【談話】2011年「税制改正大綱」の閣議決定について
12月16日に政府が決定した「2011年税制改革大綱」(大綱)は、カネ余り状態にある大企業の求めに応じた法人税減税を最優先する異常な内容であり、日本の税制度をさらにいびつにする。そのことから、大綱にもとづく税法改正や予算編成に反対する。
大綱では、給与所得控除や成年扶養控除の縮小で課税ベースを広げて個人に増税を押し付ける一方で、大企業優遇税制の見直しは不十分で課税ベースを狭くしたまま、法人税率の5%引き下げで企業減税を保障した。財務省の試算では、法人税率引き下げによる税収減は1兆5000億円で、減価償却制度見直しなどの増税分を差し引いっても実質7000億円の法人税減税である。個人所得の増税が4900億円となることとの格差はあまりに大きい。
また、企業減税を優先した結果、歳出規模との見合いで6500億円程度の財源不足も予測される。予算編成最終盤で、年金給付額の引き下げや35人学級実現のための教育費予算増の見送りなど、法人税減税をしわ寄せする国民生活関連予算抑制、切り下げが検討されていることも重大である。
大綱では、法人税減税の目的を「雇用と国内投資を拡大すること」としている。しかし、日本経団連や経済同友会、日本商工会議所の代表は相次いで、「法人税減税と引き換えの雇用拡大努力は『資本主義ではない』」との趣旨の発言を行っている。
日本経済新聞の調査によれば、3月期決算の上場企業1759社の手元流動性資金は、2010年3月期から9月期の6ヶ月間だけで6.9兆円増加し、64.4兆円に達している。しかし、5.1%に高止まりした失業率や2011年春の就職内定率に示される「就職氷河期」の状況などは、大企業が社会的責任を投げ捨て企業内に富を蓄積し続けていることを示している。そのような身勝手、横暴な姿勢を変えないと明言する大企業に、減税という究極のばらまきを行う必要性は全くない。そのようなばらまきを行うより、政府が雇用創出をおこなうことの方がより効果的である。
大綱では、証券優遇税制の2年間延長や贈与税率引き下げなど、資産家優遇の税制「見直し」も含まれている。大企業優遇の塊である租税特別措置法の見直しが不十分なこととあわせ、税負担の能力に応じて課税し、社会保障などを通じて富を再配分する税制本来の目的はめざされていない。
にもかかわらず、「(社会保障の)必要財源の安定確保と財政健全化を同時に達成するための税制改革について一体的に検討を進め、11年半ばまでに成案を得(る)」として、消費税の税率引き上げに改めて言及している。法人税率引き下げも、将来の消費税大増税を想定したものとも考えられる内容でもあり、この点でも大綱は認められない。
全労連は、2011年春闘で、大企業に応分の社会的責任発揮を迫り、医療など社会保障の連続改悪に反対する立場から「法人税率引き下げ反対」を重要課題に位置付けて取り組むこととしている。政府の「税制改革大綱」決定を受け、たたかい強化の必要性が高まった。大企業の横暴に苦しんでいる国民、諸階層と共同しながら、大綱の具体化・実施に反対するとりくみを全国で強める。
2010年12月17日
|