坂内事務局長答弁

 長時間の討論ご苦労さまでした。初々しい佐賀の稲富さんの発言から、会場をうならす奈良の井ノ尾さんの発言まで、46人の評議員から、提案した方針を基本的に支持し、補強する立場で積極的な討論をいただきました。最初に評議員会全体の参加状況を申し上げますと、資格審査委員会の報告による評議員・役員のほか、顧問、傍聴者、事務局を加えて204人の参加がありました。女性が30人、一定の努力の結果ではありますがまだ15%、来年の規約改正で提案した3分の1にするには、倍化が必要であります。全労連幹事会も加盟組織も、引き続き努力しなければなりません。
 全労連の討論では、「方針上あれが足りない、これが足りない。もっと方針を出せ。もっと資料を提供せよ、もっと宣伝・学習のビラ・パンフをつくれ」そういう注文は常に聞くんですが、「FAXが多すぎる、通達が多すぎる、無駄な冊子が多すぎる」と公式の決議機関では初めて、自交総連から指摘がありました。事務局・専従者の会議では、常に私が目を吊り上げて言っていることで、わが意を得たりという感もありますが、この財政状況の厳しさ、専従体制の減少のなか、「具体的にどのように改善するのか」真剣に議論させていただきます。
 評議員会の討論の進め方を工夫しまして、テーマ別に、1つは組織拡大の運動と青年・女性の活動、2つ目に賃金闘争を中心とする春闘問題、3つ目に国民共通の運動、そして4つ目に憲法闘争と秋闘というふうに区切りをつけた討論が行なわれました。また、討論をテーマ別に整理するという意味で、発言通告制度が久しぶりに取り入れられました。議事運営に関することは、議運の提案にもとづいて大会代議員、評議員が判断する事項ではありますが、執行部の意見が反映されることも事実であります。事前に、こういう討論方法にするということが、加盟組織に伝わっていた訳ではありませんので、若干のとまどいもあったように思います。今後どうするかについて、幹事会として意見を申し上げるのは越権行為になりますので注意しなければなりませんが、全労連の大会なり評議員会で、提案された課題について集中的に討論が行なわれることが重要であります。
 組織拡大に集中して、多くの発言がありました。JMIUの田倉さんから、「『高齢者雇用安定法の改正』で再雇用制度ができ、職場に残る組合員をどう組合員として確保するのか」という発言がありました。また、建交労の藤好さんからは、「いわゆる団塊世代の退職者は、これまでの定年退職者と違って、年金の支給開始年齢が先になる。年金額が減額されるなかで、定年になっても働かねばならない。400万人以上の新たな不安定雇用労働者が生まれるということで、これへの対応をどうするのか」という指摘がありました。私は、5月の単産・地方代表者会議の場で、年金者組合の拡大に敬意を表するとともに、年金者組合への結集ということだけでは済まない新しい問題として、現役労働者の高齢者を結集する組合として、たとえば「団塊ユニオン」のようなものが必要ではないのかと、問題意識を申し上げましたが、今後、集団討議と検討が必要だと思います。
 京都の馬場さんから、「組織拡大はどこまで頑張ったかではなく、具体的な成果・数字が評価基準になるべきである。250万全労連のためには、辞めていく組合員のことも考えて、整合性のある拡大目標を設定して、真剣に追求していく事が必要だ」という発言がありました。組織建設は、単なる重要性の強調だけでは目標を達成できません。計画から推進、総括に至るまで、「目標をどうするのか、推進体制をどうするのか、財政をどうするのか」という具体的な手立てなしには前進しません。組織拡大で連続して大きな成果をあげている全建総連の教訓や、あるいは欧米の労働組合の教訓からみても、重要な指摘だと受け止めます。
 同時に、全労連というのは単産と地方組織で構成し、それぞれの運動を交流し、激励し、調整するという協議体的性格をもっていますから、全労連が詳細な拡大目標を上から提起して、単産の計画を一律的に全労連方針に従わせて、ギリギリ詰めていくということにはなりません。「全産業的、全国的な状況を示し、それに対応する共通の政策や目標を提起して、それに基づいて各単産・地方が具体的で緻密な計画を立て実践するというのが、やはり基本になるべきではないのか」、京都総評のすぐれた伝統としての組織活動には大いに学ぶ必要がありますが、馬場さんの問題提起は引き続きお互いに議論したいと思います。
