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【談話】東京生存権裁判の地裁判決について

2008年7月1日
全国労働組合総連合
事務局長 小田川 義和

 6月26日、東京地方裁判所民事第2部は、生活保護の老齢加算の廃止を内容とする保護変更決定処分の取り消しを求めた裁判(東京生存権裁判)で、原告の請求を棄却した。「なくせ貧困」の運動を進める労働組合の立場で同裁判を支持し、取り組みに参加してきたものとして、この判決の不当性に厳しく抗議し、控訴審でのたたかいに積極的に取り組むことを表明する。

 同裁判は、高齢者に特有の生活費を満たすために、原則70歳以上の生活保護者に一定額を加算する老齢加算制度廃止の不当性を争うものであった。制度の廃止は、1960年以来、半世紀近く維持されてきた既得権益にかかわり、廃止理由が社会保障費抑制という政策目的達成のためであったことなど、構造改革のもとでの生活保護行政の方向性と結びついたものであった。したがって、憲法第25条に規定される「健康で文化的な生活」を保障する国の責任を問うのが裁判の目的であった。
 生活保護水準は、生活扶助に加えて、老齢世帯や母子世帯など、他の世帯にはない特有の支出に着目した加算をおこなうことで、憲法第25条の規定が実質的に担保されるとしてきた。加算制度は、おまけでもなければ、国による施しでもなく、生存権を平等に実現するための具体策である。

 しかるに判決は、老齢加算廃止によって、20%もの生活保護費の水準低下となることや、その影響の大きさは認めつつも、老齢加算の必要性を不十分な統計資料に基づいて否定した。それだけでなく、老齢期には健康維持のために必要な支出があるという常識にも背を向けた。「なぜなんだ!」と原告・支援者の怒号が響いたのも無理はない。この判決の論理を認めるとすれば、国が国民に保障する最低限の生活内容は、他者とのつきあいや健康維持、文化的支出も否定される「みすぼらしい」水準に押しとどめられることになる。

 折しも昨年11月、生活保護との整合性を明確にした改正最低賃金法が成立し、本年7月から施行される。最低賃金は底上げが当然とされる流れにあるが、今回の判決は、それをも阻害しかねない。つまり、この判決は最低生計費の維持に必要な加算制度をおまけ扱いして生活扶助だけで事足りるとし、さらに貧困化を反映した統計をもって生活保護を切り下げることは妥当という発想をもっているからである。貧困根絶の機運に逆行する点でも、受け入れがたい判決である。

 今、我が国では、働き続けても年収200万円に満たないワーキングプアが増加し続け、その実態解消のための政府や企業の責任発揮が求められている。全労連は、今回の判決を許さず、「なくせ貧困」の運動をさらに強化し、すべての国民に人間らしい生活が保障される社会の実現を目指して奮闘する決意を新たにする。

 
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