【談話】2010年人事院勧告にあたって
本日、人事院は、国家公務員の賃金等に係る勧告を行った。その内容は、月例賃金を0.19%、一時金を年間0.2月、それぞれ引き下げ、年収ベースで平均9.4万円・1.5%もの賃下げを行うというものである。
このような勧告は、地方公務員や人事院勧告準拠の民間企業など広範な労働者に影響し、賃下げの連鎖や冷え込んでいる内需への悪影響が強く懸念される。また、民間準拠を口実に、55歳以上の職員の基本給などを一定額減額するという労働条件の不利益変更も勧告している。関係労働組合の強い反対にもかかわらず、強引に勧告に踏み切ったことは、言語道断の暴挙である。
2000年代に入り、賃下げなどの労働条件改悪の人事院勧告が繰り返されている。特に、勧告制度であっても交渉、協議が尽くされるべき配分課題について、資料開示などで認識の共有も図り交渉を尽くすこともなく、勧告権を振りかざした改悪が強行されてきた。55歳以上の減額措置は、そのような人事院の専横が極みに達したものと言える。
当該労働者の意見反映が保障されない勧告が繰り返される現状は、制度の疲労と限界を実証している。その点からしても、公務員労働者の労働基本権の早期全面回復は喫緊の課題である。
本年勧告で人事院は、公務員制度全般に言及した。とりわけ、政府が検討している公務員制度改革について、労働基本権や採用、人材育成などについて、異例とも思えるほど詳細に言及した。その中で、労働基本権課題である自律的労使関係について、人事院としての論点整理を示し、国民的理解のもとで検討を進めることを求めている。
労働基本権課題については、すでに政府の検討が相当程度進み、閣僚の中からは回復に向けた積極姿勢が示されている。にもかかわらず、この段階で人事院が、慎重論議を求めるとも思える姿勢を示したことには、強い違和感を禁じえない。
労働基本権はく奪の代償措置とされる勧告制度を所管する人事院には、公務員労働者の基本的人権実現の立場にたち、自律的労使関係制度の実現に努力するよう求めたい。
なお、本年勧告では、65歳定年制実現に向けた制度骨格を示すとともに、本年中の意見申し出を行うことを改めて表明している。雇用関係の終了とかかわる重要な労働条件課題であることをふまえ、関係労働組合とも交渉・協議を尽くすよう求めたい。
また、非常勤職員制度を改善し、日々雇用の仕組みを廃止して「期間業務職員制度」を本年10月から実施すること、そのことともかかわって、非常勤職員への育児休業制度の適用や介護休暇制度の導入に言及している。制度改善の方向にあることを歓迎し、給与上の取り扱いも含め、均等待遇原則にもとづく制度設計を求める。
賃金関連の勧告内容は、影響をうける労働者にとって受け入れがたいものである。そのことから、秋の確定闘争が強化され、改悪部分を跳ね返す取り組みが展開されることとなる。賃下げ、賃金制度改悪のスパイラルに反対する立場から、それらのたたかいへの支援を強める。
2010年8月10日
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