国民的な批判にもかかわらず、非情な「派遣切り」がいまだに続いています。厚生労働省の調査でも、6月までに20万7千人が首を切られるとされています。製造業だけでなく、最近は事務系派遣や正社員にも解雇・雇止めがひろがっています。
しかも、派遣契約の中途解除による違法解雇が続発しています。厚生労働省の調査によると、職を失った派遣労働者のうち、約半数(48.6%、不明除く)が派遣契約の中途解除です。状況が把握された3万6千人のうち、雇用が継続された人は登録型で8.1%、常用型でも12.4%しかありません。派遣労働者は今も雇用の調整弁として、モノのように使い捨てられています。
労働法制の規制緩和、労働者派遣法の改悪が続き、使用者、とりわけ大企業の雇用責任があいまいにされてきました。それが派遣・非正規労働者の急増につながり、今日の派遣切り、雇用破壊を招いた最大の原因となっています。まさに政治災害であり、雇用破壊の元凶となっている労働者派遣法の抜本改正は、政治に突きつけられた緊急課題です。
今年の通常国会は1月5日開会でしたが、日比谷公園を出発した年越し派遣村の村民デモを迎えて始まりました。院内集会には野党ばかりでなく、与党の国会議員も駆けつけ、労働者派遣法の改正を約束しました。舛添厚生労働大臣も、製造業派遣への異議を表明しました。
しかし、それから5ヶ月近くが経過し、会期末が近づいているにもかかわらず、いまだに労働者派遣法の抜本改正が実現していません。立法府の怠慢として、厳しく批判されるべきです。
この間、派遣切りにあった多くの労働者が労働組合を結成し、たたかいに立ちあがっています。派遣村的な街頭相談は全国にひろがり、労働者派遣法の抜本改正求める労働組合と国民諸団体の共同も大きく発展してきました。日本弁護士連合会も抜本改正要求を決定して、積極的な運動を展開しています。野党間でも、さまざまな動きが起きています。真剣な努力が払われるならば、野党共同法案の今国会提出も十分可能な状況にあると言えます。
いま必要なことは、さまざまな動きをひとつに束ねて、「労働者派遣法の早期抜本改正を!」の声と運動をさらにひろげることです。「派遣を制限したら、いま働いている人の職を奪うことになる」という主張が一部で展開されていますが、そんなことはありません。仕事さえあれば、雇用はあります。労働者派遣法の抜本改正は、貧困と格差の解消をすすめ、内需中心の日本経済の再生につながるものです。
全労連は昨年12月以降、派遣切り等にあった労働者の労働組合を、全国で200組合あまり結成し、派遣切りを許さないたたかいをすすめてきました。労働者派遣法に関しては、別紙の基本要求を中心に、抜本改正を求めて運動してきました。
今国会で労働者派遣法の早期抜本改正を実現するには、すべての政党・国会議員、そして労働組合をはじめとした諸団体が、真摯な協議によって違いを乗り越え、抜本改正法案に意見を収斂させていくことが必要です。
一致点を見出す真剣な協議、努力とともに、社会問題となった派遣切り、雇用破壊にストップをかけることのできる抜本改正法案として練り上げるためには、全労連は少なくとも、下記の点が盛りこまれる必要があると考えます。
(1) |
大きな社会問題として顕在化した製造業における派遣切りをストップさせるため、製造業への労働者派遣を禁止すること |
(2) |
労働者の身分と生活を著しく不安定化させる登録型派遣を原則禁止すること |
(3) |
違法派遣・偽装請負の場合には、派遣先企業への直接雇用を義務づけるみなし規定を創設すること。また、法違反をおこした派遣先・派遣元企業への罰則を強化すること |
(4) |
派遣労働者の生活の安定をはかるため、派遣先企業の労働者との均等待遇原則を明記すること |
|
すべての労働者、国民のみなさん
派遣切りと雇用破壊をストップさせ、今国会での労働者派遣法の早期抜本改正を実現するため、いっそう大きな声をあげていきましょう。
労働組合をはじめとした諸団体は協力して、労働者派遣法の今国会での早期抜本改正の一点で、国民的な共同をいっそう発展させていきましょう。
すべての政党、国会議員のみなさん
今日の派遣切り、雇用破壊は政治災害であり、その根底に相次ぐ労働者派遣法の改悪による労働者派遣の急激な拡大があったという現実を踏まえ、真摯な協議によって一致点を見出し、少なくとも上記の内容をふくむ、労働者派遣法の今国会での早期改正を実現してください。
2009年5月21日