【談話】23年間にわたるJR採用差別事件の和解成立にあたって
2010年6月29日
全労連国鉄闘争本部
本部長 根本 隆
6月28日、最高裁判所において、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)との間で係争していた1047名のJR採用差別事件の和解が成立した。この和解によって、鉄道・運輸機構は、旧国鉄の不当労働行為責任を裁判で争っている原告904名に対し一人当たり約2,200万円(総額約200億円)の和解金を支払うこととなった。この和解の成立は、23年間に及ぶ筆舌に尽くしがたいたたかいを強いられた原告団とご家族にとって待ち望んだ解決であり、全労連として心から歓迎するものである。
この和解成立のもととなった政府による「解決案」は、4月9日に四者四団体に提示され、4月12日に四者四団体が「解決案」の受け入れを表明した。「解決案」は、裁判で争っている原告にたいし、鉄道・運輸機構が上記の和解金を支払うことで裁判を取り下げるというもので、雇用については、政府がJR各社に被解雇者の雇用を要請することにとどまっている。「解決案」の内容は、四者四団体が求めていた「雇用・年金・解決金」の水準から見れば、極めて不十分なものだが、23年に及ぶたたかいの経過と、被解雇者四者の団結と建交労、国労、支援組織での統一対応、すべての政党の解決への努力を考慮し受け入れが決定された。
国鉄分割民営化は、1987年4月1日に中曽根内閣のもとで、この国を新自由主義・規制緩和路線を突き進む象徴として強行された。当時、「一人も路頭に迷わせない」との中曽根首相自らの国会答弁や「組合所属による採用差別はおこなわない」との参議院での付帯決議がされていた。にもかかわらず、分割民営化に反対していた7,000名を超える全動労や国労などの組合員が新会社に採用されず、「再就職を必要とする職員」と称して3年の時限措置で国鉄清算事業団に移された。さらに、1990年4月に1047名(全動労64名、国労965名、その他18名)の首切りが「2度目の解雇」として強行された。23年間にわたる1047名の不当解雇撤回のたたかいは、長期・不屈な闘争であり、当事者とそのご家族の生活と精神的苦痛は計り知れないものがある。すでに64名の方が解決をみないまま他界されている。
全労連は結成5カ月後の1990年4月に臨時大会を行い、1047名の不当解雇事件は「国家的不当労働行為」であり、その解決をめざすたたかいは「労働運動再生の環」と位置づけ、この間全力をあげて支援をすすめてきた。同時に、国民の公共交通機関であるJRの安全性を追求してきた。解決に向けた動きをつくった力は、当事者である全動労争議団と国労闘争団、そのご家族の不屈で粘り強いたたかいであり、当該産別である建交労と国労の組織をあげてのたたかいの継続である。「全動労争議団を勝たせる会」や各地での共闘など支援の輪の広がりがその運動を支えてきた。
JR採用差別事件の解決は、国を相手にした最大争議の解決として歴史に刻まれる。裁判上の当事者である被解雇者と鉄道・運輸機構との間での和解成立となったが、JR各社や関連会社への雇用はまだ実現していない。全労連は、建交労と全動労争議団と連携し、雇用問題を含めた全面解決に向けた支援を継続する。全労連として、JR採用差別事件のたたかいからの教訓を汲みつくし、労働者の雇用と権利を守りたたかいを発展させていくことを表明する。
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