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【談話】労働者、国民に痛みを押し付け続ける予算は許されない
     ―2008年度予算・概算要求基準の決定にあたって―

 政府は、本日の閣議で、2008年度予算編成の枠組みとなる概算要求基準(シーリング)を決定した。その内容は、歳出カットと消費税導入を前提とした「歳出・歳入一体改革」と、一部大企業の「ぼろ儲け」を保障し続けるための財政と政策の「集中」を求める「成長戦略」に貫かれている。
 このような国民負担増と格差拡大の政策は、7月末の参議院選挙で、国民が「ノー」の審判を下したものである。「改革は支持されている」とか、「改革を停滞させるな」といった主張は、国民の意思に沿わない「権力者の無謬論」に過ぎない。そのような姿勢を続ける限り、安倍内閣への国民の支持が高まることはないと確信する。

 閣議決定では第1に、公共投資について、名目で前年比3%削減の継続を求めるとともに、入札・契約制度改革やコスト削減を通じた重点化を求めている。入札談合や大型開発中心の公共事業の無駄は是正されなければならない。しかし、生活関連のインフラ整備や補修は国民生活にとっても不可欠である。また、強固な重層下請け構造を放置したままでの入札価格のダンピングは、建設労働者の労働条件を悪化させ、職業病の多発を懸念させるなど、見過ごせない問題点をもっている。
 公正取引の確保や検査体制の強化、「公契約法・条例」制定、生活関連事業優先などと一体で検討すべきである。

 第2に、社会保障費を国と地方で3200億円抑制するとしている。
 「構造改革」のもとで、社会保障費への国庫負担が抑制され続け、保険料負担の引き上げや受益者負担増の要因となってきた。その結果、生活保護打ち切りに起因する餓死事件が発生し、社会保障給付が受けられない「医療難民」、「介護難民」などの深刻な問題を生み出してきた。2008年度に向けては、政管健保への国庫負担削減が検討対象とされ、労働者へのしわ寄せで社会保障費の抑制を行うとしている。
 また、私学助成費や国立大学運営費交付金の1%カットなども検討課題とされている。
 「国民への痛みの押し付け」で社会保障改革を行うという「構造改革」の延長線での予算編成の宣言を認めることはできない。

 第3に、公務員人件費について、国・地方合わせて5000億円規模の「上乗せ削減」を求めている。そのため、5年間で5.7%の定員削減に加え、国の出先機関の大胆な見直し、地方の技能労務者の給与抑制などが課題とされている。
 国や地方の政府の役割を吟味せず、総人件費削減の命題だけで人員を削減し続け、民営化、民間化を進めることの弊害は、医療・介護をはじめ、社会の至る所で顕在化している。行政サービスに提供にかかわる国の責任を地方に転嫁し続けていることは、格差拡大の一因である。
 行政サービスの低下、形骸化と公務職場に働く労働者の労働条件悪化によって実現される人件費削減をこれ以上強めるべきではない。

 第4に、「消費税を含む税体系の抜本的改革」を2008年度予算編成に関連する課題としていることは重大な問題である。
 安倍首相は参議院選挙で、消費税を争点とすることを意図的に避けた。選挙後の検討課題に消費税を置いていることを明言しながら、国民負担増の税制「改革」を選挙の争点としないという姑息な政治手法が、国民の批判を浴びたことは言うまでもない。したがって、いかなる理由をつけようとも、消費税率引き上げ論議は封印すべきである。

 消費税率引き上げによることなく、年金や医療、介護などの社会保障を充実し、最低賃金引き上げを前提とした中小企業対策の抜本的充実をはかり、雇用対策を強化することなどは、国民が参議院選挙での一票に託した要求である。
 その要求に応えることが、議会制民主主義であり、国民主権の尊重である。全労連は、本日の閣議決定に厳しく抗議し、国民の審判にそった再検討を強く要求する。

  2008年8月10日

全国労働組合総連合
事務局長  小 田 川 義 和

 
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