 いずれにしても21世紀に入ってから、年金者組合を除いて全単産・地方的に組合員の減少傾向が続いています。それがこの1年間、民間単産を中心に組織の減少傾向に一定の歯止めをかける成果があらわれています。そういう前進はあるものの、それはほんの端緒にすぎず、現在のペースの取り組みでは、労働者の5%、250万全労連への到達は遠い将来の夢にすぎないものになってしまいます。この1年間の流れを全労連全体の流れとして定着させ、「まずは来年の定期大会をすべての加盟組織が組織の実増で迎える」その重要性を改めて強調しておきます。
 青森の苫米地さんがこの間の組織拡大の経験から、「飲む、声をかける、明るく、という教訓を得た」、また、全労連オルグの遠藤さんからは、「明るく元気に、組織拡大にとってそれが何よりも大切だ」という話がありました。青年部の小川さんからは、「幕末でも時代変革の中心を担うのは青年だ。青年が動けば、もう一つの日本は可能だ」と強調されました。これらをふくめて、全員の発言が、今後の組織拡大運動の示唆に富んだ内容でありました。皆さんの経験や補強意見を生かして、この秋からの取り組みをいっそう前進させたいと思います。
 女性の労働組合運動で果たす役割についても、多くの意見が出されました。自治労連の渡辺さんや全教の植西さんから、「全労連として男女平等に向けたさらなる具体的なアクションプログラムを」と指摘がありました。評議員会の女性の参加が多少は増えましたが、まだまだ不十分です。全労連の単産や地方組織で、委員長や書記長が女性というのは、日本医労連、福祉保育労、新潟、香川、秋田などだけで、まだ圧倒的に少ない。全労連としても問題提起を続けますが、「単産や地方組織、職場からどうしていくのか」、それなしに問題の解決には至りません。全労連全体の意思として、お互いの努力を確認しておきたいと思います。なお、神奈川の水谷さん、自治労連の渡辺さん、日本医労連の伊奈さんの発言は、予備提案の第4号議案にかかわっての発言でしたが、貴重なご意見として来年大会に提案する議案に反映させることにしたいと思います。
 賃金闘争について、東京の永瀬さんから「目安答申に対する事務局長談話に不十分な表現がある」と指摘を受けました。改めて、談話を出し直すことはしませんが、4年ぶりに具体的目安額を提示させ、3円、2円を引き出したことは、この間の官民・地方一体のたたかいによる貴重な到達点であり、賃下げの悪魔のサイクルに対する反転・攻勢の足がかりにしなければなりません。しかし、3円、2円という目安は極めて不満足な額だといわなければなりません。しかも、Dランクだけを1円低くしたことは、最低賃金制度のそもそもの機能を否定するもので、決して容認できません。熊本の荒木さんも触れられたし、北海道の渡部さんの発言が鋭く実態を告発したように、「最低賃金制度の本来の趣旨にそった生計費原則に基づく最賃を断固として求めていく」基本的視点を再度強調しておきたいと思います。
 京都の岩橋さんから、「前年を432円上回ったということが、たたかえば一定の前進があることを示したなどと評価できるのか」と言われました。誤解のないように再度言いますが、史上最高の利益をあげる大企業労組が要求を出さない、それとの対置で、依然として経営困難な中小企業でも、要求を確立して統一闘争に結集してたたかえば、一定の前進がかちとれることを示した。その方針とたたかい方の評価を言っているのであって、432円上回ったことを全面的に評価している訳ではありません。そういう総括をすることが、全体を激励するうえでも適切ではないでしょうか。賃上げ要求のあり方、統一行動のあり方にも、いろいろ注文がありました。来年の春闘方針もふくめて大いに議論したいと思いますが、資料集に2・23統一行動の集約を記載していますが、みんなで決めた方針をどう実践するのかという検証とあわせて、今後のたたかい方をどう強化・改善するかという方向を導き出すために、幹事会としても検討を深めたいと考えます。
