厚生労働大臣
長 妻 昭 殿
【要請】「独立行政法人雇用・能力開発機構廃止法案」策定作業の中止要請
貴職に置かれましては、日頃から、労働者の雇用安定と福祉向上にご尽力いただいていますことに深謝申し上げます。
さて、さる3月23日に開催された厚生労働省の労働政策審議会・職業能力開発分科会において、「独立行政法人雇用・能力開発機構法を廃止する法律案要綱」が貴職の諮問通り答申され、現在、法案策定作業が進められていると承知します。
私ども全労連は、答申された法律案要綱には重大な問題があり、そのまま法案化作業を進めるべきではないと考え、作業の中止を強く要請します。
私どもが法律案要綱で特に問題だと考えるのは次の点です。
第一に、法律案要綱の第三の一などに示されている職員の雇用問題です。該当の内容では、雇用・能力開発機構の解散の際に在職する職員の「労働契約に係る権利及び義務」は承継されないこととなっています。そして、同機構の事業を引き継ぐこととされている「高齢・障害・求職者雇用支援機構」が採用基準を示し、雇用・能力開発機構が作成した採用希望者名簿の中から新機構が採用者を選別することとされています。
このような仕組みは、過去における国の機関から独立行政法人への移行、特殊法人から独立行政法人への以降の際、いずれも雇用関係を承継したことと明らかに違います。また、国鉄分割民営化時や社会保険庁解体時に、今回の法律案要綱と類似の仕組みがとられ、差別選別採用が行なわれ、重大な雇用問題が発生したことは記憶に新しいところです。
新政権となって、厚生労働省所管の法人改廃の際に解雇・雇用問題が相次いで発生することも異常といわざるを得ません。
雇用承継にかかわる事項は再検討され、整理解雇等が発生しないよう措置すべきです。
第二に、独立行政法人雇用・能力開発機構の廃止に伴い、同機構が運営していた職業能力開発大学校(全国10箇所)、職業能力開発促進センター(全国61箇所)などの職業訓練施設が都道府県に譲渡されるなど、大規模なリストラ「合理化」が想定されることです。
現在、非正規労働者を「雇用の調整弁」と位置づける企業によって理不尽な解雇・雇い止めが横行するなど、雇用状況はきわめて深刻です。また、近年、企業内での職業訓練が軽視され、技術の伝承や労働者のスキルアップのために、公的職業訓練の機能と態勢の強化が求められています。
「雇用のセーフティネット」再強化のためにも、中心的な役割を果たすべき職業能力開発大学を都道府県に譲渡するなどのリストラ「合理化」をおこなうことは、雇用安定にかかわる国の責任放棄となることは必至です。
このことからも法律案要綱は再考されるべきだと考えます。
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