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2007年11月29日

【事務局長談話】労働契約法制の可決・成立にあたって

全国労働組合総連合
事務局長 小田川 義和

1.11月28日、労働契約法案が可決・成立した。同法は、雇用契約の在り方に影響を及ぼす大型新法である。しかも労働条件の不利益変更法理を実定法化するという重大な法案であることから、多くの労働者・労働組合が慎重審議を求めていた。にもかかわらず、衆議院厚生労働委員会では参考人も呼ばずに3日で採決し、参議院では労働者の要求に押されて参考人質疑は実施したものの、わずか2日で採決に付された。民主主義を軽んじる拙速審議は、大いに問題である。

2.最大の懸念は、使用者が一方的に決めることができる就業規則と労働契約との関係が定められたことだ。修正協議で、このことは目的の条文から削除されたが、第7〜10条は残された。第7条は「使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていたときは、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする」としている。加えて第6条の規定により、本法では、就労と賃金支払いの合意さえあれば、賃金・労働条件が明示されなくても労働契約は成立し、就業規則が契約内容となるとされている。これでは労働条件をめぐる紛争はかえって増加する。そもそも、現在の就業規則の周知方法は、作業場での備付け程度でよしとされ、真の意味での周知はほとんどなされていない。就業規則の制定・改変にともなって行われる労働者代表の意見聴取も、代表の選出もずさんなケースが多い上、労働者が異議を述べても「聞き置くだけ」で就業規則は成立する。そのためもあって、労働基準法違反も含めた不合理な規則が横行しているのが実態だ。政府は、労働契約法を拙速施行せず、先ずは巷にはびこる不合理な就業規則を徹底的に洗い出して是正させ、労働者への周知をはかる作業に取りかかるべきだ。

3.就業規則による労働条件の不利益変更制度の制定には反対である。第9条は「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない」と原則を書いているが、同じ条文に「ただし」書きをつけ、第10条で合意なしに不利益変更が可能となる条件をあげている。これでは使用者に対し、就業規則によって労働条件を不利益変更することは可能と示唆するようなものだ。しかも、政府は第10条に関して「判例法理を足しもせず、引きもしない」といいながら、労働条件の変更の「必要性の程度」をあいまいにし、不利益変更の合理性判断要素を、最高裁判例の到達である7要件から4要件に省いている。省略された3要件は、「労働者への代償措置」、「不利益性を緩和する経過措置」、「一部の労働者に不利益が集中する場合の特別の手当て」など、労働者保護の観点から重要なものばかりだ。政府は答弁の中で「不利益変更の必要性の程度は『高度の必要性』を意味する」、「省かれた3つの要件も含まれる」などとしているが、そうであればなぜ明記しないのか。書かれていなければ「紛争の未然防止機能」も発揮しようがなく、また、今後の判例水準を引き下げるおそれもある。政府には、こうした懸念を払拭し、答弁の内容を担保するための具体的な手立てを講じる責任がある。

4.今回の労働契約法をめぐる国会審議では、あらためて職場における就業規則と労働契約の不合理な実態に焦点があたった。監督官の大幅増員で就業規則の合理性チェック体制を強化することや、就業規則の全労働者への配布指導などしなければ、「労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資する」(第1条)という労働契約法の目的は達成しえない。全労連は、これらを政府に要求するとともに、労働契約法施行の職場への影響を監視しつつ、不合理な就業規則を洗い出し、是正させ、労働条件不利益変更など許さない運動を強化する。

以上

 
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