【談話】第173回臨時国会開会にあたって
本日、召集された臨時国会は、国民選択による政権交代後、はじめて開催されるものである。鳩山政権がめざす政治方向を、国民にわかりやすく、具体的に示すことを期待する。
鳩山首相の所信表明演説は、総選挙で示された「国民の強い意思と熱い期待に応え」ることを強調した。そして、予算や事務・事業、規制のあり方の見直しなどの「組織や事業の大掃除」、医療・介護、教育などを重視する「いのちを守り、国民生活を第一とした政治」、雇用や人材育成でのセーフティネット整備などの「人間のための経済」等を国内課題として取り組むと述べた。このような所信表明の内容は、9月15日の民主、社民、国民新党の「連立合意」を基本的に踏襲していると考えられ、「構造改革」で壊された国民生活の再生を重視した政治に取り組む姿勢を所信表明で示したことは評価する。
しかし、臨時国会に提出が予定されている法案は、中小企業の借金返済猶予制度を創設する「貸ししぶり、貸しはがし対策法案」や北朝鮮に出入りする船舶検査の措置法案など12本でしかない。緊急な改正が必要な労働者派遣法改正法案や、一度は参議院で可決されている後期高齢者医療制度廃止法案など、所信表明の早期具体化を求める声には十分応える状況にはなっていない。国会審議を通じ、所信表明の具体化や時期目標の明確などを強く求めたい。
同時に、鳩山内閣発足からの40日の政権運営をふまえて、いくかの点を指摘する。
一つは、マニフェストの具体化を強調する余り、民主的手続きや国民合意を欠く強権的な政策決定が伺えることである。八ツ場ダム建設の中止決定の過程等に端的に示されるこのような政策決定が、「組織や事業の大掃除」などの具体化でも繰り返され、大きな混乱が国民生活に生ずることを懸念する。
二つは、雇用問題について、その対策内容も、規模も、スピードも、現下の雇用状況の深刻さに対応しきれていないことである。雇用助成金や雇用保険給付の緊急対策も含め、臨時国会期間中に、国会審議もふまえて失業者対策が強化されることを求めたい。
三つには、「いのちを守り、国民生活を第一とした政治」の具体化には子ども対策と並んで緊急性が高いと思われる高齢者の貧困対策、社会保障改善が欠落しているように思われることである。その象徴が、後期高齢者医療制度廃止の先送りである。
四つに、高速道無料化や暫定税率廃止など、環境問題の視点も含めた国民論議が必要と思われる課題がマニフェスト具体化の立場で優先されている。その一方で、軍事費の聖域化や大企業優遇税制の見直しには消極的である。軽減要求が高い医療費負担の見直しは俎上にものぼらず、扶養控除見直しという大衆増税は新たな財源として検討されはじめている。国民生活第一の視点から、税金取り方、使い方の抜本的な見直し、政策の優先順位付けを強く求める。
全労連は、以上のような立場で、今臨時国会から続く通常国会までの国会闘争を継続する決意である。
2009年10月26日
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