新保険業法に対する私たちの見解
2006年4月より「保険業法等の一部を改正する法律」(改正保険業法)が施行されました。この法律は、本来、「オレンジ共済事件」などの詐欺行為から利用者を保護するというのが目的であったにもかかわらず、多くのまともな自主共済も対象とされ、保険会社にされることで運営が困難になるなど大きな社会問題になっています。また、労働組合の共済は、この法律では「適用除外」と明記されましたが、この法律で規定されること自体が法理論上も重大問題です。
さらに、この新保険業法制定の動きには労働組合の共済にとっても大きな問題が含まれています。それは、4年後には「改正保険業法」の「見直し」が決められていることです。「見直し」は法的根拠のある制度共済や労働組合の共済をも対象とされており、これらも含めて新保険業法の枠内に入れてしまおうという狙いがあることです。本来、労働組合の福利・共済活動は憲法第28条や労組法などに保障された団結権に基づく「相互扶助」「助け合い」活動として、労働運動の重要な活動分野として位置づけられてきました。いわゆる保険業とは性格を異にするものです。
もし仮に労働組合の共済が新保険業法の対象とされれば、責任準備金などの積み立ても求められますし、税金面での課税も避けられなくなるなど、財政面でも自主的な運営が全面的に規制されます。共済制度や運営が民間保険会社と同一に位置づけられることになり、憲法や労組法で保障されている「助け合い」や「団結」自体が成りたたなくなります。
この要求はアメリカの金融・保険資本から出たものです。彼らは、日本の保険市場の参入と拡大を企み、邪魔になる郵政の簡易保険を解体させましたが、さらに相互扶助として発展し続けている自主共済を、民間保険と同じ土俵に引っ張り込み、「助け合い」の運動をも解体させることを求めているのです。
同時に、この攻撃は、労働分野での新自由主義路線にもとづく政策推進の具体化として、憲法28条にもとづく団結権など労働基本権の侵害、労働組合への全面的な破壊攻撃そのものだということです。今日、非正規労働者が労働者全体の三分の一をこえ、ワーキング・プアーといわれる年収200万円以下の労働者も激増している下で、労働組合運動への期待の高まりと「安い掛け金・大きな保障」を合言葉にした労働組合の共済が改めて注目を浴びています。だからこそ「ただ働き残業」を法制化するホワイトカラー・イグゼンプションや派遣・請負労働の全面的な規制緩和など労働法制の規制緩和、全面的改悪を推進するために、これとセットになって労働組合の団結権を侵害し労働組合の共済事業への保険業法の適用を狙っているのです。私たちはこうした米日財界と政府の狙いに断固として反対し、労働組合の共済事業の発展に全力をつくすものです。
全国商工団体連合会や全日本民医連、全国保険医団体連合会などの行っている共済活動も、民主的かつ自主的に運営されている助け合い運動であり、規制の対象からはずすことを求め運動をすすめています。これらの団体をはじめ多くの団体との共同をひろげ国民的世論で政府・財界を包囲し、適用除外の拡大、法律の抜本的改正を要求するものです。
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