【談話】身勝手な大企業の主張に貫かれる「2011年経労委報告」に抗議する
1月18日、日本経団連は、財界の2011年春闘方針・「経営労働政策委員会報告2011」(「経労委報告」)を発表した。
経労委報告特徴は、その副題に「労使一体となってグローバル競争に打ち勝つ」としていることに端的に示されている。そのような、08年経済危機の影響から脱せないもとの格差と貧困の拡大に苦しむ労働者や、経営危機に直面する中小企業を顧みない主張である。
多国籍化の動きをさらに強める一部大企業の利潤最大化=国際競争力強化のために、僅かばかりのベア要求や非正規労働者の処遇改善要求さえ一蹴し、定期昇給の維持や非正規労働者に正規並み労働を求めている。
大企業は、国民の税金によって賄われるエコカー減税や、「非正規切り」、「下請けいじめ」などの犠牲転嫁で業績をV字回復させ、200兆円を越える現余貯金を保有する「カネ余り」状態にある。その大企業が、過剰な資本蓄積を止めず、その社会的責任を果たさないことでは、雇用や経済の危機は克服できない。
大企業の身勝手な主張に貫かれる経労委報告に、強い怒りを込めて抗議する。
経労委報告では、企業活動が「わが国経済成長の原動力」だとしている。従業員などのステークスホルダーに触れた記述もあるが、主張の中心は大企業が労働者や中小企業や政府のインフラ整備などにも支えられた社会的存在であることに留意しない、大企業中心主義にたつものである。そのことが、身勝手な主張の根底に横たわっている。
また、経済や雇用の危機的状況にはふれているものの。その原因究明には踏み込まない「総括なき主張」に終始している。そのことが、不十分な労働者派遣法「改正」法案の修正を主張し、有期雇用規制強化の検討をけん制し、雇用流動化促進を目的とする「多様性に富む労働市場」を求めることにつながっている。自ら行った「非正規切り」への反省もなく、雇用安定をめざす姿勢は垣間見えない。
また、最低賃金引き上げにかかわる政労使合意を反故にするかのような主張を行い、企業の恣意性が反映する人事管理要素を加味した特異な「同一価値労働同一賃金」論を展開し、非正規労働者と正規労働者との処遇格差についても「説明」の対象にとどめている。
国際化を言いながら、先進諸国の動向にも目を向けない異常な主張が繰り返されている。
正規労働者の賃金カーブや賃金決定要素についても総人件費抑制の観点での「見直し」を主張し、障害者雇用や高齢者雇用の促進についても個別企業経営の優先を主張している。生活と雇用の安定という大義ある労働者要求を、目先の収益重視で拒否するという主張に外ならず、この点でも企業の社会的責任が投げ捨てられている。
経労委報告の立場に立った春闘での対応を企業が行うことは許されない。大企業の身勝手な主張を放置し、政府が、労働者保護の規制緩和や、経営重視の雇用政策をとることは断じて許されない。不安定雇用の解消策もなしに、人材育成を強調する欺瞞は許されない。
そのこと強く意識し、経労委報告の身勝手さや欺瞞を明らかにし、批判する労働者のたたかいを高めるため、全労連は地域・職場のたたかいを強める。
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