【談話】任命責任と管理監督責任の明確化と全容の解明を求める
――田母神前空幕長問題についての談話――
2008年11月17日
全国労働組合総連合
事務局長 小田川義和
現職の航空自衛隊幕僚長が、組織外の懸賞論文に応募し、「(日本が)侵略国家だったなどということは正に濡れ衣だ」とし、集団的自衛権の行使と攻撃的兵器の保有を主張するという、重大な事態が明らかになった。
さらに、田母神氏は、様々な機会での「訓話」や「講話」で同様の主張を繰り返し、統合幕僚学校長だった2004年には幹部教育に「国家観・歴史観」を新設し、受講した自衛官は400人に達することも明らかになった。
日本政府は、1995年に近隣諸国の植民地支配と侵略を謝罪する「村山談話」を公式に表明し、以降の歴代内閣は「談話」を踏襲している。
この政府の正式見解を、自衛隊の現職幹部が公然と否定することは、シビリアンコントロールを踏み外す言論「クーデター」とも言えるものであり、憲法を否定する主張ともあわせ憲法99条(憲法擁護義務)などに明白に違反する行為であり、厳しく批判されなければならない。
麻生内閣は、田母神氏の「更迭」と定年退職で幕引きを図ろうとしている。同氏が、歪んだ歴史観をもつ「札付きの人物」であったことは自衛隊内で広く知られていたとされ、公務員、自衛官として適格性の疑われる人物を、航空自衛隊の最高位に就任させた内閣総理大臣の任命責任、管理監督責任は重大である。その責任を果たすためにも、問題の全容解明に全力を尽くすべきである。
「戦後レジーム」からの脱却を掲げた安倍首相(当時)によって、田母神氏が空幕長に任命され、麻生首相をはじめ改憲をめざす動きが、暴走を助長したことも強く指摘せざるを得ない。
今回の問題で重大なことは、憲法も政府見解も否定する侵略戦争美化の幹部教育が自衛隊内で体系的に行われてきたことである。実力組織である自衛隊において、「靖国派」とも結びつき、特異な歴史認識・戦争観・国家観が形成されていくことは、戦前ともつながる極めて危険な動きである。自衛隊内教育を、憲法と歴史的事実に立脚した教育へと是正するよう強く求めるものである。
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