【談話】低額・格差助長の目安答申は認められない
　　　　 ―中央最低賃金審議会の地域最低賃金「目安改定答申」にあたっての談話―

１．本日、中央最低賃金審議会から厚生労働大臣に対し、2007年度地域別最低賃金額改定の目安が答申された。Ａランクの地方で19円、Ｂランクで14円、Ｃランクで9〜10円、Ｄランクで6〜7円の引き上げを求める、という内容である。これでは、ワーキング・プアの解消を切望する労働者の要求に照らして、あまりにも低額である。さらに地域格差の是正どころか、格差を助長しかねない。全労連は、この不当な目安に抗議するとともに、各地の地方最低賃金審議会が、目安を大幅に突破することを強く求める。

２．同時に全労連は、今年の目安審議の諮問にあたり、柳沢厚生労働大臣が、「非正規問題を考慮し、格差をなくすための賃金の底上げを」と述べ、「従来の考え方の単なる延長線ではない」審議を求めたことを重視すべきと考える。明らかに今回の目安は、大臣の要請にこたえていない。そうである以上、都道府県労働局長が目安に近い金額での改定を行なった場合、厚生労働大臣は、ためらわずに最低賃金法第36条の「職権」を発動し、大幅引き上げを断行するべきである。

３．今回の目安審議は、これまでとは大きく異なる情勢と条件の下で行われた。「貧困と格差」が社会問題化し、政府は先の国会に、39年ぶりの最低賃金法「改正」法案を提出した。法案は継続審議となったが、最低賃金が生活保護を下回るという、ありえない事態の是正は、まったなしの政策課題として広く認知されるようになった。アメリカの連邦最低賃金が4割も引き上げられるという事態も後押しし、国会審議では、低すぎる最低賃金の引き上げを求める声が大勢を占めた。政府は法案上程だけでなく、中小企業と最低賃金の底上げをはかる「成長力底上げ戦略推進円卓会議」を設置し、同会議は大幅引き上げを求める意見をまとめた。参議院選挙では、「構造改革」によって拡大した格差や貧困の是正を求める世論が、政権与党に対し厳しい審判を下す劇的な状況変化も生まれた。一連の流れからすれば、「従来の延長線上」にない審議を行い、労働組合がこぞって主張している「最低賃金、時給1000円以上」への道筋を明らかする目安が求められていたはずである。

４．審議会には、高卒初任給（女子）水準との是正や、小規模企業の労働者の賃金の中位数の50％水準までの引き上げなど、これまでとは異なる「考え方」も示されていた。にもかかわらず、使用者側は「支払い能力論」に固執し、従来の基準による改定を強く主張し続けた。結果、その勢いに押し戻される形で、低額の平均14円を公益委員が提示したと報道されている。ワーキング・プアに怒る労働者の声が、なぜ、審議会には響かないのか。今の審議会の運用の欠陥をうかがわせる目安ともいえる。全労連としては、あらためて、委員任命の在り方の見直しと、意見陳述の活用を要求する。

５．低賃金労働者の多い地方では、最低賃金制度が、生活保護基準を下回る賃金で働くワーキング・プアを多数、生み出している。一方、人手不足の都市部では、最低賃金が賃金実勢から乖離してしまっている。いずれも、最低賃金制度の機能麻痺を意味する現象である。そのような問題の放置は、最低賃金制度の意義や目的への労働者の不信を高めかねない。Aランクの改定をDランクの改定の3倍強とする今回の答申は、地域格差を拡大しかねず、労働者の最低限度の生活を、労働基準として保障する制度趣旨に照らして大いに疑問である。

６．全労連は、この間、数次の統一行動を配置しながら、全国で最低賃金引き上げの運動を粘り強く展開してきた。そのようなたたかいの反映もあって、最低賃金法「改正」法案の国会提出などの前進面が生まれてきたと確信する。

　当面、各地方最低賃金審議会での改定審議において、目安を乗り越える引き上げを求め、取り組みを強める。同時に、秋の臨時国会で、最低賃金法の実効ある改正と、法案の早期成立をめざす。「時給1000円未満」の労働者をなくし、全国一律最低賃金制度の確立にむけて、議会要請行動を強め、貧困解消の団体間共同の前進をめざすなど、運動を粘り強く継続させる決意である。
　全国の仲間のたたかいへの集中と奮闘を、強く呼びかける。