 大阪の久保田さんほか、何人かの発言で、「自治体リストラ、指定管理者制度の問題が議案で触れられていない」という指摘がありました。確かにこの問題の重要性から言って不十分であります。春闘方針などでは強調してきましたが、議案として補強いたします。また、特殊法人労連の篠原さんから「市場化テストの課題で全労連闘争本部の設置を」と要望がありました。公務員制度闘争本部が、一定の区切りがついているということとあわせて、「自治体リストラ、市場化テスト、公務員賃金、あるいは公務員労働者の政治活動の禁止、これらの緊急課題を全国的にたたかう闘争体制はどうあるべきか」を検討したいと思います。天下りについての全労連見解を問われましたが、全労連は連合のように、何の天下り先も持っていません。だからという訳ではありませんが、特殊法人労連と全労連の見解は一致していることを申し上げます。
 医療や年金、増税問題、震災復興、地域経済、アスベスト、雇用、国民的課題をめぐっても、多くの評議員の補強発言がありました。福島の野木さんから出された「雇用交付金制度の問題」、全労連の政策提起を関係単産とともに具体化します。千葉の本原さん、奈良の井ノ尾さんが発言された「アスベスト・健康対策」について、全労連としての対策、運動方針を急いで具体化するよう努力します。その他、たくさんの要望・意見に一つひとつ丁寧に答弁する時間がありませんが、いずれも幹事会提案を積極的に補強する意見・要望として受け止め、今後の方針や取り組みに反映させます。
 憲法闘争の集中的な討論をいただきました。多くを付け加える必要はありません。提案の際に、全労連の3つの役割のうち、労働組合分野の共同という点で、まだ課題が残されていると申し上げましたが、皆さんの発言を聞いておりますと、熊本、兵庫、愛媛、山形など全国各地で、連合労組をふくむ共同が展開されているということで、改めて確信をもつことができました。こうした地方・地域の努力が中央にも反映され、決して消極的ではない労働組合の共同も追求されています。たたかいはいよいよ正念場を迎えます。方針で提案した来年大会までの具体的到達目標である「全労連の組合が組織されているすべての職場に、憲法を守る職場の会などを確立すること」「その職場が存在しているすべての地域で、憲法を守る地域の会や共同センターを確立すること」「全労連の組合があるすべての職場で、組合未加入者、管理者をふくむ過半数署名を集約すること」「中央と全都道府県、および各産業分野で、広範な労働者による『九条の会』などの結成をめざすこと」など、力をあわせて追求していきたいと思います。
 06年国会に「国民投票法案」を提出させない、国民投票法案を強行させないたたかいが、焦点となることは言うまでもありません。その場合には、全労連はすべての労働組合にストライキをかけてたたかうことを呼びかけます。

 さて、議長挨拶でも私の提案でも、「内外をふくめて情勢がきわめて緊迫していること」、「本評議員会の重要性」を再三、強調させていただきました。昨日・今日、その情勢にふさわしい論議が展開されたと思います。郵政民営化法案の参議院採決をめぐって、共同通信の27日現在追跡調査では、114人の自民党議員のうち、反対票を投ずると答えたのが14人、棄権を表明したのが2人、態度未決定が47人で、そのうち反対に近い未定と答えたこと人が10人前後だったといわれます。18人が反対すれば否決ですから、棄権を2分の1票として現在15人、限りなく反対に近い10人がたとえ棄権に回ったとしても否決されます。いよいよ正念場であります。このたたかいにかちぬいて、郵政やNTTの中に1万人をこえる全労連の組織を建設し、日本社会を現実的に動かす社会的地位を確立したいものだと思います。また、その可能性は決して少なくありません。
 郵政民営化法案否決ということになれば、解散・総選挙の可能性は極めて高く、可決となった場合でも、解散・総選挙はそう遠くないでしょう。きたるべき総選挙で、「憲法改悪反対、庶民大増税反対の国会議員をどれだけ増やせるか」、政党の新しい選挙方針のもとで、この2つの国民的課題で明確な態度をとっている日本共産党、社民党がすべての小選挙区には候補者を擁立できないという状況が伝えられるなかで、「全労連としてどういう政治方針をもって対応し、憲法改悪発議を許さない3分の1以上の国会勢力を築くのか」、労働者と国民の利益を守るために「全労連の役割をどう発揮するのか」、真剣で、謙虚で、積極的な討論と呼びかけが求められるだろうと思います。単産でも、地方組織でも大いに議論し、社会正義と変革のために奮闘しようではありませんか。


| トピックスINDEX | TOP | 戻る |