【見解】労働者派遣法・3野党改正案について
(1) 6月22日、民主党、社民党と国民新党の野党3党は、労働者派遣法改正案の要綱で一致し、開会中の通常国会に改正法案を提出することで合意した。
この間、全労連は「派遣切り」にあった労働者とともに、偽装請負や違法派遣が繰り返され、「生産調整」目的での雇止めが常態化した派遣労働の深刻な実態を告発し、派遣先・派遣元企業の雇用責任を追及するとともに、労働者派遣法の抜本改正を強く求めてきた。
とりわけ、2008年秋以降のたたかいでは、製造業大企業で雇止めされた多くの労働者を全労連の組合員として迎え入れ、裁判や労働局申告、団体交渉や労働委員会申し立て、宣伝行動や要請行動など、現行法を最大限に利用した雇用確保のとりくみに全力をあげてきた。
同時に、政府がきわめて不十分な労働者派遣法「改正」法案を昨秋、国会に提出したもとで、労働者派遣法の抜本改正の一点で、さまざまな労働組合や諸団体との共同したとりくみを強めるとともに、早期の抜本改正をめざし、すべての政党・国会議員への働きかけと意見一致に向けて努力してきた。
(2) そうした経過に照らせば、通常国会の会期末まで残り1ヶ月余の現時点でも野党共同の抜本改正案が国会に提出されていないこと、今回の合意が民主党、社民党、国民新党の3党のみの協議によるとりまとめとなったことには、不満を表明せざるを得ない。
今後の全野党による協議や法案の取りまとめ作業、さらには国会審議を通じて、派遣労働者の無権利、低賃金、不安定な雇用の実態と、そこから生じている貧困や格差の解消などが期待できる、よりよい内容での労働者派遣法の抜本改正が今国会で実現されるよう強く求める。
なお、すでに全労連は、2009年5月21日付の幹事会アピールで、抜本改正のためには「製造業への労働者派遣の禁止」、「登録型派遣の原則禁止」、「直接雇用みなし規定の創設」、「派遣先企業の労働者との均等待遇原則の明記」の4点が盛り込まれる必要があることを主張している。あらためて、その点を強調しておきたい。
(3) 3野党案の内容は、(1)法案の目的に「派遣労働者の保護」を明記していること、(2)「直接雇用みなし規程」を創設していること、(3)情報公開や派遣先責任の強化、派遣先に対する罰則の導入など規制強化の方向にあること、(4)雇用保険の加入期間を現行より短縮していることなどの点は、政府提出法案の不十分さを補うものであり、全労連の求めているものにより近づいた内容として評価できる。
(4) しかし、なお、以下の点で、いっそう踏み込んだ検討が必要だと考える。
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一つは、製造業派遣に関してである。専門業務を除き製造業派遣を禁止するとしているが、ここにいう「専門業務」の内容は定かではない。このままでは、政令で「専門業務」を広範に認め、製造業派遣の禁止に大きな抜け穴ができはしないか、疑念を抱かざるを得ない。また、現行の26業務に加えて、製造業のみに独自の専門業務が追加されることになれば、現行26業務には派遣期間の制限がないので、条件付とはいえ、製造業派遣の期間制限をはずす結果になるのではないか、現在でも多くの問題が指摘される専門業務の範囲をさらに拡大することにつながりはしないか、ということが懸念される。社会問題となっている製造業派遣の禁止が担保される必要がある。
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二つは、日雇い派遣に関してである。派遣元との2ヶ月以下の雇用契約を禁止することで、日雇い派遣を禁止するという内容となっている。しかし、派遣元との関係のみでは、日雇い派遣の規制は不十分ではないのか。例えば、2ヶ月と1日の雇用契約を結べば、政府案と同様に、日々派遣・スポット派遣等も可能と考えられる。日雇い派遣や登録型派遣の原則禁止が担保される必要がある。
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三つに、一般派遣事業について、専門26業務以外は派遣元が常用雇用する労働者に限定することとされていることに関してである。現行法にいう「常時雇用」の概念も曖昧といわざるを得ないが、言葉の定義を明確化して、日々派遣先が変わるような不安定な就労形態を規制し、雇用の安定を確保する内容とすべきである。
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四つに、均等待遇原則についてである。派遣元、派遣先の努力義務の規程となっているが、現状の派遣労働の実態を踏まえれば、不十分ではないのか。義務規程として、実効性を担保すべきである。
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(5) 今後の協議・検討を通じて、派遣労働者の置かれた劣悪な実態を改善できる改正案が取りまとめられ、労働者派遣法の抜本改正が今国会で実現されねばならない。全労連はあらためて、すべての政党・国会議員に、いっそうの尽力を強く要請するものである。
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