【談話】映画「靖国」への政治介入に抗議する
2008年4月1日
全国労働組合総連合
事務局長 小田川義和
3月31日、靖国神社をテーマにしたドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」(李纓監督)の映画館上映が、相次いでとりやめになったと報じられました。
ことの発端は、自民党の稲田朋美衆院議員と同氏が会長を務める「伝統と創造の会」や「平和靖国議連(会長・今津寛衆院議員)」から、公費助成が適切だったかどうかを検証する目的での「試写会」実施が配給会社と文化庁に要請され、文化庁が異例のとりあつかいで国会議員向け試写会を3月12日に実施したことにあります。
稲田議員は、試写会終了後のインタビューで「イデオロギー的メッセージを感じた」(東京新聞)、「ある種のイデオロギーをもった政治的に中立でないものを日本映画にして助成するのはふさわしいか」(赤旗)などと発言したと報じられており、芸術文化振興基金からの助成取り消しを求めている、とも伝えられています。
このような経緯は、日本のかつての中国侵略は正しかったとする「靖国派議員」らによって、憲法で禁じられている「検閲」が行われ、各種の言動を通じて政治的介入が繰り返された結果、上映中止という異常な事態が生じたことを明らかにしています。全労連は、極めて重要な基本的人権である言論・表現の自由が、そのような経緯で踏みにじられたことに、強い危機感を覚えます。また、基本的人権を擁護すべき文化庁が、政治の圧力に屈する対応をおこなったことに抗議するものです。
かつてNHKのETV番組改編問題が起きたとき、安倍晋三幹事長代理(当時)は「公正にやってくれと言っただけ」と開き直りました。約1年前には「週刊金曜日」の集会で演じられた皇室風刺寸劇が「不敬」だとの右翼の攻撃で中止になり、今年2月にも日教組大会が会場となったホテル側から「右翼が騒げば客に迷惑がかかる」として使用を拒否されるなど、「集会・結社、言論・表現の自由」をめぐる危機的な状況が頻発しています。こうした事態を黙認していては、日本の民主主義が圧殺されかねません。
映画「靖国」の映画館での上映中止によって、「イデオロギー性のある映画」の製作が困難となり、文化の貧困化と退廃を招き、場合によっては外交問題に発展しかねないという問題も懸念されます。
全労連は、言論・表現の自由が、政治の介入や右翼の策動・軽挙妄動によって踏みにじられることを黙過することはできません。理不尽な映画「靖国」の上映中止に対し、多くの皆さんが抗議の声を上げていただくこと、鑑賞が自由に行えるよう映画関係者の方々のご尽力をつよく訴えるものです。
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