10月18日、衆議院本会議で報復戦争参加法案(テロ対策特措法)が、自民、公明、保守などの賛成多数で可決され、参議院に送付された。
この法案は、現に海外で行われている戦争に自衛隊を派遣するものであり、日本の歴史を大きく左右するものである。憲法9条やガイドライン法をも大きく踏み越えるこの重大な法案を、公聴会さえ開かず、わずか5日間の審議で強行したことは、将来に大きな禍根を残すだろう。
巡航ミサイル発射が行われているインド洋上をアメリカが「戦闘地域」とし、一方日本政府は「戦闘行為の行われているところ」ではないと国会審議で強弁している。「武器弾薬を輸送する」といいながら、「米軍の作戦行動にはかかわらない」と米軍に判断を一方的に依存し、地上戦にも自衛隊投入は可能であるとされている。その上、米軍から具体的に自衛隊派遣の要請があったかどうかすら政府はまともに答弁できず、小泉首相自ら答弁に窮することもあった。これが「武力行使」を禁じた日本国憲法の平和原則に反することはもちろん、矛盾点を何ら明らかにしないまま国会を通過させるのは国民・青年を愚弄するものである。全労連青年部は参院で本法案の徹底審議をつくし、廃案とすることを強く要求する。
9月11日に発生した同時多発テロは、アメリカだけでなく世界を震撼させ、新たな国際紛争の拡大を危惧させるものとなった。このような残虐で、野蛮な犯罪行為であるテロ行為は、いかなる理由があろうとも正当化できるものでなく、私たちはこれを厳しく糾弾する。また、米英両国は日本時間10月8日にアフガニスタンへの攻撃を開始した。これは、9月11日のアメリカ同時多発テロの責任者への報復と称しつつ、広範な無実の人びと、難民の命と暮らしを危険にさらすものに他ならない。国際機関やNGO施設も爆撃を受け、きわめて深刻な状況にあるアフガニスタン難民をさらに窮地に追い込んでおり、国際社会の批判は免れない。また、地雷を撒き散らす非人道的なクラスター爆弾を使用し、核兵器の使用も否定していない。全労連青年部はこの報復攻撃が「テロと報復の悪循環」に突き進む危険を内包し、無実のアフガニスタン国民を危険にさらすものとして攻撃の即時中止をもとめる。
この間、国際社会は、テロを根絶するために、テロリスト集団を政治的に包囲し、経済制裁など理性と法によって厳しく裁くべきであるという世論を高めている。米英の報復攻撃はテロ対策で一致していた国際社会に亀裂を生じさせ、テロ集団に新たなテロの口実を与えており、全労連青年部はいまこそ国際社会が国連を中心に団結し、一部の国による武力報復ではなく、制裁と法の裁きによる解決の道に立ち戻ることを強く求める。
このような状況のもと、憲法で戦争を放棄した日本政府が、「テロ根絶」といえば米軍の軍事攻撃への支援しかないという態度で自衛隊派遣に血道を上げているのは異常と言うべきほかない。それは、私たち青年労働者の願いと決して相容れない。
全労連青年部は、本法案の参議院での徹底審議を求めるとともに、この法案の危険な内容をはたらく青年たちに広げ、平和を求める世論と運動、共同を広げ、廃案をめざして奮闘する決意である。
2001年10月21日
全労連青年部常任委員会
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