【談話】普天間基地の県内・国内への移設断念を求める
5月4日、鳩山首相は沖縄県知事などに、米海兵隊の普天間基地(沖縄県宜野湾市)の県内移設と鹿児島県・徳之島への一部移転という「政府方針」を正式に表明した。このような「政府方針」に対し、沖縄県民からも鹿児島県民からも、多くの国民からも、危険な海兵隊基地の無条件撤去を求める世論が湧き起こっている。
そのような世論が沸き起こる背景には次のようなことがある。
沖縄県内での移設と徳之島への一部移転を政府が決定しようとしていた時期に、沖縄では9万人が参加する県民集会が、徳之島では島民の6割が参加する住民集会が開催され、政府の方針決定に反対する意思を明確に示していた。第一は、そのような県民意思、住民意思を無視した「政府方針」の正式表明は、押し付け以外の何物でもないと受けとめられているという点である。「政府は沖縄ではなくアメリカの方を向いている」と、伊波洋一・宜野湾市長が述べたのも当然のことと言える。
第二は、鳩山首相自らが、先に総選挙期間中に「国外、最低でも県外」と繰り返し言明したのは紛れもない事実であり、どのように言い逃れも通用しない公約違反だという点にある。
第三に、海兵隊=「抑止力論」は、沖縄県内、国内移設を納得させる説明ではないことが、事実経過からも明らかだという点にある。鳩山首相は、米軍海兵隊の国外移設は「抑止力の観点から難しい」と述べたと言われる。しかし、2001年秋のアフガニスタン侵攻や2003年春のイラク戦争以降、沖縄の海兵隊はこれらの戦闘地域に繰り返し派兵され、沖縄不在の時期も少なくない。この一事を見ても、海兵隊は戦闘地域への「殴りこみ部隊」としての本来的な役割に専念していると考えられる。沖縄や日本の安全保障とかかわる「抑止力」の役割で配備されていると言えるものではない。冷戦構造が変化したもとで、沖縄本島の18%を占める面積に米軍基地が存在し続けなければならないのか、という沖縄県民の疑問に政府は答えていない。
普天間基地の移設について日米政府が合意したSACO最終報告は、普天間基地の「軍事的機能及び能力を維持」することを前提に、キャンプ・シュワブ沖での埋め立てによる新基地建設を条件としている。この点をふまえれば、「国外、最低でも県外」を主張することは、普天間基地の無条件撤去についてアメリカ政府との交渉をおこなうことを意味することになる。
第四に、その理解もなしに「国外、最低でも県外」を選挙で公約していたのであれば、主権者・国民を愚弄するものであり、政治家としての資質が問われるという点にある。
沖縄県民や鹿児島県民の海兵隊基地拒否の姿勢はきわめて強く、各種世論調査結果を見ても、国民もこれを支持する状況にある。主権者国民の総意が、普天間基地の無条件撤去となっているのである。
全労連は、主権者国民の総意に沿うため、「政府方針」の検討を即刻断念し、普天間基地の無条件返還に向けた米政府との協議を開始するよう強く求める。
2010年5月10日
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