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【談話】最低賃金の引上げに関する「円卓合意」について
支払い能力の目安でなく、生計費に見合う賃金水準の目安を議論せよ

2008年6月23日
全国労働組合総連合
事務局長 小田川 義和

(1)6月20日、成長力底上げ戦略推進円卓会議は、「中小企業の生産性向上と最低賃金の中長期的な引上げの基本方針について」を発表し、有識者、労働界・産業界の代表、政府関係者の合意内容を明らかにした。それは、「賃金の底上げを図る趣旨から、社会経済情勢を考慮しつつ、生活保護基準との整合性、小規模事業所の高卒初任給の最も低位の水準との均衡を勘案して、これを当面5年間程度で引き上げることを目指し、政労使が一体となって取り組む」というものである。「円卓合意」が最低賃金を引き上げる必要性を政労使で確認したこと、そのために現行最賃額を上回る高卒初任給という目安を打ち出したことは、一定の前進といえる。しかし、最低賃金法の改正を審議する中で最大の課題とされてきた「ワーキング・プア(働く貧困層)をなくす」という政策目標からすれば、この内容は不十分と言わざるをえず、このままでは、とても合意などできない。

(2)この間、最低賃金制度の見直しを議論してきた、「最低賃金のあり方に関する研究会」や最低賃金部会、国会両院の厚生労働委員会では、働いても貧困から抜け出せない低賃金労働者の急増をなんとかすべきとの声が、労働者側のみならず、公益委員を含む学者・識者、与野党双方の議員から出された。それを受け、改正最低賃金法には、「労働者の生計費を考慮するに当たっては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする」との文言が盛り込まれた。

(3)ところが、「円卓合意」は、生計費原則にのっとった最賃の確立という最重要課題を軽視したまま、支払い能力論を先行させて、小規模企業の中でも最も低位の高卒初任給という目標を、5年間という長いスパンで到達することで事足りるとした。これでは、毎年の最賃改定の上げ幅を抑え込む効果すら発揮しかねない。円卓会議が生計費論にもとづく議論を展開できなかった原因は、低賃金労働者の切実な要求をくみ上げることなく、密室審議を行なったからである。政労使三者構成のカタチはよいとしても、全労連排除に象徴される密室審議の会議運営には、大いに問題ありといわざるを得ない。

(4)改正最賃法の趣旨をふまえ、生活保護基準をもとに労働者の最低生計費を算定するとどうなるか。生活扶助や住宅扶助等に勤労控除(うち就労にともなう必要経費部分)を含めた18歳単身者の最低生計費は月収で15万〜19万円弱、時給で1,000〜1,200円、年収で200万円+αとなる。ところが、円卓会議でだされた目安のひとつ、「従業員10〜99人の企業」の第1・十分位の賃金では、07年統計で時給755円、年収にしてせいぜい150万円前後である。これでは生活保護基準には及ばず、自立した生活はできない。単年度で68円の到達なら、イギリス並みであるが、5年をかけての到達ではあまりに間延びしている。

(5)いまや年収200万円以下の労働者は、1,000万人を突破し、貧困増大・格差拡大の中で、差別された労働者の怒りが膨らんでいる。そうした中、最低賃金は、全国で生活保護費を下回り、ワーキング・プア(働く貧困層)を生み出す温床となっている。貧困根絶は待ったなしであるのに、法が改正されたとしても、適切な賃金水準を実現しなければ意味がない。今月末からはじまる、中央最低賃金審議会では、最低賃金法の改正の経緯と趣旨を十分にふまえ、思い切った引き上げ額を示さなければならない。全労連は、当面の目標である「せめて時間額1000円」の実現と、全国一律最賃制の確立に向けて、国民的共同を追求しつつ、全力でたたかう決意である。

以上

 
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