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【談話】「公務員制度の総合的な改革に関する懇談会」報告書の決定に当たって

 公務員制度改革を検討するため、内閣総理大臣のもとに設けられていた標記懇談会は、1月31日に開催した12回目の会議で報告のとりまとめをおこなった。懇談会設置の前提となっている閣議決定(2007年4月24日)では、政府は、この報告をふまえて公務員制度改革基本法案の策定作業を進めることとなっている。
 われわれは、報告書の前提となった「公務員制度改革に関する答申(原案)」(08年1月10日公表)に対し細部にわたる批判を行い公表している。その要点は、次の点であるが、それは報告書の中心的な問題点でもある。
 第1に、改革論議の対象となる公務員の範囲が偏っていることである。法律や予算案などの策定に直接かかわる「企画立案部門」に働く者のみが公務員ではない。企画部門の公務員と実施部門の公務員は、求められる能力や専門性に異なりがあり、人材確保や育成の方策も一様でない。それらのことを斟酌せず、いわゆる「霞ヶ関の官僚」の人事管理を中心においた制度改革論議では極めて不十分である。 
 第2に、防衛省前事務次官の汚職事件など、様々発生している公務の諸問題と公務員制度との関係について、整理した検討がおこなわれていないことである。高級官僚で相次ぐ汚職事件が、育成過程での政治家や業者との「交流」に起因しているのではないかとの疑念がある。仮に、そのことが正しいとすれば、政治家との接触禁止を手当てし、官民交流の厳格な規制や公務員倫理の一層の厳格化の制度改革が求められるはずである。
 また、民間企業での偽装事件が相次いでいるが、その背景に成果主義人事管理の弊害が指摘されている。長期勤続を前提とする「遅い昇進」の優位性も指摘されており、特性や現状をふまえた「公務の人事管理」を検討することこそ求められている。民間企業の人事管理を公務に持ち込むことが、公務員制度改革の中心課題とは必ずしもいえない。
 第3に、公務員の労働基本権回復の課題を曖昧にしたままでの公務員制度改革は、現状からしても、内外の関心事からしても許されないと言う点である。公務員労働者の無権利状態を解消することは、公務内部からの行政運営をチェックする機能を高めるためにも必要である。「市場化テスト」をはじめとする公務の民間化が進行するもとでの労働者保護規定や集団的労使関係の整備は緊急に求められる制度課題である。報告書は、このような点に言及していない。

 労働基本権課題について報告書は、「専門調査会の意見尊重」と「国における使用者機関の検討」にとどめている。専門調査会の意見は両論併記とされている部分も多く、かつ、技術的な論点も少なくない。したがって、政府には、報告書が言及する他の改革課題とは切り離し、専門調査会の意見を具体化するための「検討の場」を設置するよう求める。なお、その際、一部の労働組合系列のみの意見反映ではなく、公正な論議の場を保障するよう求める。
 報告書とりまとめまでの議論は、国民や関係者の意見を広く聴取しないままに進められてきた。公務員制度は、民主的で効率的な公務運営を支える要の制度であり、そのことからして、国民的合意が十分とは言えない報告書をなぞるような「制度改革法案」は策定すべきでない。政府は、法案策定作業への意見反映の手段を講ずるなど慎重な検討をおこなうべきである。
 報告書は、「人事庁」設置法案の2009年通常国会提出などの「スケジュール」を示しているが、結論ありきの拙速で強引な法案化作業をおこなわないよう強く求める。

2008年2月1日

全労連・公務員制度改革闘争本部
本部長  小 田 川 義 和

 
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