者などの本格的な組織化

 <5-4> 非正規労働者の組織化を本格的に推進することをめざし、「全労連非正規労働者部会」を設置する。部会のなかに、これまで活動してきた「パート臨時労組連絡会」「ヘルパーネット」とともに、新たに「派遣・請負労働者連絡会」を設け、専従者の配置、一般会計による財政措置の検討を行なう。可能性のある地方・地域から「パート・臨時労組連絡会」や「ヘルパーネット」を確立していく。

 非正規で働く仲間の組織化、運動の全国的な経験と教訓を交流し、相互激励をはかるために、①「ヘルパー交流会」(06年秋)②「委託・請負労働者対策会議」(06年秋)③「パート・臨時・派遣など非正規で働く仲間の交流集会」(07年春)④「外国人労働者対策会議」(07年春)を計画する。また、非正規労働者の実態と意識を掌握するために、06年秋に「実態アンケート調査」にとりくむ。

 <5-5> 全国各地で、他の青年組織との共同やローカルユニオンの拡大強化と連動して、「青年ユニオン」をたちあげる。高年齢者再雇用制度が実施されたもとで、引き続き組合員の権利を継続できるように規約の整備をはかる。年金者組合や各単産の退職者組織の拡大強化を推進する。

3.ナショナルセンターとしての機能強化

 <5-6> 労働組合の「07年問題」を目前に控え、全労連運動の継承発展、次代をになう幹部育成をめざし、全労連としての教育・学習活動の抜本的強化を追求する。そのための「全労連教育大綱」を、07年1月に開催される第40回評議員会に提案するとともに、07年中に幹部教育を内容とする「全労連セミナー」を開催する。

 <5-7> 3年間を期間として執行している「組織拡大推進基金」の最終年度にあたり、「特別会費」および「1億円カンパ」の100%納入をはかる。組織拡大・強化をめざす07年度以降の財政処置については、幹事会のもとに「組織財政検討委員会」を設置し、07年7月の第41回評議員会に予備提案するよう検討する。また、「国際交流基金」の創設についても「組織財政検討委員会」を経て評議員会に予備提案する。

 <5-8> 共済制度については、単産共済・労働共済の拡大を通じて、2008年までに90万人の共済加入の達成をめざす。そのためにも、遅れている地方共済会の確立を07年7月までに達成することとし、全労連の「共済拡大強化・全国代表者会議」を計画する。共済事業へ規制強化に反対する運動を強める。

 <5-9> 実践に役立つ機敏な全労連の政策・要求を充実させるために、単産や地方組織、労働総研の協力を得て「恒常的政策委員会」を確立する。また、定期刊行物、宣伝資材などの改善に努力するとともに、情報サービスの迅速化、連絡(通達)の効率化をはかる。全労連新聞、月刊全労連の充実を追求し、月刊全労連は単産・地方組織の協力のもとに3,000部(現在2,000部)の普及をめざす。

 <5-10> 全労連の組織と運動の中軸を担ってきた団塊世代の組合員が勇退を迎えようとしているなかで、青年部の活動強化をはかることは全労連運動の全体にかかわる重要課題である。すべての単産・地方組織における青年部組織の確立、担当役員の配置、執行委員会など機関役員への青年の登用、組合予算の重点的配分、教育・学習活動や文化・サークル活動の強化などにとりくみ、青年運動の活性化をはかる。

 <5-11> 日本の労働組合の改善すべき弱点の一つとして、男性中心の役員体制と活動スタイルが指摘されている。女性労働者が全体の4割をこえ、男女共同参画社会の実現が時代の趨勢となっているもとで、女性労働者の要求実現、全労連運動の社会的地位を向上させるうえで、全労連女性部の強化が決定的に重要である。大会に提案した規約改正案にもとづき、全労連大会や評議員会、諸会議への女性参加比率の向上、単産・地方組織の女性役員比率の向上を意識的に追求する。

 

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