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【談話】規制強化への反転を確かなものとし、派遣労働者保護法制の実現を
「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」報告書について

2008年7月29日
全国労働組合総連合
事務局長 小田川 義和

  1. 7月28日、厚生労働省「今後の労働者派遣制度のあり方に関する研究会」(座長:鎌田耕一東洋大学教授)が報告書をまとめた。派遣労働者について、登録型派遣の雇用の不安定さや、正規との労働条件格差、非正規労働への滞留などの問題があると指摘し、派遣労働が「雇用の安定、待遇の改善、派遣先も含めた違法派遣への対処といった点において課題がある」として、一定の規制強化の方向を打ち出した。


  2. 労働者派遣法は1985年に「臨時的・一時的業務に限定し、常用雇用の代替としない」ことを原則に対象業務限定で制定されたが、99年には対象業務の原則自由化、04年には製造業への解禁と、なし崩し的に規制緩和が進められてきた。研究会も開始当初は座長自ら「常用雇用の代替防止という前提についても見直しの俎上にのせたい」と述べるなど、事業規制の緩和を志向していた。しかし、派遣元会社と派遣先会社それぞれにおいて横行する違法行為、とりわけ、労災隠しや労働契約の中途解除、パワハラ・セクハラ、低賃金などに抗議して立ち上がった派遣労働者の声が力となり、野党各党は派遣法改正案を準備、与党も見直し姿勢を示すなどの変化が生まれ、研究会の論議も規制強化へと流れを反転させた。労働者のたたかいで規制強化への流れを作りだしてきたことは、大きな成果である。


  3. とはいえ「研究会報告」には不十分な点が多い。そもそも制度検討に当たっての基本的視点に問題がある。派遣制度について「労働力需給調整の仕組み」「多様な働き方の選択肢のひとつ」などと書くだけでは、労働者の権利や労働契約の内容が、派遣元会社と派遣先会社の商取引のもとに従属させられ、結果として権利侵害や契約違反、法違反が生じてしまう「間接雇用」の問題性を直視したものとはいえない。派遣先大企業の偽装請負、グッドウィルなど派遣元の違法行為、そして悲惨な秋葉原事件など、社会を揺るがす事件の大元に、規制緩和を繰り返してきた労働者派遣法による雇用破壊があるとの反省が必要であり、それこそが検討にあたっての基本的視点に据えられるべきである。


  4. 具体的内容についてみると、日雇い派遣については「労働者保護の観点から禁止すべき」とし、違法派遣に関与した派遣先に労働者の直接雇用申し込み義務を課し、行政に直用勧告権限を付与する制度を提起するなど、一定の改善を打ち出している。他方で、登録型派遣については労働者のニーズがあるとして禁止は不適当とし、マージン率の上限規制は見送り、常用型派遣についての雇用申し込み義務をはずしている。「専ら派遣」規制についても、「常用代替の専属的実施」との批判的視点をもちつつも、グループ企業派遣8割以下なら可能という甘い基準を例示している。登録型派遣への規制強化などを不適当とした主な理由に「労働者のニーズ論」があるが、これについては再考を求めたい。たとえ一部の労働者にニーズがあったとしても、多くの労働者の雇用と労働条件を掘り崩す要因となっている場合は、規制するのが労働者保護法制の原則だと考える。


  5. 厚生労働省は報告を受け、労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会を開いて、臨時国会への改正法案提出を前提とした審議を開始する。「研究会報告」の不十分さを乗り越え、抜本改正を実現させるために、多くの労働団体・労働者に連帯を呼びかけ、全労連として力をつくす決意である。

以 上

 
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