【談話】歴史の事実に背を向け、ゆがめる閣僚の言動に厳しく抗議する(談話)
安倍首相が第2次大戦中の「従軍慰安婦」問題にかかわって、「強制連行を裏付ける証拠はない」とする発言を繰り返し行なっている。そればかりでなく、発言を批判する国内外の声に対し、「従軍慰安婦」問題は「過去の問題」と述べたとも伝えられる。
また、下村官房副長官は、「『従軍慰安婦』はいなかった」、「日本軍は関与していない」などと繰り替えし述べていることも明らかになっている。
これらの発言は、1993年8月4日の「河野内閣官房長官談話(慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話)」さえ否定し、歴史の事実に背を向け、歴史の事実をゆがめ、国民をいたずらに煽動するものである。日本政府を代表する安倍首相らが、そのような発言を行なったことで、「従軍慰安婦」として人間の尊厳を踏みにじられ、いまも苦しんでいる方たちには、二重、三重の痛みを強いることになる。断じて許されない恥ずべき発言の撤回と、安倍首相らの謝罪を強く求める。
「河野内閣官房長官談話」でも述べているように、政府の調査によって「慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与」したことがすでに認定されている。また、慰安婦の「募集」等は、「総じて本人たちの意思に反して行なわれた」ことも認定されている。
「従軍慰安婦」は存在し、日本軍が関与し、強制連行されていたことは、日本政府が認めた事実である。そのことにも背を向け、白を黒と言い換えるような発言が、国内はもとより国際社会でも受け入れられるはずはない。
また、その事実認識のもとに、極めて不十分な「償い」ではあるものの、「アジア女性基金」が設立され、被害者への『しょく罪』とされてきた。安倍首相らの発言は、このことさえも否定するものであり、非人間的な扱いをされた「従軍慰安婦」への謝罪を撤回するに等しい厚顔無恥な対応である。
日本政府は、日本人の人権侵害には声を大にするが、自国の行為による外国人の人権被害には無感覚で、「人権の二重基準」だとの国際社会の批判は当然のことである。国際的な常識にも背を向ける首相らの姿勢は、国際化や国際貢献などの言葉を空疎に響かせている。人権を軽んじる政府のもとでは、国民の基本的人権も侵害されるとの懸念を感じざるをえない。
日本政府に対し、今回の問題も契機に、「河野官房長官談話」を継承し、歴史認識についての他国との一致をはかり、すべての戦争被害者に謝罪と補償をおこない、戦争責任を明確にするなど、国際社会に通用する対応を行なうよう、改めて求める。
2007年3月29日
全国労働組合総連合(全労連)
事務局長 小 田 川 義 和
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