厚生労働省は、3月31日付けで、「労働者派遣法」にもとづく派遣先及び派遣元が講ずべき指針に関して、派遣契約の中途解除に係る部分の改定を明らかにした。この改定は「派遣切り」が相次ぐもとで明らかになってきた問題の一部に対処するものではあるが、とても抜本的、根本的な問題解決策となってはいない。そればかりか、損害を賠償すれば「派遣切り」は自由という風潮を助長しかねないことさえ懸念される。改めて、労働者派遣法を抜本改正し、労働者保護の法制度に改正するよう強く求める。
指針改定の具体的内容は、派遣契約の中途解除に際し、派遣先企業と派遣元企業に求める雇用維持等についての指導基準をしめしたものである。中途解約を行う場合の派遣先企業の責任として、「新たな就業先の確保」ないし「休業手当、解雇予告手当等の相当額以上の損害の賠償」を派遣契約の段階から盛り込み、中途解約時の履行を求めている。また、派遣元に対しては前記内容での契約を派遣先に求めるとともに、「他の派遣先のあっせん」ないし「休業手当の支払い責任の履行、労働契約法の遵守、解雇予告手当ての支払い」を求めている。
厚生労働省が3月31日に発表した「労働者派遣契約の中途解除に係る対象労働者の雇用状況について」では、中途解除後、派遣先もしくは派遣元企業のあっせん等で雇用が継続できた労働者は、調査対象の1割でしかない。しかも、契約解除から派遣期間終了日までの残期間が3ヶ月以上あるものが5割をこえている。
同日発表された「非正規労働者の雇止め等の状況について(3月報告:速報)」では、派遣労働者の46%が中途解除されており、批判が高まっているにもかかわらず、派遣労働者を「雇用の調整弁」として使い捨てにする企業の経営姿勢はほとんど改まっていない。
昨秋以降の製造業大企業での「派遣切り」で明らかになったのは、事業法としての「労働者派遣法」の構造的欠陥であり、労働者を部品のように扱う企業の理不尽さであった。
この間、そのような実態にも目を向けて、政府部内からも製造業派遣禁止を求める声も上がってきている。そのこともふまえれば、労働者派遣法の抜本改正は政治の緊急の役割になっている。
小手先の指針改正にとどめず、労働者派遣法改正に向けた与野党の努力と、今国会中の抜本改正実現を強く求める。