TOP 全労連紹介 ニュース オピニオン 労働法制 賃金闘争 憲法・平和 くらし・社会保障 非正規全国センター 全労連共済 青年 女性 English
 
BACK
TOP
オピニオン
 

格差と貧困を拡大する労働者保護規制の緩和ではなく働くルールの確立論議こそ喫緊の課題

−規制改革会議「労働タスクフォース」の報告の撤回を求める(談話)−

「労働者タスクフォース」の報告書は認められない

 5月21日、政府の規制改革会議の再チャレンジワーキンググループ・労働タスクフォース(主査・福井秀夫政策研究大学教授)は、「脱格差と活力をもたらす労働市場へ〜労働法制の抜本的見直しを〜」とする「報告書」を明らかにした。

 その内容は、日本経団連が「御手洗ビジョン」(2007年1月)をもとに、5月15日に政府に提出した「規制改革の意義と今後の重点分野・課題」と題する要望書で、「雇用・労働法制の見直し」を求めた課題と符合するものである。政府の一審議会の検討グループが、労働法制という労使間の利害の対立する事項について、使用者側の主張を後押しする「報告書」を公表すること自体が不当である。検討に当たって、労働者側の意見を聴取もせずに取りまとめられている。このような手続き的な正当性を欠く「報告書」を認めることはできない。

「報告書」を政府が放任することも許されない

 同時に「報告書」は、職業選択の自由(憲法第22条)や私有財産制(憲法第29条)など、市場原理を最重視する基本的人権が尊重される余りに生ずる格差や貧困と言った不平等を是正する目的で、生存権(憲法第25条)や労働権(憲法第27条)などの社会権が確認され、それらの均衡の上に労働法制が成立し、あるいは解雇規制などの判例法理が確立してきたことを真正面から否定している。ILOの諸条約に代表される国際労働基準が、「労働は商品ではない」として労働市場における競争原理のもち込みに警鐘をならして成立していることにも無頓着である。「報告書」の内容は、法治国家である日本の「国のかたち」からも、歴史的に確立してきた労働者の基本的人権の理念からも、そして国際社会の常識からも逸脱している。このような「報告書」を政府の機関が容認することは許されない。即座に撤回されるべきある。

「報告書」は労働者の生活・労働実態の深刻さとその原因をふまえていない

 「報告書」は、「流動性の高い労働市場の構築」や「自由な意思の合致による契約」を過度に強調し、現行の労働法制や解雇規制にかかわる判例法理、同一労働同一賃金などの均等待遇原理を激しく攻撃している。一方で、青年労働者を中心とするワーキングプア問題が、1999年の労働者派遣法改悪によって急速に悪化した非正規労働者の所得低下や労働条件悪化によるものであることは見ようともしていない。労働法制の規制緩和が企業の首切り・リストラを後押しし、失業を深刻化させた事実の確認も行われていない。労働時間の規制緩和が、長時間過密労働を深刻化させ、過労死や職場のメンタルヘルス問題を深刻にしている事実も省みられていない。

 一方で、企業の違法行為は、法制度の欠陥として免罪している。陰湿な女性差別は「女性の権利強化」の結果であり、偽装請負は「雇用の申し込みを使用者に義務付け」たためであり、ただ働き残業の強制は「労働時間上限規制の導入」の結果だと主張している。黒を白と言い含める身勝手な主張こそ、この「報告書」の最大の特徴であり、見過ごせない問題点である。

全労連は、労働法制改悪に反対し、働くルール確立のたたかいを強める

 「報告書」は、(1)解雇乱用法理の見直し、(2)労働者派遣法の見直し、(3)(労政審議会方式での)労働政策立案の見直しを主張し、個別課題として(1)有期労働契約に対する制約の撤廃、(2)若者トライアル雇用の実施期間の延長、(3)紹介予定派遣等の受け入れ期間の延長、(4)派遣禁止業務の解禁、(5)労働者派遣における事前面接の解禁、(6)同一労働同一賃金への攻撃、(7)職種別賃金での同一労働同一賃金への攻撃、(8)改正パート労働法の対象範囲の抑制主張、などとなっている。いずれも、この間の労働法制改悪で、使用者側が繰り返し「見直し」を主張したものである。

 日本経団連の主張を代弁する「報告書」は、参議院選挙後も見据えた労働法制改悪攻撃の再開宣言とも言える。

 全労連は、これ以上の労働法制改悪に断固反対し、貧困解消にむけた最低賃金・「時給1000円」要求の実現や労働時間規制の強化、まともな雇用拡大などの働くルール確立に向け、引き続きたたかいを強める。

   2007年5月23日

全国労働組合総連合
事務局長  小 田 川 義 和

 
〒113-8462 東京都文京区湯島2−4−4全労連会館4F TEL(03)5842-5611 FAX(03)5842-5620 Email:webmaster@zenroren.gr.jp

Copyright(c)2006 zenroren. All rights reserved.