【談話】社会保険庁での大量の分限免職処分強行に強く抗議する
12月28日、長妻厚生労働大臣は、2010年1月1日の日本年金機構発足にともなって、社会保険庁で500人をこえる大量の分限解雇を行なうことを発表した。
国家公務員の分限免職は、1964年に行なわれて以来45年ぶりのことである。しかし、1969年に「総定員法」が制定され、国家公務員の整理解雇は行なわないと閣議決定され、以降40年にわたって過酷ともいえる定員削減が強行された経緯に照らせば、かつてない異常な事態が、民主党中心の連立政権化で強行された歴史的事実は極めて重い。
全労連は、分限解雇ありきの姿勢で回避措置も十分にとらず、すでに行なわれた処分を理由に雇用の承継や継続を認めず、国家公務員でも遵守されるべき「整理解雇の4要件」にそった対応を行なわないなど、二重にも三重にも違法で道理のない解雇を、労働者の権利と生活を守るべき厚生労働省が強行したことに、満身の怒りをもって抗議する。
日本年金機構における欠員状況や、厚生労働省での採用状況からしても、分限解雇の撤回、希望する全ての職員の雇用は可能であり、適法な対応をとるようあらためて要求する。
社会保険庁を全国健康保険協会と日本年金機構に分離解体する「社保庁改革」の契機は、消えた年金問題であり、社会保険庁職員の「のぞき見」や時間内組合活動などの「緩んだ規律」との批判を受けてきた。しかし、消えた年金問題の本質は、国民年金、厚生年金などに分立した年金制度を放置する一方で、雇用の弾力化などの流動化政策をとった政府の責任が大きい。分限解雇という首切りで、職と生活の基盤を奪われるほどの責任を労働者が追う理由はない。この点での冷静な論議もないままに、今日を迎えた政治の責任も大きいと言わざるをえない。
民主党は、総選挙のマニフェストで、「日本年金機構凍結法案」の提出を掲げたが、まともな説明もないままに棚上げにされた。長妻厚生労働大臣は、日本年金機構発足1ヶ月前の時点で、厚生労働省での非常勤職員採用枠や、機構での準職員採用枠を設けるとしたが、そのような非正規労働者への転換を「採用条件」とする「ごまかし策」を受け入れる労働者が多くなかったことは、当然のことである。
新政権発足以降、職員の今後の生活や権利を考えて、分限解雇を回避する努力が行なわれた形跡は伺えない。かつての国鉄分割民営化や2004年以降の「国家公務員純減5%削減」実施などの際にとられた政府の「雇用対策」に比べても見劣りする内容であり、政府としての努力は尽くされていない。
また、既処分者で日本年金機構への継続雇用や公務員としての継続を求めた職員だけを分限解雇の対象とする不公正さは、「懲罰解雇」の狙い撃ちでしかない。そのような恣意的な解雇が許されるならば、「法による支配」は貫徹できるはずもなく、民間労働者にも大きな影響を及ぼしかねない。
今、このような厚生労働省の理不尽な分限解雇に対し、怒りをもってたたかいに立ち上がることを決意する労働者が出はじめている。全労連は、すべての労働者の雇用にも影響する課題として今回の問題をとらえ、立ち上がった労働者のたたかいの支援に全力をあげる。政府の理不尽な攻撃に泣き寝入りを拒否する労働者のたたかいへの参加をよびかける。
2009年12月28日
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