【談話】労働基準法「改正」法の成立にあたって
実効ある長時間労働規制を行い、過労死と失業をなくせ
2008年12月5日
全国労働組合総連合
事務局長 小田川 義和
1.本日、参議院本会議は労働基準法の改正案を可決、成立させた。長時間労働を行なう労働者の割合が高い水準で推移している事態をふまえ、労働以外の生活のための時間を確保しながら働くことができるようにするとの趣旨で、(1)月60時間を超える時間外労働について割増賃金率を5割以上に引き上げる、(2)過半数組織労働組合もしくは労働者の過半数代表との協定により、「引き上げ分の割増賃金の支払い」にかえて、有給休暇を付与することができることとする、(3)年次有給休暇について一定の範囲で時間単位で取得できることとする、との「改正」になっている。
「改正」法は、現行に比べれば、前進といえなくもないが、これで長時間労働による過労死などの深刻な事態を根絶できるのかには大いに疑問があり、不十分な「改正」である。今回の「改正」を契機に、労働時間短縮の取りくみをさらに強化する。
2.不十分さの第1は、月60時間というラインの中途半端さと、労働者の7割が就労する中小企業は対象外とされていることである。しかも、労使協定を結べば、割増率の引き上げ分25%は有給休暇に換算して割増賃金の支払いが免除されるという「しり抜け」も用意されている。有給休暇取得状況が極めて低い水準にとどまっていることや、労働者の過半数代表選出の仕方が不透明で、使用者側の意をくんだ者が労働者代表となる事例が少なくないことなどの現状に、まったく無頓着な規定である。
割増率を企業規模によってダブル・スタンダードで設定することや、例外規定を設けて労使まかせの範囲を広くする規定は、最低労働条件を定める労働基準法にふさわしくないものである。
3.使用者に対して罰則付きで、週40時間、1日8時間を超えた労働はさせてはならない、としている労働基準法の原則に立ち返った長時間労働の規制強化が必要である。長時間過密労働が、脳血管疾患及び虚血性心疾患等を発症させる確率を高めるとの医学的知見が確立し、円満な家庭生活を送ることを阻害する深刻な実態となっている現状にてらせば、これは緊急の課題である。さらに、大手自動車企業をはじめとして、短期的な景気変動や外需頼みの経営戦略の失敗を派遣労働者などに転嫁する一方で、過労死やメンタル不全を招くまでの長時間労働を正規労働者に強制している現状からしても、労働時間規制の強化による雇用拡大・雇用安定は喫緊の課題である。
「青天井」の長時間残業を認める温床となっている36協定の特別条項を禁止し、限度基準以上の残業を認めないことや、割増賃金率の引き上げの具体化を引き続き追求しながら、政府に対して、有給休暇の取得率向上や長時間労働の減少のための実効ある措置をとることを求める。
それらの施策の実現にむけ、全労働者、労働組合に労働時間短縮の運動強化を呼びかける。
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